「夫は“お兄ちゃん”みたいなんです。男女の関係があったのは、25歳くらいまで。それ以降は、小動物と飼育員みたいな関係ですよ。プロポーズの言葉は『かおちゃんは自分の感性のままに、ありのままに生きて』でした。働かなくていいし、好きにしてほしいと。
そこで、4年くらい個人宅のインテリアなどを受けつつ生活をしていたのですが、夫に面倒みてもらううちに、元気になった。すると働く気になるんですね。そんなときに『コロナ明けで忙しくなり手が回らない。入ってくれ』と言われて、今の事務所に入ったんです」
香織さんをスカウトした設計事務所の経営者(41歳)は、夫との共通の知人でもある。
©︎gettyimages
「彼は店舗設計をコンセプト作りからできる人で、とてもセンスがいい。夫がずっと構造計算をしている人ならば、ボス(事務所の経営者)は、片手でそろばんをはじきながら、美しいものをなんでも取り入れようとする貪欲なタイプ。ホントにすごい人なんです」
18歳の頃からたった一人の温厚な男性と交際をし、そのまま結婚してしまった香織さんにとって、経営者は魅力的だった。
「バツ1なんですが、元妻との関係も良好で、2人の子供は私立の有名小学校に通っている。実家も太いし、海外留学経験もある野心家で、めっちゃカッコいいんです」
憧れが男女の関係に変わるのは早い。残業が続いたある日、オフィスにいるときに後ろから抱きしめられたという。その興奮を香織さんは「キター!」と表現した。
作家:沢木文
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