夫は鶏肉や野菜を中心とした惣菜をたっぷりこしらえ、昼食と夕食の2食分を南の母親にせっせと運んだ。車で片道40分ほどかかる道のりを、毎日である。店の定休日には、南と暮らす家のキッチンで母の食事を作って届ける力の入れようだった。
「最初のうち、夫が食事を運んでいっても、母親は玄関先に出て来ませんでした。夫は袋に入れた料理を扉の前に置き、すぐに家の中に入れるようメールだけ送って職場に帰っていったそうです」
母親は素直に受け取ることができず、最初の数回は食事に箸をつけなかったという。しかし、やがて根負けした母親は夫の食事で栄養を摂るようになり、さらにはその配達を待つようにさえなっていった。
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