FASHION ― 誰がアパレルを殺すのか

AIを活用してファッショントレンドを予測する「FASHION POCKET」

2019.2.3 2019.2.3
2019.2.3

人間とAIが共存しながら、トレンドをハズレない商品企画を

年始に日本百貨店協会が発表した2018年の全国百貨店売上高は、前年比0.8%減の5兆8870億円で2年ぶりにマイナスに転じたという。銀座や新宿を歩いているとインバウンド(訪日客)で活況のように見えるが、衣類品の売上高は同3.1%減で、2008年と比べて10年間で約1兆円も減っているそうだ。

アパレルの販売が低調なのも深刻だが、その裏側には商品の「売れ残りと大量廃棄」という深刻な問題もあって、この連載の起点となっている『誰がアパレルを殺すのか』にもある通り、業界全体の構造的改革が急務となっている。

生活のあらゆるところに入り込んできているAI技術

今回、年頭にあたって“ファッショントレンドの新しい読む方”をテーマに取材先を探していたら面白い会社を見つけた。ファッション業界でも「AI(人工知能)」は高い関心を持って各社がその活用に取り組んでいるが、ファッションポケット株式会社は、AIを用いたファッションコーディネートの解析技術をもとに、ファッショントレンド予測やアパレル企業向けの商品企画サービスを開発している。取材時に「ちょうど会社創業一年を迎えました」と言う社長室長の小井土太一さんに話を伺った。

自分たちの日常生活を見回しても、たとえばGoogleの検索をはじめ、AmazonやYouTubeなどの「閲覧からのお薦め機能」、迷惑メールの検知、PCやスマホの顔認証など、AIは確かに我々の生活をより便利にしている。“ユーザーの嗜好性がデータとして蓄積される”AIを活用したサービスはより身近に深く広がっていくだろう。

そういうAIと人間が共存していく社会に進行している中で、「AIとファッションの相性は良いと思いますか?」と問うと、小井土さんは、「ファッションに取り組む人間の感覚や感性と、AIのビッグデータを使った分析は相性が抜群です」と断言する。

余剰在庫や大量廃棄を解決したいという思いから創業

――御社、ファッションポケットはどういういきさつで創業したのでしょうか。

小井土 自分も会社設立のメンバーですが、アパレル業界はバブル崩壊以降、業界全体が縮小傾向にあり、商品購入者が少なくなるのに反して、生産量はさほど変化はありません。

――そうですね。特にドレス、カジュアルとも廉価ブランドが増えて、過剰在庫を抱えている問題は年々深刻になっています。

小井土 弊社代表の重松は、アパレル業界が課題としている余剰在庫や大量廃棄に注目。それをAIを活用して解決したいという思いから創業しました。自分も学生時代にアパレルでアルバイトをした経験があり、ファッションに興味がありました。

――具体的にAIで何を解決しようという事業なのですか。

小井土 これまでファッショントレンド(流行)は、デザイナーやMD(マーチャンダイザー)など作り手の主観的な感性や感覚に頼ってきました。「次のシーズンはどういう服が流行るのか」を常にマンパワーで分析してきましたが、主観が入ったり、サンプルの母数が少ないなど、「数字でトレンドを見ること」ができませんでした。

――確かに。でも「人間の感覚や感性」でトレンドが生まれ、爆発的にヒットすることも過去にはありました。

小井土 ええ、確かにそういう側面があるのがアパレルの面白みですが、AIシステムを使うことでトレンドを数値化、定量的に見ることができ、それを参考に商品企画ができるのは大きいです。

――それは、マンパワー+AIで“トレンドの誤差”を少なくしていくということですか。

小井土 そうです。人間とAIが共存しながらトレンドをハズレない商品企画をすることで、適正な数量を生産し、プロパー(通常価格)の販売率が上がり、余剰在庫をなくすことができます。

