知恵熱だと思っていたのは意外な病気だった!?
友人や同僚がじっと考え込んでいたりすると、「急に脳を働かせたら知恵熱が出るよ」と言ってからかったりすること、ありますよね。本当に大人でも頭を使いすぎると知恵熱が出るのでしょうか?
また、風邪でもなくせきや鼻水の症状もないのに突然高熱が出たら「もしかしてこれ、知恵熱かも?」と疑いたくなりますが、普通の風邪による発熱とはどのような違いがあるのでしょうか?
今回はそんな「大人の知恵熱」について解説していきます!
目次
■そもそも「知恵熱」とは?
■ストレス性高体温症って?
■「大人の知恵熱」の症状
①急性タイプ
②慢性タイプ
③急性×慢性併発タイプ
■「大人の知恵熱」の原因
①急激なストレス
②慢性的なストレス
③身体の不調との関係
■風邪で熱が出るときとの違い
■高熱を治す方法と予防法
①熱を下げるには?
②予防のための対策は?
■知恵熱に負けないための知恵
そもそも「知恵熱」とは?
本来、「知恵熱」という言葉は生後1年以内の乳児が出す熱で、原因がよくわからず短時間で治まるもののことです。知恵がつき始める時期に起こるため、昔は知能の発達と関係があるのではないかと考えられていました。俗に使われる用語ではありますが、医学的な病名ではありません。
風邪以外で熱が出たときは大人にも「知恵熱」という言葉を使ってしまいがちですが、そもそも「知恵熱」という言葉が乳児の発熱について述べたもの。つまり、厳密に言えば「大人の知恵熱」というのはありえないということです。
「大人の知恵熱」にあたると考えられるのが、「ストレス性高体温症(心因性発熱)」という病気です。
ストレス性高体温症って?
大人が発症する「ストレス性高体温症」、別名「心因性発熱」とはいったいどういうものなのでしょうか。
緊張やストレスによって37度以上の発熱が出て、病院で検査をしても病気が見つからず、身体に異常が見られない……というケースが「ストレス性高体温症」にあたります。症状は大きく3つのタイプに分かれていて、原因もさまざま。
「知恵熱」という言葉が医学的な用語ではないのに対し、「ストレス性高体温症」はれっきとした病気の名前です。ここでは「大人の知恵熱」として「ストレス性高体温症」をご紹介します。
「大人の知恵熱」の症状
ストレス性高体温症には3つのタイプがあります。当てはまるものがあれば、あなたもストレス性高体温症かもしれません!
①急性タイプ
強いストレスを感じたり極度の緊張状態におかれたりすると身体が熱っぽくなり、38度~39度という高熱が突然出てしまうのが急性タイプです。多くの場合、ストレスの原因となるものを取り除くことですぐに症状が治まります。学校や会社がストレスの原因であるときは、到着したら熱が出てしまい、病院に行こうと思って家に帰ると熱が下がっている……なんてことも。
②慢性タイプ
長期にわたるストレスや疲れのせいで、37~38度という微熱程度の発熱が長く続くのが慢性タイプです。この場合は原因を取り除いた後も症状が出続けることが多く、緊張型頭痛や精神疾患など他の病気を伴う場合もあります。
③急性×慢性併発タイプ
いつも慢性的な微熱がありながら、短期間で過度の精神的負担を感じると急性タイプの症状も出る……というのが併発タイプ。今は慢性タイプだけの人もこれから急性タイプを発症することがあるため、のちにこのタイプに分類されるおそれがあります。
「大人の知恵熱」の原因
ストレス性高体温症になる原因は人によってさまざまですが、やはりその名の通りストレスを感じることが引き金になります。自分でも気づかないうちに日常の出来事がストレスの原因になっていることもあります。
①急激なストレス
多くは急性タイプの原因になるのが、短期間に強いストレスがかかった場合です。仕事が突然忙しくなったり、異動や転職などで環境が変わったり、大切な商談でプレッシャーを感じて極度に緊張したり、ビジネス面でのストレスを感じる原因は日々転がっています。
またプライベートでも、家族が怪我や病気で入院したり、友人と大ゲンカしてしまったり、恋人に別れを切り出されたりといったことが急激なストレスになりえます。
②慢性的なストレス
慢性タイプの原因になりやすいのが、長期的にストレスがかかり続けているというものです。毎日残業続きだったり、イヤミばかりの上司や仕事のできない部下など職場の人間関係がうまくいっていなかったり、今に始まったことではないけれどストレスの原因になっている、という場合があります。
家庭では育児や介護など、ストレスや疲労が長く続くものが原因になるおそれがあります。しかし、これらの原因は取り除くことが難しいですよね。さらに、慢性タイプは原因を取り除いても症状がすぐによくなるとは限りません。
③身体の不調との関係
精神的なストレスから熱が上がるのがストレス性高体温症ですが、密接につながっている身体と心の関係から身体の不調も起こることがあります。
ひとつは、ストレスを感じると交感神経の働きが活発になり、そのせいで体温が上がり、自律神経やホルモンバランスに乱れが生じてしまうというものです。
また、熱が出ることで倦怠感や集中力の低下につながり、イライラしたり仕事の能率が悪くなったりしてしまうこともあります。
風邪で熱が出るときとの違い
ストレス性高体温症は、風邪で発熱するときと何が違うのでしょうか? その見分け方は、「薬が効くかどうか」です。ストレス性高体温症は風邪などの感染症と仕組みが違うため、一般の解熱剤や漢方薬が効きません。
風邪などのウイルスに感染すると身体が炎症を起こし、ウイルスをやっつけやすくするために脳が交感神経と筋肉に体温を上げるよう指令を出します。薬を飲むとこの体温を上げる物質の産生を抑えてくれるため、熱が下がるのです。
しかし、ストレス性高体温症で熱が出る場合は熱を上げる物質が産生されません。ストレスに対処しようとして交感神経が刺激されるため、この物質がなくても体温が上がるからです。
熱が上がる原因として、風邪やインフルエンザといった感染症以外にも免疫系の疾患や腫瘍などがあります。それら身体の病気は、CT検査などの画像で発見できたり、血液検査などの数値でどこか悪いところがあったりするため、原因が比較的簡単に突き止められます。
しかし、精神的なストレスから熱が上がるストレス性高体温症の場合は、見た目や数字でははっきり基準がわからない「ストレス」が原因ということから、病院に行っても「異常はない」と診断されることも。ここ最近周りの環境の変化やなにか気がかりなことが生じていれば、ストレス性高体温症と診断されるでしょう。