翌日以降美花とは連絡がとれず、代わりに飲み会に呼んでくれた看護師から「参加していた友達に、先生がいつから結婚してたのか聞かれたよ?」なんてLINEが来た。
「終わったな……。ただ平凡でしあわせな日々を過ごしたかっただけなのに、なんでこうなったんだろう」
既婚者であることが確定し子どもまでいるとなると、女性にとっては深刻な状況だったようだ。しぶとく連絡をしてようやく一目会うことができた美花は涙でぐちゃぐちゃで、職場を休むほど落胆していると事前に聞いていたとおり、切ないほど痩せていた。
「本当に愛していたんだ」という言葉は届いたのかは分からないし、「この女性を守りたい」と強く思っても行動に移す勇気はなかった。それが自分が見た美花の最後の姿だった。
あれから4年が経ち女性と遊ぶことも最近増えたが、やはり美花への想いは別格だった。
「今頃、どうしているんだろう。幸せにしているかな……」
中村医師は未だに自分がどうすればよかったのかわからず、終始鬱気味で隠れて精神科に通う日々だ。精神薬と睡眠薬、そして浴びるほど飲む酒の量も日増しに増えている。
家族の心配を他所に、今日も女々しい中邑のため息だけがリビングに漏れるのだ。
Text:女たちの事件簿チーム
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