FASHION ― 百“靴”争鳴

【シューシャイナー 石見豪】究極の凝り性がたぐり寄せた日本一の栄冠〜前編〜

2019.2.15 2019.2.15
2019.2.15

こじラグ谷中が、シューシャイナー 石見豪の日本一の靴磨きを体験し、その生き様を語って頂きました!

新進気鋭のシューシャイナー、大阪の石見豪が待望の東京店を1月にオープンしました。住所は桜丘町。看板を掲げたのは竣工して40年の歴史があるマンション、シャトーポレール渋谷の地下1階。靴好きなら「あれ?」と思ったはず。そう、そこは靴修理の雄、ユニオンワークス生誕の地なのです。

リペアラーとシャイナーの邂逅

お察しのとおりこの物件は つい先日までユニオンワークスの一号店でした。1月7日をもって我々が引き継ぎましたが、ユニオンワークスのサービスも当店を窓口にこれまでどおりお受けします。修理は門外漢ですから、スタッフともどもユニオンワークスの銀座店で1年かけてノウハウを学ばせていただきました。

そもそもの縁は いまから2年半前。(ビスポークテーラーの)バタクの中寺(広吉)さんが大阪まで会いにきてくれたことに始まります。中寺さんが、中川さん(=中川一康。ユニオンワークス代表)を紹介してくれたんです。

それからは事あるごとに顔を出しました。靴修理を誇れる職業にした第一人者ですからね。少しでもぼくを知ってもらおうと思って。そんなこんなで、銀座店が入っているビルの2階でポップアップストアをやってみないか、という話になった。イベントはおかげさまで盛況でした。ところがその部屋はお客さまからお預かりした靴を管理するには小さすぎた。これでは東京進出の足がかりにするのは難しいなと頭を悩ませていたところ、だったら、渋谷の店を譲るよっていわれて。

LED並みに切れない、電球のような光沢

銀座三越が主催した靴磨き日本選手権大会。記念すべきその第一回大会で優勝を勝ち取ることができましたが、間違いなく勝てると踏んでいました。単純に技術でみたときも負ける気はしなかったけれど、ぼくは念には念を入れて、大会で使われる靴と道具をすべて買い揃えて子細に検証しました。

それだけじゃありません。ぼくはみながあっと驚くやり方で競技にのぞんだんです。大会ルールはすでに乳化性クリームを塗り込んだ状態の靴を20分でいかに光らせるか、というものでした。つまり、鏡面磨きのみやればいい。ところがぼくは通常のお手入れどおりクリーナーでクリームを落とすところから始めることにした。誰もやらないことをやればがぜん有利になりますからね。

むろん、それには一にも二にも練習です。大会に出ることが決まってから1日たりとも欠かさずタイムを縮めるトレーニングに励みました。努力の甲斐あって、15分で磨けるところまできた。これで負けるようならなにか政治的な力が働いているに違いないと思って舞台にあがりました(笑)。

その技術はこれまでに4回、変えました。クロスを使うのか、指を使うのか。はたまたどんなワックスを使うのか……試行錯誤してたどり着いたのが現在のスタイルです。

鏡面磨きって、ワックスをやさしく塗り重ねていく、というのがセオリーですよね。ところが ぼくはぐりぐり混ぜる。そのせいか、ぼくの右の二の腕は左に比べて7センチ太い(笑)。企業秘密なので詳細は省かせていただきますが、1年前に磨いた靴がちょっと掃いただけでツヤを取り戻したときにはさすがにびっくりしました。革のことを考えれば2ヵ月に1回はすっぴんに戻したほうがいいので、ここまでもつのは考えものです(笑)。

ぼくの鏡面磨きは薄塗りも特徴。そのツヤは自分でいうのもなんですが、丸みがあって、上品。光源の種類でいえば、蛍光灯じゃなくて電球に近い。

話は飛びますが、東京をベースに生活するようになって唯一の不満はたこ焼き。素材を生かした たこ焼きが好きなんです。北新地のたこ八とか天王寺のやまちゃんとか、どちらもなにもつけずに食べられるんですが、めっちゃ美味しいですよ。考えてみれば、女性の好みも化粧を落として変わらない人。そういう嗜好がこの鏡面磨きを生んだのかも知れない(笑)。

全国ツアーをするバンドに楽曲を提供

そもそもぼくは、音楽で飯を食いたいと思っていました。

母が忙しくしていたので、小学生のころはTSUTAYAで借りる映画が週末の楽しみでした。母は女手一つでぼくら兄弟を育ててくれました。

ぼくは根っからの凝り性だったようです。土日で平均8本は借りていたと思う。つまり、起きているあいだはほとんど映画を観ていた(笑)。数え切れないほどの映画を観てきて もっとも心を揺さぶったのが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。マイケル・J・フォックス演じるマーティがチャック・ベリーの『ジョニー・ビー・グッド』を弾いているのを目の当たりにして、揺さぶられるどころか鷲掴みにされた。

さっそく母にギターをねだったものの、「これで我慢しなさい」と買い与えられたのはスケボーでした(笑)。スケボーはスケボーで楽しかったけれど、ギターへの想いは募るばかり。中学に入ったある日、ぼくは実力行使に出ます。なんと、母に内緒で楽器店へいき、勝手に予約するんです。もちろん子どもの悪知恵なんてすぐにバレます。こっぴどく叱られていると、救世主があらわれました。不憫に思った祖母が買ってくれたんです。

寝落ちするまで練習するギター漬けの日々が始まりました。目が覚めたらギターを抱いて寝ているなんてしょっちゅう。昨日までできなかったテクニックが弾けるようになっていたことも珍しくありません。寝ながらイメージトレーニングをしていたんでしょうね。

それなりに上達すれば、腕試しがしたくなるもの。地元に上手いやつがいると聞けば道場破りさながらそいつの中学に乗り込んだものです(笑)。

10代後半には全国ツアーをするバンドに楽曲を提供するまでになりました。

後編へと続く

Video&Photo : Naoto Otsubo
Text : Kei Takegawa
Edit:Ryutaro Yanaka

【問い合わせ】
THE WAY THINGS GO 本店
大阪市中央区淡路町2-5-8船場ビルディング415
06-6203-0551
https://www.twtgshoeshine.com

THE WAY THINGS GO × UNION WORKS
東京都渋谷区桜丘町22-20シャトーポレール渋谷 B1F
03-5458-2484

石見豪(いしみ・ごう)
10年のサラリーマン生活を経て靴磨きの世界へ。独学でその技術を習得し、2015年9月、靴磨き専門店THE WAY THINGS GOを地元大阪に開業。19年1月、東京に2号店をオープン。靴磨き日本選手権大会(銀座三越主催)の初代チャンピオン。

Author profile

竹川 圭
竹川 圭
Kei Takegawa

エディター
ライフスタイル誌を経て独立。下町の人情と赤提灯に惹かれ、社会に出てからはイースト・トーキョーを転々とする。近著にノンフィクション『至高の靴職人』(小学館)がある。

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