自分ではニオイに気づきにくい部分でもあります
今やニオイケアはやって当然のエチケットになっていますよね。皆さんも常日頃から様々なケアをなさっていることと思います。
そんななかで、わきから強いニオイがする「ワキガ」は非常に悩ましい症状ですよね。どう改善したらいいかわからなくて、とりあえず制汗剤を塗っているという人も少なくないのでは?
今回はそんなワキガについて詳しくご紹介します。これを読めば、気になるニオイともおさらばできるかもしれませんよ‼
目次
◆ワキガとは
・意味
・メカニズム
①ワキガの仕組み
②なんでアポクリン腺は発達するの?
・どんな人がなりやすいの?
①遺伝
②性別
③民族
◆セルフチェック
◆改善方法1:セルフケア
・わきのケア
①腋毛の処理
②こまめに拭く
③市販の制汗剤
・生活習慣を見直す
①食生活
②酒やたばこを控える
③ストレスをためない
④こまめな運動
◆改善方法2:治療
・塗り薬
・外科手術
◆あの楊貴妃もワキガだった⁉
◆まとめ
◆ワキガとは
敵を知ればおのずと解決法が見えてくるというもの。ここではワキガのメカニズムや、なりやすい人の特徴について見ていきますよ‼
・意味
「ワキガ」は別名「腋臭症(えきしゅうしょう)」や「アポクリン臭汗症」とも呼ばれ、わきから独特なにおいを発する状態のこと。カタカナで書かれているので単語から意味が理解しづらいのですが、「ワキ(腋)」と「ガ(下)」で「ワキガ」というわけです。

そのにおいには個人差がありますが、ゴボウや鉛筆などの土のような臭いや、酢のようなツンとくるすっぱい臭い、クミンの臭い、納豆やドリアンのような腐った臭いに喩えられることが多いと言われています。
・メカニズム
①ワキガの仕組み
では、どのようにしてワキガのニオイは発生するのでしょうか。その主な原因は、私たちの身体のなかにありました。それは汗腺です。

人間はエクリン腺とアポクリン腺という2種類の汗腺を持っています。エクリン腺は全身の体表面にあり、サラサラとした汗を分泌します。この汗は99%が水分のため、きちんと拭き取ればにおいを発しません。それに比べて、アポクリン腺はわきの下や生殖器周辺、耳の穴などに存在し、たんぱく質や脂質を含んだベタベタな汗を分泌します。
ワキガの原因となるのは、アポクリン腺から出るこのベタベタとした汗です。ベタベタ汗に含まれる皮脂を体表面の細菌が分解するときに、強烈なにおいを発します。
②なんでアポクリン腺は発達するの?
アポクリン腺は第二次性徴で発達するので、思春期ごろからワキガの症状は現れます。なぜ発達するのかというと、フェロモンを発するためです。

犬同士はおしりのニオイを嗅ぎあって互いの情報を認知しますよね。これと同じく、古来においては人間のワキから出るニオイも一種のフェロモンとして機能しており、異性を惹きつけたり縄張りを主張するためのものだったと言われています。
・どんな人がなりやすいの?
①遺伝
アポクリン腺の発達のしやすさは、ほぼ遺伝子で決まっています。そのため、両親がワキガの場合はその子どもも発症する可能性が非常に高いです。
②性別
ワキガは男女ともに悩んでいる人が多いですが、アポクリン腺の数は毛の量と関係があるため、腋毛の処理をしていない男性はニオイがきつくなってしまうという報告がなされています。

また女性の場合は、普段はニオイが弱くても、妊娠や出産そして月経などの性ホルモンの影響を強く受ける期間に一時的にワキガの症状が出る場合があります。
③民族
実は民族や国によってワキガの割合が違っているんです。日本人の場合は軽度なワキガを含めると全体の10~15%の人に発生しますが、黒人ではほぼ100%、欧米人では70~90%、中国人では3~5%という割合になっています。

