若い人にはどんどん店に来てもらって、洋服の歴史を深掘りしてほしい！
世の中には、「この店、沼だな」と唸るほど魅力的な店がある。
ヴィンテージ洋服に関し、日本屈指の知識と教養を持つ、ファッションディレクター赤峰幸生氏とヴィンテージ服のお宝を探り当てるお宝探し隊。
今回は、英国を中心に、ヴィンテージ自転車やトランク、雑貨、家具、古着、クルマのパーツなどを買い付けて販売している「INNOCENT ANTIQUES（イノセントアンティークス）」をチェック。アポイント制のショールームは体育館のような広さで、「30～40年前のロンドン・カムデンロックのような雰囲気があるね。居心地が良くて、掘り当てるのが楽しい。社長の飯塚徹さんが自ら探してきたモノばかりだから、趣味度が高いし、本気度もスゴイ」と唸ります。
全部自分で選んでいるので、全部に愛着があります
赤峰 いつ来てもワクワクして楽しいですね。ここに来ると自転車に乗りたくなります（笑）。
飯塚 自転車は５万円ほどから50万円ぐらいまでありますが、日本ではイギリスの自転車は珍しくて、トライアンフなどバイクメーカーが作っている自転車は人気があります。
赤峰 飯塚さんが英国で見つけてきたままを販売しているんですよね。
飯塚 そうです。輸入後にプロによる整備はしていません。自転車が欲しい方は、「自分で修理したい」という人も多いんですよ。整備が必要な方には近くの自転車屋さんを紹介しています。
イノセントアンティークスにある自転車の中で一番古い、1910年製造のフランス製の自転車。ハンドルの形状が独特で、泥よけがないのも特徴。 30万円
赤峰 飯塚さんはいつイノセントアンティークスを始められたんですか。
飯塚 40歳になる頃に始めて、ちょうど10年目になります。海外が好きで、21歳ぐらいにアルバイトでアメリカから古着を輸入する仕事などをしていました。10年前に起業するときに、「アメリカよりイギリス、ロンドンに行きたいな」と思って、何があるのかも分からずに渡英して、アンティークマーケットを回って、トランクが好きだったので、買い付けてきました。
赤峰 すごい数のトランクがありますね。トランクの他にダレスバッグなども見つかります。
飯塚 トランクは戦前のモノから70年代ぐらいのものが中心です。イノセントアンティークスを始めるとき、アンティーク屋の諸先輩から「トランクなんか絶対に売れない」と断言されて、それで意地になって（笑）、９割方イギリスで直接買い付けてきました。それと一緒にオートバイの部品や自転車も買って、徐々に手応えを掴んでいきました。全部自分で選んでいるので、全部に愛着があります。
赤峰 どんなお客さんが多いんですか。
赤峰さんが手にしているのは、60～70年代ぐらいのバッグ ３万8000円
飯塚 アポイント制にしていて、一般の方はもちろん、映画やドラマのスタイリストや製作の方がよく来られますね。
「赤峰さんと会って話がしたかった」のが最初のきっかけ
タンデム自転車（売却済み）での撮影を終えて、より和んだ雰囲気に
赤峰 飯塚さんと初めて会ったのは２年ぐらい前でしたね。
飯塚 赤峰さんのYouTubeを拝見して、「会って話をしたい」と連絡を差し上げました。スーツを誂えるのももちろんですが、自分は、自分の欲を我慢しないようにしています。
赤峰 「欲を我慢しない」とはどういうことですか。
飯塚 自分は、「行きたいところ、欲しいモノ、会いたい人」は、なるべく叶えようと思っていて、特に「実際に外国へ行って、現地の人とコミュニケーションを取る」ことを生き方の目標としているので、それを実践して成功している赤峰さんにはぜひ話を聞きたいと思いました。
英国製・モールトンのヴィンテージ自転車 ９万9000円
赤峰 飯塚さんの話を聞いていると、本当にピュアな人なんですよ。まさに社名の「イノセント」通りの人柄。直球ストレートで攻めていく価値観を持っていて、若いときに、映画『さらば青春の光』を観たり、ブリティッシュロックや英国ファッションを思い切り浴びてきたはず。それが今、自分で見つけたことがカタチになりつつあって、応援したくなります。
飯塚 ありがとうございます。「イノセント」を辞書で引くと、「純粋無垢」とか「馬鹿」というのもあって、10年前に「こうあるべきだ」と社名にしたのも自分に合っているなと思います。
「Akamine Royal Line」のフォックスブラザーズのヘビーウェイトのダブルブレストスーツを着た飯塚社長と、イギリスの40年代のヴィンテージ生地のスーツを着た赤峰さん
赤峰 自分は「クラシックスタイルを訪ねて三千里」という生き方ですが、飯塚さんは、クラシックな日常生活雑貨と、古き良き時代の英国スタイルを愛している。「普通だけど、よく見ると違うよね」という価値観が共通するところがあるんですよ。
英国製・ハーキュリーズのヴィンテージ自転車 ５万5000円
赤峰 開業して10年間、英国と商売してみていかがですか。
飯塚 イギリス人はなかなか友だちになってくれません（笑）。最近やっと家に入れてくれるようになった感じです。
赤峰 そうですよね。私も英国人の友人は多いですが、その感じはすごくよく分かります。
バブアーなどの古着や革靴などもあり。まさに掘り出し物感覚
飯塚 赤峰さんも同じような体験をされているので、そういう話をしているのも楽しいです。
赤峰 飯塚さんの商売の仕方は、新品が良いとか、古ければ良いではなくて、その時々で「本気で作ったモノに囲まれていることが大事」だということを教えてくれます。
150年の歴史を誇る曲げ木のチェコ製の家具「TON」の輸入代理店も行っていて、ショールームを完備
飯塚 今後は、英国のオートバイやクルマ雑誌も揃えて、ここで古本屋をやる予定なので、クルマ好き、バイク好きの方にももっと来てほしいですね。
赤峰 また滞在時間が増えますね（笑）。
INNOCENT ANTIQUES（イノセントアンティークス）
東京都練馬区貫井4-14-18
Tel.070-5078-2457
※アポイント制
受付時間：12:00～20:00
info@innocent-inc.jp
Photo：Shimpei Suzuki
Text：Makoto Kajii
information
長野県松本市にてトランクショーを開催
10月23日（土）と24日（日）の２日間、長野県松本市の英国直輸入のアンティーク家具や雑貨を取り扱うインテリアショップ『ビクトリアン クラフト』２階の一角のスペースでトランクショーを行います。※本イベントはアポイント制です。
日時：2021年10月23日（土）12：00～18：00
10月24日（日）10：00～17：00
会場：長野県松本市新橋6-16
LIFE STYLE MARKET内
オーダーアイテム：Akamine Royal Line、Akamine Class Sports
スーツ、ジャケット、トラウザーズ、コート、シャツ、ブルゾン
問い合わせ：info@incontro.jp
