プロフィールを一切公表しない謎のブランド
最近、気に入っているメンズセレクトショップが、名古屋の久屋大通駅近くにある「Alto e Diritto(アルト エ デリット)」(旧ZODIAC)です。店名は、日本語で「高く真っ直ぐ」の意。“男は黙って真剣勝負”を信条とするオーナーの高柳忍さん、バイヤー兼ウェブマネージャーの伊藤真也さんがふたりで運営するこぢんまりとしたお店なのですが、とにかくその熱量が半端ないんです。
仕入れから販売、ウェブサイトの制作、その撮影まで、すべて自分たちで行うことで、その世界観を色濃く反映していて、レザージャケット、テーラードスーツ、デニム、シューズ、アクセサリーなど、国内では滅多にお目にかかれない幻のブランドや、価格度外視のこだわりの別注品がずらりと並んでいます。
そして、クオリティも規格外! 坪内さんと僕が手がけるWHでも、過去に最高級のコードバンで別注していただきました。
これだけ振り切っていても、コアなファンがついているのですから、凄い(!!)としか言いようがないですよね。で、このお店ですすめられて知ったのが、この「FIXER(フィクサー)」というブランド。
ところが、ブランドのプロフィールを調べようにも、まったくその素性が明かされていないんです。昨年、ライダースジャケットとリング、バングルなどを購入して、かなりヘビロテで愛用していますが、いまだブランドについてはよくわからない(苦笑)。例えるなら、ファッションブランド界のバンクシー!?
それでも納得してしまうあたりが、Alto e Dirittoの人気の秘密なのかもしれません。FIXERに話を戻すと、このライダースジャケットは2着目。昨年購入したモデルが、驚くほど自分の体型にぴったりとハマり、そのほかの服も欲しいと思っていたところ、コロナ禍で外出を自粛していたときにお店から新作が入荷すると連絡をいただき……。
またライダースか…と思ったのですが、ショルダー部分のパッドや革の素材感など、前作よりハードなデザインにひと目惚れ。気がついたときには買っていました。前下がりになった身頃や、ジッパーとスナップボタンが付いた袖口も僕好みだったもので(苦笑)。
FIXERの商品は、生産数が少ないのか、Alto e Dirittoの店頭でもほとんと見かけたことがありません。僕が最近、始めたオンラインセレクトショップ「MINIMAL WARDROBE(ミニマルワードローブ)」でも予約受注販売を受け付けているのですが、いつ見ても完売……というのも、そそられるんですよね。
まだまだ暑いので出番は数カ月後となりそうですが、またまたヘビロテの予感がしています。
Photo:Ikuo Kubota(owl)
Text:Toshiaki Ishii
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干場義雅が愛する
「究極のブランド100+5」(日本文芸社)