「築50年越えのボロい家で、家賃は11万円。夏は暑いし冬は寒い。家はきしむし狭いし最悪だった。ただ通勤には便利でしたね。夫の通勤時間は自宅から会社まで40分でした」
しかし、現在の家から夫の職場までは90分以上。夫がメンタルを病んだのは、転居から半年後だ。
「でも家は快適なんです。夫の書斎も作ってあげたし。夫の希望に合わせて、リビングを広くしてプロジェクターも設置しました。土地は私が祖母から相続したものなんです。そこに隣の敷地を買い足して、全館空調で無垢材の家を建てたんですよ。子供たちも家が広く新しくなって大満足しているのに肝心の夫がこんなことに」
住宅購入の頭金で、貯金のほとんどを使い果たしてしまった。コロナ禍以前に計画を立てていたので、木材が高騰するウッドショックと、工期遅れのあおりを食う。建築予算が追加され、転居予定がずれ込み、その分の家賃もかさんだ。これにより、貯金はさらに目減りした。
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「お金が無くなると、夫婦ゲンカも増えるし、いつの間にかセックスレスに。1年前に働こうと思って就職活動を始めたのですが、コロナ禍でうまくいかない。それに、全体的に給料が下がっているんです。額面は増えていても従業員特典はないし、交通費に上限があったりする。ハローワークに1か月通いましたが、10年近く専業主婦をしていた私に、いい条件の仕事はない。貯金はドンドン減っていく。そこで“短時間 高収入”のキーワードを入力して検索したところ、今の仕事がヒットしたんです」
真希さんが言う仕事とは、人妻や熟女専門のデリバリーヘルスだ。目減りする貯金に恐怖を覚えた真希さんは、1年前に5駅離れたターミナル駅の雑居ビルにある事務所のドアを叩く。この決断に関しては「母は強し」、と言えるかもしれないが...
Text:Aya Sawaki