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LIFESTYLE 女たちの事件簿

親族全員、行方不明。探偵が見た、山林所有者一族にまつわる「おぞましいほどの不運」

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

弁護士や不動産会社から、特定の土地の所有者を探して欲しいという依頼は珍しくない。
特に、登記上の所有者は既に亡くなっていて、「相続権を持つ親族の居所を探し出して欲しい」という依頼が多く、時に、その調査課程で、小説さながらの実話に出会うことがある。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

それは、弁護士からの依頼で、太陽光発電所設置用地を確保するために重要な、ある山林の、現在の所有者を探して欲しいというものだった。

登記上での、山林所有者は「高木孝三」(仮名)という人物だ。
調査を進める段階で、謄本上に記載された「高木孝三」の住所には、「高木妙子」(仮名)という人物が住んでいることが確認できた。
ただ、他に有力な情報が見つからなかったため、直接、宮城県の仙台市内の現地まで足を運び、「高木妙子」に聞き込み調査をすることになった。

そこには、こじんまりした木造二階建ての一軒家が建っていた。玄関先にある呼び鈴を鳴らすと、60代後半の女性が、木製の玄関ドアから、そっと顔を出した。

「あの、どなたでしょうか?」

「私たちは、調査会社の者です。弁護士から依頼されて、山林の所有者の『高木孝三』という方のご親族を探しているのですが」

と、女性に正直に伝えると、女性は、自分が「高木孝三」の姪の「高木妙子」だと言った。

「立ち話ではなんですから」
そう言って、妙子は我々を家の中に招き入れた。

8畳ほどのリビングの中央にある丸テーブルに案内され、席に着くと、

「叔父の孝三が亡くなるまでの15年間、私が独り身だったこともあり、この家で同居していたんです」

妙子は、ぽつりぽつりと話し始めた。

©︎Getty Images

高木家はかつて、代々「高松」という大きな染め物問屋を営む、地元でも有名な家だったらしい。

「その頃の暮らしぶりは裕福だったと思います。祖父には、奥さんの他に3人の愛人がいて、全員を同じ屋敷内に住まわせていました」

妙子の祖父は、妻との間に3人の息子をもうけ、長男を「和仁」、次男を「利次」、三男を「孝三」と名付けたという。妙子は、次男「利次」の一人娘であり、山林所有者の「高木孝三」は叔父に当たるそうだ。

息子たちには、それぞれに乳母がいて、妻も乳母も愛人も、みんな同じ屋敷内に住み、晩年は全員「おばあちゃん」と呼ばれていたという。

「小さい頃、『おばあちゃん』は何人もいるのが普通だと思っていたんです」妙子が少し、恥ずかしそうに言った。

妙子が5歳くらいまでは、曾祖母がまだ存命で、本家の離れに住んでいた。毎朝離れに挨拶に行くと、練り菓子等の「お目覚め」や、お小遣いをもらえた。妙子にとってはそれが当たり前であったが、他の子にそのことを話すと皆が目を丸くして驚くので、自分が他の子供たちとは異なる境遇にいる事に気がついたという。

しかし、事業の傾きに伴い、祖父の散財が影響し、「高松」は祖父の代で倒産。3人の息子たちは、夫々別の道に進んだ。長男の和仁は仙台市内で小さな電気屋を営み、次男の利次は公務員、末っ子の孝三は医者になった。

「孝三叔父さんは、とても優秀な人でしたが、家族に恵まれなかったんです」

☆次回では、この「孝三」の周囲で起こった、少し異常で奇妙な高木家一族の暗い闇に迫る☆

探偵 こころたまき

▶︎後編に続く


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