こじラグ谷中の知ってるつもり? 奄美大島で大島紬について学ぶ企画の後編。今回も引き続き協力してくださるのは東京・八王子にある荒井呉服店の若旦那、石毛立介くん。
大島紬を学ぶには、まず奄美大島について知っておかねば、と思い、向かったのは…
金作原(きんさくばる)! 奄美大島の山々の中でも、天然の亜熱帯広葉樹がたくさん残っている原生林です。太古の大昔から残り続けている巨大なヒカゲヘゴなどの亜熱帯植物が生い茂り、天然記念物のルリカケスやキノボリトカゲなど、稀少な生物も生息。言葉では言い表せないほど神秘的なので、動画でお楽しみください。
その後は、大島紬の重要な要素のひとつである泥染めを見学に、野崎染色へ。渋くてカッコ良い野崎徳和さんに実際に泥染めをする様子を見せて頂いたんですが、驚いたのは泥染めする回数!
なんと、約80回!!
バラ科の植物、車輪梅(テーチ木)の枝を細かく割り、大きな釜に入れて煮立たせます。そこから煮た汁を取り出し、つけ込む作業をまずは約20回繰り返します。
それを泥田の中でザブザブと、全体に泥が馴染むように染めていきます。
奄美大島の泥田には多くの鉄分が含まれており、車輪梅(テーチ木)のタンニン酸と化学反応を起こして黒く変化していきます。
この作業を計4回、車輪梅の煮汁に約20回つけ込んだ後に行い、80回の染めの作業が完了します。なんという作業量…。織る作業も繊細で果てしなかったけれど、泥染めもハンパない……。
一枚の反物を作り上げるのに、どれだけ手間がかかってるんでしょうか。眩暈がします。
しかし、悲しい現実も。泥染めも今のメインは洋服で、大島紬はかつての1/100ほど。職人さんは大島紬の泥染めだけでは食べていけないそうです…。どうにかして盛り上げたい!
こんなにトキメいている大島紬が決して消えてしまわないように、まずは清水ダイブか? 買っちゃうのか??
そして、訪れたのは検査場。約1年かけて織り上げた反物が大島紬として認められるか、文字通り明暗を分ける瞬間に立ち会わせて頂きました。
今回は無事合格印を押して頂けましたが、もし不合格だと、一瞬で1年の苦労が水の泡。ホント恐ろしい。
こちらの検査場には、なんと2019年の紬美人に輝いた田原瑞希さんが来てくださって、大島紬の魅力について語って頂いたんですが、実は彼女も唄者(うたしゃ)! これは唄ってもらわねば!!
と、その前に検査場では実際に締め機で織るプロセスを見学できるとのことで、拝見に。
前編で話だけ聞いていた締め機──経糸、緯糸を綿糸でくくるところを見せて頂いたんですが、その細かすぎる作業に気絶!
前回訪れた洋服の織りも凄買ったし、他の伝統工芸などもたくさん見てきましたが、大島紬は別格! 気の遠くなるような工芸で、あらためて目をパチクリさせてしまいました。
最後は、購入に向けて試着。石毛くんの着付けで、気になる一着を試させて頂くことに。
まずは、その軽さに気絶! 他の着物も数度ほどしか袖を通したことはありませんが、メチャクチャ軽い!
そして暖かい!! この日は生憎の天気で寒かったんですが、まったく気にならない。その軽さと柔らかさ、そして暖かさの3段攻撃で気づくとウトウト。なんだかとっても眠いんだ…、パトラッシュ…。ムニャムニャ……
いやいや眠ってる場合じゃありません。紬美人の唄者、田原さんに島唄を唄ってもらわねば!
実際の唄声は動画で堪能いただければと思いますが、とにかく素敵。大島紬を着て聴く島唄、最&高でした。こりゃ清水ダイブしちゃうかな…。
楽しい旅を終え、まだ寒さの残る東京へと戻って参りました。あぁ財布も寒い……。
そうそう。カメラO坪ちゃんのはみ出し編もあるので、そちらもお楽しみに!
Movie&Photo:Naoto Otsubo
Edit:Ryutaro Yanaka
【問い合わせ】
荒井呉服店
042-625-5291
https://www.araigohukuten.co.jp/