――それは理想的な循環ですね。御社は創業一年とのことですが、そのシステムはもう稼働していますか。

小井土 はい、大手アパレル企業の複数社に導入され、稼働しています。

AIでファッショントレンドは本当に読めるのか

――もう一度、御社のシステムで「できること」を教えてください。

小井土 要約すると、アパレルブランドのEコマースやカスタムオーダー、アパレル企業の需要予測やMD最適化、画像を用いた店舗体験の革新などのサービスを提供しています。まず、世界中のインターネットやSNS、ECサイト上でオープンになっている画像を収集し、世界に40台あるスーパーコンピュータを駆使して、随時クローリング(データ収集)して収集してきたデータを、弊社が独自に開発した画像検知AIでより詳細に解析します。

――それは具体的にどういうことですか。

小井土 コーディネート画像からトップス、ボトムスのアイテムと、その色や柄、素材、丈感などをビッグデータとして数値化します。これまで過去20年分を収集していて、トレンドの波や法則性が見えてきます。それを元に、「半年先は何が流行るのか」を分析することができます。

――つまり、「AIでファッショントレンドが読める」ということですか。

小井土 はい、予測は可能です。弊社はAIを使って、春夏秋冬4つのシーズンをさらに分割して8シーズンに分け、そのシーズン期初にどんな商品を投入すれば売れるかを、6ヵ月前から予測していく需要予測を行っています。

――それは、色や柄、素材感なども予測できるのですか。

小井土 これまでの「流行色」は、日本流行色協会やPANTONE(パントン社)がリードして、2019年ならリビングコーラル(PANTONE社)やアウェイクニングオレンジ(日本流行色協会)が流行ると事前にインフォメーションされ、アパレル各社はそれに足並みを揃えることで、店頭がその色で飾られました。これからは「人間の感覚をAI化する」ことで、「世の中の本当のトレンドは何か?」を先読みすることができます。

――なるほど。御社のシステムの「四角いボックス」が着ている服を検知するわけですね。

小井土 四角いボックスは、アイテムの検知と、色や素材の検知など複数のAI を活用しています。このボックスは、年代別の着こなしや海外のコレクション会場の来場者など、様々な軸で見ることができます。

――ということは、ファッションビルやショッピングモールなどの来客者の着こなし情報なども検知・解析できるわけですね。

小井土 某大手ファッションビルとの取り組みでは、施設内のお客さまの服装から、施設内の回遊性なども読み取ることもできます。


FASHION POCKET社提供
一番重要なのは“感性”を数値化・定量化すること

――それはアパレル業態に限らず、様々なカテゴリーで活用できそうですね。

小井土 従来なら商品購入者のPOS情報でしかわからなかった消費者の属性や行動が、モール内の購入まで至るプロセス(導線)なども分析できるので、「ターゲットが本当に来店しているのか」や、店舗内の商品配置、マネキンのディスプレイ(VMD=ヴィジュアルマーチャンダイズ)などまでトータルで「売れる店」に導くことも可能です。

――AIで「マネキンに着せる意味」まで深い分析ができるんですか。すごいですね。

小井土 分かりやすく言うと、「みんなが着ている服はなんだろう?」を分析するのが弊社のシステムの特徴です。

――それを分析して、「みんなが欲しい服はなんだろう?」との誤差を少なくすることで、作り手も買い手もウインウインになるのにAIが手助けするということですね。

小井土 AIがあらゆる分野で活用されても、人間は必ず必要です。そういう幸せな共存体制を作っていきたいと思います。

Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii

【問い合わせ】
FASHION POCKET
http://www.fashionpocket.jp/

Author profile

梶井 誠
梶井 誠
Kajii Makoto

今はなき講談社のメンズファッション雑誌『Checkmate(チェックメイト)』編集部のファッション班を経てフリーランス。セレクトショップのカタログやメンズ雑誌のファッションページの取材・原稿を担当。SKE48箱推し、フィロのス・奥津マリリ推し、ジュビロ磐田サポーター。1961年福井県出身。

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