我慢し続けた女の決断は早い。さつきは、ひっそりと集めた不倫の証拠とともに、離婚届を夫に突き出した。夫は「お前も不倫しているんだろう」とかすれた声を絞り出したが力はない。
「何言ってるの。私が誰とどこで会っていたというの?」
さつきの声は勝ち誇っていた。さつきの恋人はゲームの中だ。道徳的には許されないかもしれないが、不倫とはいえない。長期間にわたって繰り返された夫の不倫と、妻のゲーム内疑似恋愛では勝負にならない。弁護士を立てるまでもなく離婚は成立した。
「『これでナオさんに会える! ナオさんと暮らせる!』って嬉しくてたまりませんでした。夫の不貞行為の慰謝料と財産分与があるから、年金がもらえるまで、私ひとりが生活するお金には困りません。第二の人生のスタートだ!ってはしゃいでいました。家を出る時に、家の玄関に立ち尽くす夫の姿が哀れで哀れで(笑)。自業自得ですもの」
ところがさつきは三日後にゲームのチャットで現実を知る。
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