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「コオロギ陰謀論」知ってる? 人はなぜ簡単に騙されるの?

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

笑ってはいけない、コオロギ陰謀論

……ブハッ! 無理でした、いや笑うでしょ。だってコオロギ、コオロギ陰謀論ですよ。これ、先日ネットで盛り上がった「給食にコオロギを出すな!」騒動の話ではありません。それよりもかなり以前から、

「昆虫食は『世界を支配している人たち』が推進している謀略だ」

というトンデモ陰謀論がネットで拡散しており、一例を挙げると

①コオロギには発がん性があるのに
②政府がコオロギ食に補助金を出して不自然に推進しているのは
③「闇の世界政府」とビルゲイツが結託して
④世界的な食糧危機を起こし、コオロギ食を普及させ
⑤世界人口を減らそうとしている

だそうです……お願いもうダメ、お腹痛い。もちろん①から⑤まですべて根拠のない妄想です。

この陰謀論、昨年あたりに「陰謀論クリエイター」が作り出したようで、コオロギ給食などの国内ニュースをきっかけに広がり始め、それを知った「新型コロナ陰謀論者」が飛びつき……という流れみたいですね。

事実、新型コロナ陰謀論を唱える団体のデモに「コオロギ食はやめろ!」というプラカードが登場しており、道行く人々の失笑を買っていました。コオロギ陰謀論、あの界隈にガッツリ食い込んでるようです。

そもそもなぜ、こんな荒唐無稽なフェイクニュースが作り出されるのか? 理由はもちろんお金。陰謀論は注目されやすく、うまくいけば本が売れ、団体を作れば寄付も集まる。実際、新型コロナ陰謀論の本はAmazonランキングで上位を占めていたし、陰謀論を謳う団体がシンパから寄付を募るのはよくある話。だから海外の論文内容を捻じ曲げ、わざと誤訳し、無関係の画像を張り付け、今日も陰謀論をクリエイトするのです。

一方、そんな陰謀論にハマってしまう人って、なぜあっさり信じちゃうのか、不思議ですよね。実はその答え、人間の特性にあります。

なぜ騙されるのか

私たちは「人に言いたくなる」「誰も知らない」「正義感を揺さぶる」「意外性のある」「自分の希望や願望に沿った」ような情報を手に入れた時、思わずそれを「信じたい」と根拠なく思ってしまう特性(認知バイアスの一種)を持っています。

コオロギ陰謀論みたいなフェイクニュースの多くは、これらの要素を持っていて、だから気持ちが弱っていたり、心にスキがある人はウッカリ騙されちゃうんですね。

誰も知らない真実、地球規模の陰謀情報が、Twitterでお手軽に入手できるハズねーだろ、と言いたいんですが、「信じたい」と思い込んでいる人に納得してもらうのは相当難しいでしょう。

でも、目の前の情報にちょっとでも疑問を感じているのなら……その情報をジャッジせず、判断をいったん保留する「保留力」が、フェイクニュースと戦う強力な武器になります。だって、これだけ幅広い情報が大量に飛び交う現代で、私たち個人が正確に判断できる情報なんて、もうごく一部ですよ。たかが知れてます。そもそも全ジャンルの専門家になれる人なんていません。

だから、分からなければいったん判断を保留して様子を見る。ちょっと待つ。それだけでフェイクの拡散を一時停止できますからね。これすごい事じゃないですか。何でも無理やり白黒つけようとするから間違えるんです。待っていれば、すぐに肯定派と否定派の殴り合いが始まります。高みの見物といきましょう。リツイートする前にも「保留力」、これ超重要ですよ。

ちなみに私、10年ほど前に中国の山奥で「ジャンケンに負けたら昆虫の串焼きを食べる」という凄惨なバトルで敗北し、泣きながら謎の虫を食べたんですが、あれも闇の世界政府による罠だったんでしょうか。ならば許しませんよ、闇の世界政府。


Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)
※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



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