【後編】ワールドカップ開催時のみ体を重ねる「4年ごとの恋人」。20年も関係が続く理由とは？

『逆サイド入れてきた〜！ オフサイド……！』

カタール大会、グループリーグ。格上ドイツ戦での前田の幻のゴールに店内は一瞬湧く。

「そうね。あのとき、あの人は私を疑ってて興信所を使ってたの。航平以外にそんなことをする相手はいなかったんだけど、あの人からすると私はずっと上の空だったみたいでさ」

離婚に伴って、慰謝料を請求されたこと、財産分与で貯金も半分ずつわけることになり、経済的に困窮したこと。綾子はあの離婚で大きな痛手を負ったがその話はしたくなかった。

大学４年のとき、もっと航平に優しくできていたら。2006年に再会したとき、航平に好きと言えていたら。2010年、結婚前に航平の胸に飛び込んでいたら。綾子の人生は後悔しかなかった。