細部にもこだわり満載で、エルメスの気概を感じます
さて、205回目も「エルメス」。比翼仕立て部分がレザーに切り替えられたジップアップ ブルゾンです。
本題に触れる前に、僕は 服に関しては天然素材が大好き。コットンやリネン、カシミアやウール、シルクなど可能な限りは 天然繊維で作られた服を選ぶようにしています。
石油由来である合成繊維の大部分が焼かれた後に埋め立てられるものの、微生物が処理できないため長いこと土の中に残っちゃう一方で、天然繊維は最終的に土に還るっていうのもありますし、ワガママこじらせボディな肌にも優しい。
とは言え、化学繊維の発展には目を見張るものが多く、その恩恵にあずかるときだってあります。
それが、まさに今! 春の訪れとともに花粉が猛威を振るい、飛散しまくっている今なんです。家に入った直後には花粉やホコリを払うべく、すぐにブラッシングしていますが、天然繊維だと限界があり、すべてを取り除いて家に入ることは不可能。
一方でポリエステル繊維には、絹の100分の1という極細の繊維も存在して、隙間に花粉を取り込んでしまうのを防ぎ、表面に付着したとしても払えば、ほぼすべて落とすことができます。
なので、花粉が飛散する季節には化繊のアウターを羽織ることが多くなるわけです。
それで、このエルメスの話に辿り着く。
これは だいぶ懐かしいモデルでして、マルタン・マルジェラが手掛けたコートとニット同様、ある女性に譲って頂いたもの。旦那さんに購入したけど、一度も袖を通していないタグ付きのデッドストック状態を清水ダイブさせていただきました。
ただのポリエステルのブルゾンだったら、全然アガらないんですが、さすがはエルメス! 比翼仕立て部分がレザー(バレニア)に切り替えられ、各ジップヘッドには例のファスナープルが付きます。
先日紹介したハンティングジャケットは、ボディと同色の黒でしたが、こちらは茶のおそらくトリヨンクレマンス。
この切り替えだけで 一気に見えヅラが変わるし、エルメスのレザーが贅沢に使われてるので、リッチな気分にすらなります。
そして、ショート丈のジップアップ ブルゾンで とにかく重要なのが腰まわり。普通のジップだと裾部分が すぼまって、『トップガン』のときのトム・クルーズよろしく、腰上あたりが膨らんじゃう。
この上半身が丸くなるシルエットが とにかくダサくて苦手…。
その点こちらはダブルジップを採用しているから、下も開けられて、その心配もナシ。しかも riri製のダブルジップだなんて、これだけで随分値段も上がったことでしょう…。
そうそう。比較的安価なポリエステル製と侮るなかれ。そこはエルメスですから、生産工程において特殊な加工がされているのか、肌触りも抜群。他に類を見ない着心地です。
花粉の飛散がすごすぎて 悲惨な思いをしないためには、化繊のアウターが欠かせんってなお話でしたとさ。おそまつ。
Photo:Shimpei Suzuki(ITEM)
Edit:Ryutaro Yanaka