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大谷翔平やヌートバー大活躍の裏で。WBCの「ビール売り子」女子問題、勃発!

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

ビールを売るのは誰? WBCの場外乱闘

「WBC」いいですよね! お侍さんたちは絶好調だし、爽やかなチェコ代表は「ほっこりエピソード」を連発するし、スタンドに飛び込んだ大谷のHRボールは、手にした女の子が周囲に貸し出し、みんな交代でナデナデ。その光景が世界に配信され、ワールドワイドで癒される。もう最高ですよ。ちなみに日本代表コーチの城石君と私は、小学校時代のクラスメートです。元気にしてる?

そんなタイミングで、やっぱり来ましたSNSでの場外乱闘。盛り上がったところで「私の視点はちょっと違う」的なコメントで一波瀾を起こす、まあいつものパターンです。今回は球場でビールを売る「売り子さん」がターゲットになりました。

ある女性がツイッターに

「若い女性がミニスカで、重いサーバー背負って階段を上り下り。世界の人はどう思うか。アメリカでは男の仕事だ」

と投稿。要はそんな大変な仕事を女性にやらせるな、虐待だ、後進国だ、というご意見みたいですが、例によってSNSでは賛否両論、すぐに殴り合いがスタートしました。

ちなみに「ビールの売り子は女性」というのは間違いで、実際は男性の売り子も珍しくありません。売れば売るほど手取りが増える、今日はどう売るか、戦略が求められる頭脳労働でもあります。センスがあれば相当稼げるし、採用競争率も高い職種。往々にして女性のほうが営業成績が良く、結果的に女性比率が高くなっているようです。

また男女問わず、野球好きにはたまらない職場でもあります。今回のWBCでも、大谷の打席を「無意識のうちに通路に座り込んで」凝視している売り子さんがいて、お客さんから「あの……ビール、ちょうだい」って遠慮がちに声を掛けられ、はっと我に返った姿が微笑ましかった。

そして重労働であるのもまた事実。ビール10リットルですからね。それを背負いながら、販売スキルを磨き、接客の工夫を重ねて競い合うプロの世界。ビールメーカーも人間工学に基づき、女性でも扱いやすいサーバーを開発しています。スキルの高い女性は貴重で手放せない重要戦力。女性なら誰でもOK、なんていう単純な世界ではないんです。

ヨッ!出羽守!

そもそも女性にやらせるなという主張は、女性の就業機会を減らし、好きで楽しく働いている女性の仕事すら奪うことにつながりますけど、それで良いんですかね? 「反対派」の投稿には、

「ビールを注ぐのは若い女性の役割という男尊女卑。好きでやっている女性は名誉男性」

なんていう内容も見られ、正直なにが言いたいのかよく分かんないんですよね。

SNS界隈には、「欧米では」「海外では」と外国を引き合いに出して自説を展開したり、他人にケチをつけるアカウントを「出羽守(でわのかみ)」と呼び盛大に馬鹿にする文化があります。たいてい現地に住む日本人が登場して情報の誤りを指摘、出羽守はアカウントを閉じて逃走、というオチが付きます。今回も「海外でビールサーバーを背負って働く外国人女性」の画像が投稿され、火元のアカウントは非公開になっていました。

そういえば女性に重い荷物を背負わせるのは労働基準法違反という反論も投稿されていましたが、もちろんあのサーバーは適法に作られているので問題なしです、念のため。

働きたい人がいて、雇いたい職場があって、待っている観客がいる。そこに関係ない人々が首を突っ込み、女性の活躍機会を奪おうとするのは、ちょっとおかしいですよね。逆に「女性のビール売りは法律で禁止しよう」なんて言ったら、きっと「不平等だ!」と大騒ぎするんじゃないでしょうか?

ちなみに私は腰痛持ちなので、サーバーどころか缶ビールの箱買いすら危険です。ホントに危険です。慎重に、しゃがんで、ゆっくり、持ち上……アッー!!!


Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)
※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



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