医師は仕事が忙しく、病院施設に勤めることが多いため出逢いがない。しかし、そのハイスペック故に人一倍に女性から羨望の眼差しを集めやすい。
医師特有の「遊び」の中で女性との時間を楽しむ男性医師は多いが、ときに自分の方がどっぷりと女性の沼にはまってしまうことがある。今回はそんな心の囚われから抜け出せない、哀れな医師の話だ。今回もFORZA STYLE「ライフ取材班」がお届けする。
中村良助(仮名)は34歳。呼吸器外科医として医局の中でも中堅のようなポジションとなり、仕事はいたって順調。休日になれば、2歳と4歳の娘が遊ぶ姿を眺めながら広いリビングでくつろぐ。はたから見たら何も不自由ない幸せな生活を送っている。
しかし、中村医師には気がかりなことがあったのだ。誇らしい仕事や家庭がありながら、どこか空虚な彼の脳裏には今でも1人の女性の姿が焼き付いていた。
出逢いは4年前、自分の担当患者を診察しに彼女の働く病棟を訪れたときだった。呼吸器病床が満床のため他病棟に移っていた患者を、その日偶然に受け持っていたのが看護師の山村美花(仮名)だった。患者の日中の様子などを教えてくれた美花は、物腰が柔らかく朗らかな印象だった。
しかしその後はたまに病棟を訪れる際に見かけるくらいで、もともと職場は階違いなので接点は無かった。
そんな美花と急接近したのは、年末の忘年会。他病棟ながらも招待を受け、飲み会に参加することになった。せっかくだからと途中で話しかけてみると、思いのほか相手の方が好印象を持ってくれており、打ち解けるまでに時間はかからなかった。
今となっては医師だから良く思ってくれていたのか、自分に大きな期待をしていたのかなどは分からない。しかしとにかく思った通りのいい子で、一緒にいると居心地がよく肉体の相性は抜群だと感じていた。
実は美花と付き合うことになったとき、中村医師にはすでに婚約者が居た。
婚約者とは学生時代から付き合っており、部活のマネージャーとしていつも近くにいる存在だった。研修医のタイミングで県外までついてきてくれ、彼女も他病院の看護師として仕事をする頼もしい存在だった。そんな長年連れ添う彼女と結婚することは何も不自然なことはなかった。ただ一つ、入籍直前に美花に出逢ってしまった。
仕事が忙しい時期だったのでたいていは彼女の家で過ごすことが多く、一緒にとりとめもない話をしてのんびりしたり、美花がつくってくれる美味しい料理をご馳走になることがほとんどだった。
「今日はゆっくり休んでていいよ、私は会えるだけで嬉しいから。」
美花は献身的で疲れている自分を気遣ってくれ、それはできた女性像そのものだった。大好きな人に甘やかされながらたくさんの愛情を注いでもらえてしあわせな日々だった。
男女関係のトラブルに詳しい、危機感管理コンサルタントの平塚俊樹氏が言う。
「病院という閉鎖空間では、独特のヒエラルキーがあり、医師とナースの禁断の関係も発生しやすい。白い巨塔の世界は、実際にいまでも厳然と存在します」
中村と美花のそんな穏やかな日々が一変したのは、それから1年後だった。
次回では中村の「悲恋」のおぞましさとその末路について、さらに紹介にレポートしたい。
Text:女たちの事件簿チーム