【後編】「軽く小突いただけ」「殴らない方が生徒に失礼」体罰教師の意味不明すぎる実態。

「生徒の頭を小突く」というある教員の態度に深く悩む様子を見せた璃子さんに、彼女と同年代の男性教員が声をかけてきた。彼は璃子さんが勤める学校で強豪といわれる野球部の顧問だ。

「俺なんて自分が学生の時に野球部にいてバリバリ体罰を受けてきたけど、それがあったから自分のチームとか自分自身が強くなったと思っているよ。全然トラウマになっていない。当時は辛いなーって思うこともあったけど、その辛さをチームメイトと一緒になって耐えてさぁ。そういう中で特別な連帯感というか同志って感じとかを味わった。今となっては本当にいい思い出だよ？ 璃子先生は、体罰をされる生徒の心配をすごくしているけど、結構大丈夫なんだって！ 優しく指導されて怒鳴られない方が不安になるって言う生徒もいるしさぁ」

そう話す彼に、理子さんはいくつかの疑問をぶつけてみたそうだ。

「先生自身が体罰を受けていたのに、子どもたちに体罰はやめようって発想にはならないってことですか？」

彼女の発言を、野球部顧問は笑い飛ばす。

「体罰って言葉が良くないのかなぁ。強めの指導なんだよ、体罰って。できなければいけないことができていないから殴られるし、殴られて辛いから頑張る。そうやって走るのがどんどん早くなったり上手な球を投げられるようになったりするからね。『耐える』っていうのはスポーツの中に必ず含まれる部分だ。どんなことにでも耐えられる人間が競技者として強い選手になる。殴られるかもしれないってプレッシャーの中で何かをすることで、プレッシャーに強い人間にもなるしね」

自信たっぷりのその言葉に璃子さんは、「相手はスポーツ選手じゃなくて生徒なのにですか？」と質問を重ねた。