ミニマル×ミリタリーで禁欲的な“エロサバ”を表現
90年代後半にスタイリストの井嶋カズさんが『Begin』の誌上でしていたスタイリングを、2017年度版にアップデート。当時のプラダを彷彿とさせるミニマルな組み合わせを基本に、ミリタリーのストイックなイメージをちょこっとだけプラスしてみました。
アイテム
ジャケット/ニール・バレット
シャツ/フェデーリ
ネクタイ/プラダ
パンツ/Gap
手に持ったサングラス/レイバン
ベルト/プラダ
バッグ/エルメス
靴/WH
(すべて干場私物)
最近、めっきり90年代のムードにハマっているのは前からお伝えしている通りなんですが、このコーディネイトは、当時『Begin』でスタイリストの井嶋カズさんが手がけたページへのオマージュとしてトライしてみたスタイルです。なにせ、そのころはこんなにカッコいい組み合わせがあるのかと感動し過ぎて、雑誌を切り抜いて持ち歩いていたほどですから、かなり衝撃的だったと記憶しています。
カズさんは、言わずと知れたカリスマスタイリスト。雑誌や広告、TV、CMなどで幅広く活躍していて、ミュージシャンや俳優、女優などからも慕われている存在です。僕も仕事で何度もご一緒させていただきましたが、そのたびに新しい発見を授けてもらいました。で、そのときの『Begin』では、カズさんが僕が大好きだったプラダっぽいミニマルなスタイルに、軍モノをミックスしていたんですよね。意外性のあるハズしというか、そのおかげでランウェイのコーディネイトがグッと身近に感じられたんです。こんなふうに着くずせばいいのかと、カズさんへのリスペクトで目がハートマークになりました。
うろ覚えで申し訳ないのですが、当時のプラダと言えば、両胸にポケット、肩にはエポーレットが付いたベージュの半袖のパイロットシャツにカーキのネクタイ、ブラックのテーパードパンツにボリュームのある靴といったスタイルが印象的で、そのカラーリングもやたらとカッコよかったんです。でも、いかんせん自分にはちょっと隙がなさ過ぎる感じがして、そのままやるには気が引けたんでしょうね。
でも、カズさんからもらったヒントのおかげで、当時はこんな感じのコーディネイトでよく会社に行っていました。まぁ、編集者だからできたハズしのスタイルではありますが……。で、このコーディネイトは今だったらこんな感じだろうな、と思ってアレンジした2017年度の進化版。シルエットも昔よりコンパクトにまとめて、シャープな見栄えを追求しています。ニール・バレットのセットアップのジャケットに、とろみのあるフェデーリのシャツ、GapのスリムテーパードのカーゴパンツにWHのボリュームのあるプレーントウ。あとはデカバッグをアクセントとして加えたのもポイントです。
これも前から言っていることなんですが、ミリタリーウェアの男臭さや無骨さに対する憧れる一方、あの禁欲的なイメージにどうにもこうにも“エロス”を感じてしまうんですよね。いわゆる“制服フェチ”ってヤツですね。キャビンアテンダントやナースを見ると“キュン”としてしまいませんか? 制服には、きっと異性を惑わす“マジック”があると思うんですよ。
真面目な制服を着ているけれど、本当の私のことは誰も知らない、みたいな。そういう隠微な世界に否応なしに惹かれてしまう。隠そうとしても、そこから滲み出てしまう“エロス”っていうのがあって、でも“いや、俺は本当のお前を知っているよ”ってなると、まだ次の展開があるじゃないですか。そんなふうになったら、そこからは断然“展開ラグビー”ですよ! スピード感に溢れ、右へ左に相手を翻弄し、トライを全力で奪いにいく。そう、快速のトライゲッターになるしかないんです!
なんの話をしているのか、自分でもわからなくなりましたが、要は真面目に見えるミニマルなスタイル、それも制服的な要素をもったスタイルには、ほとばしる“エロス”が内包されているってことなんですけど、そのメンズ版にトライしたのがこれ。かなり強引ではありますが、皆さんも、ぜひ挑戦してみてくださいね。それでは、今回はこのへんで。チャオ!
今回のスタイルのキモは……。
● カラーリングの基本は、ベージュ、カーキ、ブラックの3色。
● シルエットは全身をコンパクトにまとめる。
● あえてタイドアップして凛々しいイメージに。
● ボリュームのある靴とデカバッグをアクセントに活用。
● ミリタリーを感じさせるアイテムはカーゴパンツの一点のみに。
Photo: Ikuo Kubota(OWL)
Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
3冊目の書籍が発売になりました。今回は、難しいとされる大人のカジュアルスタイルについて書いています。読んでない方はぜひ!
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「エロサバ」とは、エロいコンサバの略で、干場の哲学により生まれた造語。シンプルでベーシック、コンサバティブな洋服を着ているのに、なぜかエロく見えるスタイルのこと。例えば喪服の女性。成熟した大人の女性が喪服を着ていて、メイクもナチュラルで抑制しているのに、不思議と色っぽく見えるスタイル。例えば、普通の白いシャツを着ているのにも関わらず、胸元のボタンの開け方や袖口のまくり方でSEXYに見えるスタイル。粗悪な素材でデザインが変わっているシャツでは駄目。上質な素材でベーシックなシャツだからこそ、崩して着こなしても上品さが保てるのです。男性で例えるなら、仕立てられたグレーの無地のスーツを着て、上質な白シャツに黒の無地のネクタイのような極めてコンサバティブなスタイルをしているのに、内側から大人の色気が香るスタイルのこと。
『FORZA STYLE』編集長
干場義雅
尊敬する人は、ロロ・ピアーナの元会長セルジオ・ロロ・ピアーナさん、ピエール・ルイジ・ロロ・ピアーナさん、トッズの会長ディエゴ・デッラ・ヴァッレさん、格闘家のブルース・リーさん、初代タイガーマスクの佐山サトルさん。 スポーティでエレガントなイタリアンスタイルを愛し、趣味はクルーズ(船旅)と日焼けとカラオケ。お酒をある一定以上飲み過ぎると、なぜだか一人感無量状態になって男泣きする現在44歳の小誌編集長。東京生まれ。