5分ほど経ったころだろうか、ぴたりと音が止まった。恭平が恐る恐るドアの覗き穴から外を見ると女はすでにいなくなっていた。ただ、恭平はその夜、恐ろしさのあまり、ドアを開けることができなかったそうだ。
「駅から尾行されていたと思うと恐ろしくてたまりませんでした。翌日こそ休みたかったのですが、どうしても外せない打ち合わせがあって、午後から出社することにしたんです」
ドアを開けるとノブに紙袋がかかっていたという。十中八九、女からのものである。
「そのままにしておくわけにもいかず、袋の中身を確認しました。中に入っていたのはチョコレート。
すっかり忘れていたんですが、その日はバレンタインデーだったんです。次はいつ会えますか?と書かれたカードが添えられていました」
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