人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。
車生活でストールは不要になったものの、手放せません
かつて編集者として出版社に勤めた経験があり、現在はファッション誌や広告、そして国民的アイドルからミュージシャン、政治家のスタイリングに至るまであらゆるシーンで活躍するスタイリスト櫻井賢之さん。
幅広い知識に基づき、クラシックからモード、ストリートに至るまで幅広いジャンルに精通する櫻井さんが、思い入れが強くて捨てられなかった服をご紹介する企画の第6回目は、メゾン マルタン マルジェラ(Maison Martin Margiela)のストールです。
「コートの前身頃だけを切り取ったようなデザインのストールなんですが、かつてマルタン・マルジェラが手掛けていたエルメスのヴァルーズや、ポケット付きのストールを彷彿させます。
スタッフインターナショナルのタグですから、2011年以降のもので、2008年にブランドのデザイナーを退いたマルタン・マルジェラ本人ではなく、デザインチームが手掛けたものだとは思いますが、イズムがきちんと継承されています。
以前はストールを巻く機会もあったんですが、最近はほとんどが車移動なので、ストール自体を使う機会がなくなってしまい、これに限らずほとんど使っていないですね。
エディ・スリマン時代のディオール・オムのロングストールも手放さずに残っているんですが、長いものはとくに車の運転にはまったく向いていませんし…。
素材感も面白いし、暖かい。デザインも良いので手放せないんですが、いかんせん使う機会が見当たりません。
寒い国に長い期間訪れるようなことでもあれば使うこともあるかもしれませんが、こんな状況ですからそんな機会もなさそうです。
またしばらくは、クローゼットで寝かすことになると思います」。
櫻井 賢之
スタイリスト
ファッション誌編集部員を経て、2001年よりフリーランスのスタイリストとして活動をスタート。メンズファッション誌にとどまらず、広告から芸能、音楽シーンに至るまで活躍の場を広げている。幅広い知識に基づく洗練されたスタイリングに定評あり。1971年、東京生まれ。
スタイリスト
ファッション誌編集部員を経て、2001年よりフリーランスのスタイリストとして活動をスタート。メンズファッション誌にとどまらず、広告から芸能、音楽シーンに至るまで活躍の場を広げている。幅広い知識に基づく洗練されたスタイリングに定評あり。1971年、東京生まれ。
Photo:Shimpei Suzuki
Edit:Ryutaro Yanaka
RANKING
3
5
3
4
5