最高のシチュエーションで、最高峰のスタイルをしてみたい
前々回、前回に続いて、今回はフォーマルスタイルに関する第3弾。これまで触れてこなかった装いの基本ルールを交えながら、僕が長年、憧れているスタイルをご紹介したいと思います。
黒ならともかく、白いタキシードって、一生に何度も着るチャンスはないと思うんですよ。でも、それがたとえば初夏で、夕方から始まる、屋外での結婚パーティだったら、ドンピシャなんじゃないかと。こんなスタイルを人前で思いっきり楽しめる日が、早く来るといいなあ……。
アイテム
タキシードジャケット/クラウディア
スラックス/クラウディア
シャツ/クラウディア
ボウタイ/クラウディア
ポケットチーフ /クラウディア
カマーバンド/クラウディア
カフリンクス/クラウディア
時計/パテック フィリップ
リング/フィクサー
ソックス/グレン・クライド
靴/チーニー
場違いな格好で恥をかかないためには、フォーマルウェアの基本的なルールを知っておくことが重要です。まずは時間帯。18:00を境に「昼」と「夜」にわけられ、これに場の格式の高さを掛け合わせることで、着用の時間帯に応じた正しい装い(正礼装、準礼装、略礼装)が導き出されます。
昼の正礼装は「モーニングコート」、夜は“燕尾服”と呼ばれる「イヴニングコート(テイルコート)」となり、準礼装ではこれが昼は「ディレクターズスーツ」、夜は「タキシード」に変わります。
略礼装の場合は、昼夜共通で「ダークスーツ」で構いませんが、たまに日中の結婚披露宴やパーティにタキシードで現れる人がいますよね。あれはドレスコード的には完全にアウトなのでご注意ください。
さらに、主催者側(ホスト)は正装、招待客側(ゲスト)の主賓は準礼装、一般客は略礼装は適切となることもあり、同じ場でも立場が違うと装いが異なることを頭に入れておくといいでしょう。
というわけで、今回はフォーマルウェアの第3弾。もし僕がこの夏、結婚式を挙げるなら着てみたかったタキシードスタイルです(パチパチパチ)。
ちなみに、招待状にドレスコード「ホワイトタイ」と書いていたら、イヴニングコートに白のボウタイ、「ブラックタイ」と書いていたらタキシードに黒のボウタイの組み合わせでお越しください、という意味なので、それには従うのがルールです。イキってハズそうと思ってはいけません。ハズしではなく、それはハズレです。
今回のタキシード、一般的なのは黒やミッドナイトブルーですが、白を選んだのには理由がありまして……。『OCEANS』編集部時代、ミラノコレクション取材後にブリオーニのご招待で、クロアチアのブリオーニ(ブリユニ)島で開催されたポロ競技を観戦したことがあるんです。しかも貴賓席で!
席に着くと、そこにはクロアチア大統領や当時ブリオーニのCEOを務めていたウンベルト・アンジェローニさん(現在カルーゾの経営者であり、一時期はクラシコイタリア協会の会長も務めていた。ブリオーニを世界的メゾンに成長させた辣腕)など、周りは見渡す限りVIPだらけ。サッカー場4面を使った広大な敷地で、昼間からワインを呑み、美味しいお料理を食べながら、ポロ競技を見られるなんて、それはそれは…… 気絶の時間でした。
そしてポロ観戦のあとには、お待ちかねのパーティタイム! 招待状に「ブラックタイ」と指定があったので、東京から持参した黒のタキシードに着替え、ローマ時代の遺跡が広がる野外に設けられた特設会場へ張り切って出かけました。
6月末の夕刻のことです。招待客は200名ぐらいだったでしょうか。知り合いを見つけ、歓談を楽しんでいると、これからディナーが始まろうというときに、白いタキシードを着たひとりの男性が前方に歩み出てくるではありませんか!
彼が現れた途端、会場が静まり、その後「おお!」と どよめきが……。その男性こそが、パーティの主催者であるアンジェローニさんでした。初夏の夕べ、しかもほぼゲスト全員が黒のタキシードなのに、ひとりだけ白。時間も、シチュエーションも、すべてが完璧で、ドラマティック。胸がキュンキュンしたのを覚えています。
あのときの清冽なインパクトが強大すぎて忘れられず、その後、『007』シリーズをはじめ、さまざまな映画を観てみました。そしたら、主役級の人物が“ここぞ”という場面では、お約束のように白いタキシードを着ているんです。
以来、僕にとって白いタキシードは、男の晴れの舞台に着用する最高峰のスタイル(ここでいう最高峰は、格式とはまた別です)であり、これが似合う男になるのを目標にしてきました(笑)。
今年はコロナの影響もあって(!?)、この夏に結婚式を挙げるのは叶いませんが、いつかきっと白いタキシードを着たいと思います。
今回のスタイルのキモは……。
●フォーマルウェアの基本ルールを知っておこう。
●ドレスコードに従わないと会場で肩身が狭い思いをします。
●最高のシチュエーションで最高峰のスタイルをいつかしてみたい。
●でも、そんなタイミングは滅多にあるもんじゃないから逃さないで!
●自粛生活は、無理せず、油断せず、続けることが大切。
Photo: Ikuo Kubota (OWL)
Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
6冊目の書籍が発売しています。洋服から、ジュエリー、腕時計、ライフスタイルまで。僕が日頃から愛する大人の男女におすすめしたいブランドの逸品について書いています。読んでない方はぜひ!
干場義雅が愛する
「究極のブランド100+5」(日本文芸社)
5冊目は、1冊目の書籍の内容を改稿し、本質的な服装術を知らない新社会人から肩書きを持つ大人まで使える身に纏う処世術について書いています。読んでない方はぜひ!
世界のビジネスエリートは知っている
「お洒落の本質」(集英社文庫)
4冊目の本では、女性のエロサバなスタイルについてまとめています。女性はもちろん、男性が読んでも面白いのでぜひ。奥様にもすすめてくださいね。
干場義雅が語る
「女性のお洒落」
(ディスカバートゥエンティワン)
3冊目の書籍は、難しいとされる大人のカジュアルスタイルについて書いています。読んでいない方はぜひ!
干場義雅が教える
「究極の私服」
(日本文芸社)
2冊目の書籍は、色気についてです。 普通に見えて、なぜか人を惹きつける男の共通点について書いています。読んでいない方はぜひ!
一流に学ぶ
「色気と着こなし」
(宝島社)
1冊目は、スーツの着こなし術から世界の一流品選びまで、基本的なことやお洒落の本質について書いています。読んでいない方はぜひ!
世界のエリートなら誰でも知っている
「お洒落の本質」
(PHP出版)
【エロサバ】-Hoshipedia
「エロサバ」とは、エロいコンサバの略で、干場の哲学により生まれた造語。シンプルでベーシック、コンサバティブな洋服を着ているのに、なぜかエロく見えるスタイルのこと。例えば喪服の女性。成熟した大人の女性が喪服を着ていて、メイクもナチュラルで抑制しているのに、不思議と色っぽく見えるスタイル。例えば、普通の白いシャツを着ているのにも関わらず、胸元のボタンの開け方や袖口のまくり方でSEXYに見えるスタイル。粗悪な素材でデザインが変わっているシャツでは駄目。上質な素材でベーシックなシャツだからこそ、崩して着こなしても上品さが保てるのです。男性で例えるなら、仕立てられたグレーの無地のスーツを着て、上質な白シャツに黒の無地のネクタイのような極めてコンサバティブなスタイルをしているのに、内側から大人の色気が香るスタイルのこと。