LGBTの方々への理解増進のための法律が、6月16日の参議院本会議で賛成多数で可決・成立した。
この法律はあくまでも「LGBTの方々への理解を深めよう」というものであり、当たり前だが、そういった方々の権利を優先させるという法律ではない。
「教育現場でも当然、LGBTQに対応しなければならないという動きはあります。ただ、特に年配の方々がどうにも理解できないようで、『できれば関わりたくない』というスタンスの先生方が多いのが事実です」
そうこぼすのは都内で英語の教員をしている果穂さん(仮名)28歳だ。
彼女は長く海外にいたので、LGBTQに対する理解は進んでおり、そういった方々と接するときも大して悩まない。
「同じ人間ですから、特別扱いするのもおかしいと私は思っています。日本ではどうしてもLGBTQの子どもたちは『特別に配慮が必要な子』という扱いを受けます。
もちろん表だって本人にそう告げることはないですが、先生同士の共通認識として、『あの子はLGBTQなので言葉のかけ方などに注意しましょう』というものが生じる。
どう言えばいいのかはわからないのですが、それはちょっと違うのではないかなあ……。って思っています」
首をひねる果穂さんは、その違和感が何からくるのかということで頭を悩ませていた。
「LGBTQ」というのは、「Lesbian(女性同性愛者)」「Gay(男性同性愛者)」「Bisexual(両性愛者)」「Transgender(性別越境者)」
そして「Questioning(自分の性自認や性的指向が定まっていない人や、あえて定めていない人)」の頭文字であるが、
たいていの人はそういった細部の区別もつけられずに十把一絡げで「LGBTQの方々」と判断していることが多い。
そのことが違和感の原因かもしれないと果穂さんは分析しはじめた。
また、彼女の同僚である国語科の教員は「教材がLGBTQ対応していないこと」が問題だと考えているそうで、学校内におけるLGBTQ問題にも様々な角度からの検討が必要なようである。
「私の周囲の先生方だけがそうなのか、それとも全国的にそうなのかはよくわかりませんが、『LGBTQを自認している』という子どもたちに対して『まだわからないじゃないか。
もっと大人になれば、異性に興味を持つようになるよ』といった考え方をお持ちになっている場合が多々あるんです。この考えが諸悪の根源のような気が、私にはしているんですが…」
後編に続く。
取材/文 八幡那由他