なぜこのような差異が生まれるのかというと、体質と食生活が原因だとされています。まず、アポクリン腺の発達を促す遺伝子は、アジア人に少なく、欧米やアフリカ系の人種に多くなっています。また、古くから肉食を中心とする民族はアポクリン腺が活発に働く傾向にありますが、野菜や魚を多く食べる民族は、アポクリン腺が退化しているという説もあります。
◆セルフチェック
ワキガかも……?と思っている人は、ぜひこのセルフチェックをしてみてください。どれも、アポクリン腺が発達している人の特徴になっています。もちろん、たくさん当てはまる場合でもワキガと呼ぶほどニオイはきつくない可能性もありますので、思いつめてはいけませんよ‼
✓わきに挟んだティッシュが臭う
ティッシュやガーゼを5分程度わきに挟んで、そのにおいをチェックしてみましょう。もし「これは……?」というニオイがしたらそれはワキガかもしれません。
✓耳垢がしっとりタイプで、耳毛がたくさん生えている
耳の中にはエクリン汗腺がありません。つまり、耳垢がしっとりしている場合はアポクリン汗腺があり、そこから汗が分泌されていると考えた方がよいでしょう。耳にアポクリン腺がある人はわきの下にもアポクリン腺が発達していることが多いです。
またアポクリン汗腺は毛根にあるため、耳垢が湿っていて耳毛が多い人は、ワキガになる可能性が高いと言えます。
✓シャツのわき部分が黄ばんでいる
一般的にわき汗の色は、透明です。なぜならエクリン汗腺から分泌された汗は、99%の水と微量の塩で構成されているから。運動して顔などにかく汗は透明ですよね。
一方、ワキガの人のアポクリン汗は、たんぱく質や脂質、糖質や鉄分、アンモニアなどといったいろいろな物質を含んでいるため、衣類に付着して時間が経つと黄ばんでしまいます。シャツのわき部分が黄色くなりやすいという人は、ワキガかもしれません。
✓高カロリー&高脂肪な食べ物をよく食べる
肉をはじめとした高カロリーかつ高脂肪な食べ物を摂りすぎると、身体に皮下脂肪がつきます。するとその脂肪がアポクリン汗腺の活動を促し、ワキガを引き起こしやすくなるのです。
欧米人にワキガが多いのは、このような食生活によって重度の肥満症の人が多いからだと言われています。
✓他者からわきのニオイを指摘されたことがある
周囲の人からの意見は、ワキガかどうかを判断する上でとても重要なポイントです。ニオイはデリケートな話題で正直に伝えにくいものなので、家族や遠慮のない友人などに聞くのが良いでしょう。満員電車での隣の人の顔色をうかがってみてもよいかもしれません。
他人の判断が重要なのは理由があります。実は「自分はワキガだ」と思って病院を受診する人は、ニオイに敏感になりすぎている「自己臭恐怖症」であり、ワキガにあたるほどのニオイを発していない場合がほとんどだそうです。
◆改善方法1:セルフケア
それでは、いよいよワキガの改善方法を見ていきます。まずは自分でできるケアのご紹介です。直接的にわきをケアするだけでなく、普段の生活習慣をも見直すことで、より効果が得られますよ‼
・わきのケア
①腋毛の処理
アポクリン腺は毛根に存在するため、わきに毛が生えているとアポクリン汗が増えてしまいます。さらに、わき毛が多いということは、それだけ菌が繁殖する面積が増えるということです。

ニオイが気になるという人は剃ったり永久脱毛をするなど、処理をおすすめします。制汗剤や殺菌シートの効果も高まりますよ‼
②こまめに拭く
アルコール綿やボディ用殺菌シートでこまめにわきを拭くのが、ワキガには一番効果的です。一度拭くと、なんと効果が約12時間持続するといわれています。肌が敏感な人は肌が荒れてしまう恐れがありますので、慎重に使ってください。
③市販の制汗剤
今は色々なワキガ対策アイテムが売られています。汗の分泌を抑える制汗剤や細菌の繁殖を抑える殺菌剤を、わきに塗ったりスプレーするのが効果的です。制汗剤は汗をかいた状態で使用しても効果がないので、殺菌シートなどでわきを拭いてから使用してください。

