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LIFESTYLE 女たちの事件簿

「定期落ちましたよ」声をかけた女性がストーカー化するなんて... バレンタインデーに被害届を出した、遊び人サラリーマンの末路。

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

ストーカーは、今や珍しい話ではない。被害は年々増加し、最悪の場合、殺人に至るケースもある。2020年にストーカー規制法が改正されたが、手法が日々進化するなかで、いたちごっこのような状況だ。

ストーカーと耳にするとどうも加害者が男性、被害者が女性という構図を思い浮かべがちだが、もちろん逆のパターンも存在する。

危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏が解説する。

「ニュースなどで報道される事件は女性が被害を受けるケースがほとんどですが、女性からの男性への付きまとい被害の相談は、近年増加しています」

東京に住む会社員の門司恭平(仮名)も、ストーカー被害に悩まされた1人である。

事の発端は駅での親切だった。

「その日は残業をしていて、終電間際の電車に飛び乗りました。金曜日だったこともあり、結構酔っ払っている人も多かった印象です。最寄りの駅でおり、ホームを歩いていると目の前の女性が定期を落としたんです」


©︎gettyimages

恭平は定期をさっと拾い上げ、女性に駆け寄ったという。

「肩に手をかけてびっくりさせたらいけないと思い、すみませんと声をかけたんですが、全然気がつかなくて、しょうがなく軽く肩を叩きました」

案の定相手は「きゃっ」と声を挙げて訝しい顔でこちらを向いた。すかさず恭平が定期を差し出すと相手はみるみる申し訳なさそうな顔になり、ありがとうございますと小さくお辞儀をして逃げるように立ち去っていったという。

「まさかこんなことがきっかけになるとは思ってもみませんでした」

翌週の金曜も恭平はまた残業をして、終電間際の電車に乗るはめになった。結局仕事が終わっておらず、週末も自宅で仕事だと思うとどっと疲れが増していた。24時を回って、ようやく最寄りの駅にきてホームに降り立ち、とぼとぼと歩いているときだった。ホームの椅子に女性が座っているのが目に入った。

「こんな時間に?と気になっただけで、特にその女性に見覚えはありませんでした。だから、女性が駆け寄ってきて正直、驚きました」

女性は先週、恭平が定期を拾った相手だったのだ。

「僕が定期だと思っていたものは小さい財布だったそうで、カードから保険証から、何から何まで入っていたから拾ってもらえて、本当に助かったんですと言われました」

女性はふんわりとした雰囲気で、愛らしさがあった。そんな女性にお礼を言われて恭平も悪い気はしなかったという。

「いえいえと答えましたが、わざわざこんな風に待ち伏せて感謝を伝えてくれるなんてもしかして……なんてうっすら期待したのも事実です」

しかし、そんなドラマのような展開にはならなかった。その日は感謝を述べられただけ。何事もなく2人は別れた。その後も何回か駅で顔を合わせたが、遠くからなんとなく会釈をする程度だった。

しかし3ヶ月くらい過ぎた頃のある夜、突然2人の距離が一気に縮まる事になる。

その日もまた終電間際の時間だった。

「土砂降りでおまけに寒くて……。傘は持っていたんですけどどう濡れるしな……と思って、僕は駅前のチェーンの中華料理店で雨宿りをすることにしたんです。ウェザーニュースをみたら1時間くらいでやむ予報だったので」


©︎gettyimages

案内されたカウンター席に着くと見覚えのある顔があったという。

「例の女性が間をひとつ開けたところにいたんです。いつものように会釈をしたんですが、にこりと笑ってくれて。なんとなく話をする雰囲気になったんで、ひとつずれて隣に座ったんです」

みな、考えることは同じだったのだろう。安い中華料理店は、24時を回っているとは思えないほど混み合っていて、少し顔を近づけないと声が聞こえないほどだった。

「意識して、何気ない話をしました。すごい雨ですねとか、あそこのスーパー安いですよねとか。プライベートなことをどこまで聞いていいのか分からなかったから。そうしたら、そのぎこちなさに気がついたのか、女性の方からいろいろと身の上を話してくれたんです」

女性の名前は高山里奈。看護師をしているという。今は総合病院に勤めているが、体力的にも精神的にも厳しく、美容皮膚科に転職したいと考えていること、秋田県出身で大学入学と同時に東京に出てきて、それからはずっと八王子近辺に住んでいること、映画が好きだということ。

「女性はビールを飲んで少し酔っ払っていたのかもしれません。饒舌でしたね。僕も同じように身の上話をしました」

財布を拾い、雨宿りの店で隣同士……まるで運命を思わせる偶然が、気持ちを昂らせたのかもしれない。


©︎gettyimages

「意気投合した気がしたんです。それでもう一軒飲みに行って、いい感じになったので、結局駅チカのラブホにイン。寝ちゃいました」

しかし、所詮はお酒の力でかけた魔法。朝、目が覚めると魔法はすっかり解けていた。恭平はバツが悪く、女性が寝ている間にお金を置いて部屋を出たという。

「久々にやっちゃったなって感じでしたね。大学生のときみたいなこと。でもまあ、向こうも合意の元だったので。こういうこともあるよなくらいに思っていたんですが……」

午後のことだった。知らない番号からの電話が鳴った。出てみると昨日の女性だった。

「昨日約束した映画のチケット取れたよと何事もなかったかのように言われたんで、面食らってしまいました。そんな約束したことも携帯の番号を交換したことも実際、忘れていましたが、断りきれず、日曜に映画に行くことになったんです」

寝てしまった事実が恭平に重くのしかかっていた。

「映画を見て、女性のおすすめだという居酒屋に行きました。正直、たいして楽しくはなかったですが、罪滅ぼし的な感じで。女性はものすごい勢いでお酒を飲んで、ものすごいスピードで酔っ払っていました」

帰りがけ、女性が手を握ってきたという。

「なんとなくもう一度寝る雰囲気になったんですが、付き合いたいという気持ちが芽生えなかったので、その日はなんとか女性をタクシーに乗せて帰ったんです」

それから2週間、なんの音沙汰もなく、恭平は内心ほっと胸を撫で下ろしていたという。しかし、これは嵐の前の静けさだったのだ。

「週末明け、会社に行くとビルの入り口にあの女が立っていたんです」

恭平は血の気が引くのを感じた。きょろきょろ、明らかに誰かを探している。恭平は恐ろしくなり、後ずさった。

「会社を教えたつもりはありません。どうやって調べたのかはわかりませんが、正面突破する勇気はなくてその日は体調不良を言い訳にリモートに切り替え。速攻で家に帰りました」

明日のことを考えると怖くて仕方がなかったという。

「また明日もいたらと思うと怖くて眠れませんでした。ただ、会社に行かないという選択肢もないわけで……」

恭平が意を決して会社に行くとビルの入り口に女性の姿はなかった。

ほっとしたのも束の間、同僚から告げられたのは、恐ろしい事実だった。

「昨日、彼女がお前を訪ねてきたよ」完全にストーカーだと恭平は悟った。

「女性は僕に忘れ物を届けに来たといったそうです。僕がいないと同僚が告げると『くそっ!』と言いながら立ち去ったと聞き、恐怖を感じました」

警戒心が止まらずにいた恭平だったが、翌日も、そのまた翌日も女が会社に来ることはなかった。

しかし、恭平はいつもあの女に見られているような気がしていたという。そしてその予感は、バレンタインデーの日に的中することになる。

☆ワンナイトの楽しみが血の気も凍る恐怖に変わる顛末と、彼がとった行動は次回で詳細にレポートする。無用なトラブルを避けるための反面教師として読んでほしい



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