ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
LIFESTYLE 女たちの事件簿

「パパが不倫した気持ち、わかる」長女の裏切りに絶句。貞淑な専業妻の「世間知らずな誤算」

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録
不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

株式会社明治安田生活福祉研究所が全国1万人の親などを対象として行った「親子の関係についての意識と実態に関する調査(2016)」によると、「子どもを理解している自信がない」と回答した母親は全体の22.4%に留まったという。

 

つまり、8割近くの母親が自分の子供を理解している自負がある、と言い換えることもできる。「親の心子知らず」と言うが、一方で「子の心親知らず」とも言う。

 

身近な人ほどわかったような気持ちになっているだけで、実際には理解してあげられていないことは往々にしてあり、家族といえどもある日突然深い溝ができてしまうのが現実なのかもしれない。

 

今回は、そんな感想を抱かざるを得ない親子と夫婦の軋轢について取材した。

木野内祥子さん(仮名)は54歳の専業主婦。一目見て暮らし向きの良さが窺える上品なマダムだ。祥子さんは女子大卒業後にお見合いで現在の夫と結婚して以来、一貫して専業主婦生活を続けてきた。社会人の息子2人と、大学生の娘1人を持つ。

 

「私の周りは専業主婦ばかりなので、今どき一度も働いたことがないなんて…と習い事の仲間からからかわれますが、ピンと来ないんです。専業主婦って、そんなに珍しいですか?」

 

専業主婦が珍しいというよりも、「就業経験がないこと」は今どき珍しいかもしれないと答えると、祥子さんは愛想笑いのようなひきつった笑顔を浮かべてこう言った。

 

「あの......最近、娘に世間知らずと言われて気にしてるんですよ。お勤めしたことがないことって、そんなに悪いことでしょうか」

不満げな表情のまま、祥子さんは目下最大の悩みだという夫の不倫について語り始めた。

 

祥子さんの夫は、同じ女性と2度の不倫をした「懲りない男」なのだそう。最初の発覚は9年前。家族に気づかれ、責められて別れたものの、焼けぼっくいに火がつき不倫関係を再開。再び祥子さんの知るところとなったのだとか。

 

「2年前に再会したという話ですが、信用できません......もしかしたら、最初の時に別れるフリをしただけだったのかもしれませんから」

 

祥子さんはすでに涙目になっている。

 

「33年近く夫婦をやってきて、私は夫と一心同体です。私には職もなければ帰る場所もありません。この年になって離婚という選択はないんですよ。いい年して浮気なんて、もう本当に人をバカにするにもほどがあります」

 

祥子さんは興奮し、怒りに肩を震わせた。夫の不倫相手は、祥子さんも知っている人物なのだそうで......。

 

「四十の手習いというので、当時、主人と私共通の趣味の絵を習うために入会した絵画クラブがあるのですが、相手の女はその絵画クラブのベテラン会員なんです。

 

2人の関係がわかったのを機に、私たち夫婦はそこを退会したんですね。私は別のスクールで絵を続けていますが、夫はもう絵は観るだけにすると言って......。でも、その女とはまだ繋がっていたんでしょう。あの女は、私から何もかも取ろうとする極悪人です。悔しくて辛くて、本当に死んでほしいです」

 

夫の不倫相手は、祥子さんよりも2歳年上で病院勤務の主婦だという。

 

「医療事務を長いことやってるお局女です。絵のコンクールによく入賞していて、クラブでは周囲の方からチヤホヤされていました。生涯独身と決めているとかで、芸術家気取りというか、人とつるまず”孤高の人”気取り。格好つけたがりで鼻もちならない女ですよ」

 

憎らしくてたまらないという顔つきで祥子さんは続けた。

 

 

「御年56歳ですよ。顔はちょっときれいかもしれないけど、もうすぐおばあちゃんじゃないですか。あんな女の何がそんなにいいんでしょうか。若い女の子に鼻の下を伸ばすならまだしも、あんな......」

 

祥子さんは品の良いハンカチで顔を押さえて鼻をすすりながら、最初に浮気が判った9年前のことについて語り出した。

 

「9年前、夫はある時を境に明らかに浮足立つようになりました。常にケータイをチェックする、不自然な出張に出かけてくるなど、もう分かりやすすぎる浮気ぶりでした。私はすぐさま興信所に調査を依頼して証拠をつかんだんです。思ったよりも早くしっぽがつかめました。20万かかりましたが」

 

ここまでは「よくある話」といった印象だが、夫の1度目の不倫が発覚した際、問題解決の立役者となったのが、当時まだ11歳の長女だったという点はなかなか興味深い。

 

「娘は小さな頃からマセていてしっかり者でした。子供たちには黙っていた夫の不倫ですが、私が食事も咽喉を通らないほど落ち込んでいることを娘はしっかり見ていたようですね。

 

それで、ママどうしたの?何でベッドのお部屋で毎日泣いてるの?と聞かれ、パパに好きな人ができたと告白したんです」

 

小学生の娘に動揺を与えてはならないと思い、それまで黙っていた祥子さんだが、11歳とは思えない包容力で背中に温かい手をのせてきた娘に対し、つい弱音を見せてしまったのだそうだ。

 

「娘は私の告白を聞き、動揺するどころか、一念発起したような顔つきになりました。そして何と娘は、帰宅した主人をつかまえてダイニングに行くよう促して座らせると、その正面に座って説教を始めたんです」

 

当時小学5年だった祥子さんの長女は、堂々とした態度で夫の行為を糾弾したという。

 

「ママがいるのに、なぜ他の女の人とつき合うのか理由を聞かせてほしいと娘は主人に言いました。つき合うなら、ママと離婚してからにしないと警察につかまるんじゃないの?とも......。娘はそう勘違いしてたようです」

 

祥子さんは娘の行動力と大人顔負けの論理的な言説に圧倒され、身をかたくしてその会話を聞いていることしかできなかった。

その矛先が、やがて自分に向けられることになるとは知らずに…。

取材・文 中小林亜紀

▶︎後編に続く


RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5