しかし、これらのアイテムの使い過ぎはかえって臭いを助長することがあるため、注意してください。クリームタイプやパウダータイプの制汗剤が毛穴を塞ぐと、毛穴の中で汗が溜まり細菌が繁殖しニオイがきつくなってしまう恐れがあるからです。使用量の目安を必ず守り、入浴時に石鹸で念入りに洗い流すようにしましょう。
・生活習慣を見直す
①食生活
ワキガを治す食材は存在しませんが、上記のとおり、高カロリーで高脂肪食なものを食べすぎるとワキガを強める恐れがあります。肉や脂っこいものは少量にして、野菜や大豆製品、魚を中心にした食生活を心がけましょう。和食や精進料理が理想的です。

また、皮膚は酸性の状態に傾くとニオイを発生させる菌の増殖が高まります。弱酸性の状態をキープするため、梅干しや海藻などのアルカリ性食材を積極的に摂るようにしましょう。
②酒やたばこを控える
実はアルコールやニコチンには、汗腺を刺激する作用があるんです。さらに、アルコールやニコチン自体が強いニオイ成分でもあるため、ワキガ以外にも体臭がきつくなってしまいます。
③ストレスをためない
ストレスがかかると、交感神経が活性化します。すると、暑くもないのに汗をかいてしまいますよね。これを精神性発汗といいますが、冷や汗や脂汗を想像してもらえばわかりやすいのではないでしょうか。このときの「イヤな汗」はアポクリン腺からも出ていますので、ストレスを溜めこまないように心がけましょう。

精神的ストレス以外にも、睡眠不足などの身体的ストレスもニオイをきつくしてしまいますので、できるだけ早寝早起きを心がけるようにしましょう。
④こまめに運動する
汗は老廃物も一緒に流す効果がある、というのはよく知られていますよね。そのため頻繁に運動して汗を流す習慣をつけていると、体内の老廃物が代謝され、日常でのアポクリン汗に含まれる老廃物の量が減るという効果が期待できます。

ただし運動時の発汗にもアポクリン汗は含まれるため、運動時は一時的にニオイが強くなることがあります。運動後はワキや陰部などをしっかりと洗いましょう。すぐに洗えなければ、殺菌効果のあるボディーシートなどで拭うと軽減できます。
◆改善方法2:治療
こちらでは病院でのワキガ治療をご紹介します。いずれの場合も、専門医のカウンセリングを受けてしっかりとお医者さんの意見を聞くことが大切です。
・塗り薬
汗を止める効果のある、塩化アルミニウム液入りの塗り薬を塗るという方法があります。病院などで3000円前後で処方してもらえますが、継続的な治療が必要です。

・外科手術
アポクリン汗腺を切除したりレーザーを照射して汗を出なくするという治療もあります。
手術の場合は痛みが続いたり、術後1週間くらい腕が上がりにくくなるというデメリットがあります。レーザー照射はダウンタイムも不要で日常生活への支障はありませんが、複数回の施術が必要です。また、未成年の場合は汗腺も発達途中であり、切除してもまた再発してしまう恐れもあるそうです。
◆あの楊貴妃もワキガだった⁉
昔はワキから出るニオイがフェロモンとして機能していたというのは、先ほど述べたとおりですが、実はあの世界三大美女として知られる楊貴妃もワキガだったのではないかと言われているんです(諸説あります)‼

どういうことかというと、楊貴妃が「身体から良い匂いを発していた」と書かれた文献が遺っていおり、これがワキガだったのではないかとされているのです。古来の人々はわきのニオイを「臭い、不潔なもの」ではなく「魅力的な香り」や「セクシーなフェロモン」としてとらえていたとすれば、納得できるような気も……??
◆まとめ
いかがでしたか? たくさん汗をかく夏はもちろん、暖房や厚着によって蒸れる冬も、ワキガには困った季節ですよね……。

ワキガの原因は自分ではどうしようもありませんが、生活習慣やちょっとしたケアでぐっとニオイを抑えることができます。
また、ニオイエチケットに気を配れる人は素敵ですが、神経質になりすぎては心によくありません。気づいたときにやるくらいがちょうどいいのかもしれませんね。
Photo:Getty Images
Text:K.S