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FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
FASHION 林信朗の「お洒落偉人に学べ!」

じつは、自分大好きのナルちゃん ウィンザー公編

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初めてファッションリーダーという捉え方をされた、ウインザー公

"世界には想像の遥か上を行く、お洒落な偉人たちがいた"。彼らのスタイルや生き方を学ぶことこそ、スマフォー(スマートな40代)への近道と考えた編集部員たちは『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任した大先輩である服飾評論家 林 信朗氏を訪ね、教えを乞うことに。新連載二回目は、イタリア人でも憧れる英国ファッションのアイコン、ウインザー公についてたずねます。

 

ヤナカ:先輩、ファッションアイコンとしてのウインザー公の活躍や背景は、よ~くわかりました。イギリス王室のセレブというと、ぼくなんか『ローマの休日』の主人公アン王女のモデルとも言われているエリザベス女王の妹、マーガレットさんあたりが始まりなのかなあと思っていましたが、こうしてお話を伺っていると、ウインザー公が元祖ってかんじですね。

イギリス国王ジョージ6世の次女。姉は女王エリザベス2世で、『ローマの休日』のアン王女のモデルとも©gettyimages

林:そうだね。新聞やラジオ、ニュース映画などのマスメディアの一大伸長期とも重なったからね。ファッションリーダーという捉え方をされたのもウインザー公が初めてじゃないかな。当時の英国の国力を考えれば、若き、ファッション大好きプリンスのスタイルが世界中に影響を及ぼしてもなんのフシギもないよね。そういえば、ウインザー公自身も自分の人生を振り返って「ぼくはファッションリーダーに仕立てられたと言ってもいいと思う。演出は洋服店、観客は世界というわけさ」てなことを言っているんだよな。しかし、写真の撮られ方など見ると、そういう自分を嫌いじゃなかったはわかりますよ(笑)。自分大好きの正真正銘のナルちゃんなんですよ(笑)。

©gettyimages

ヤナカ:でね、先輩、問題は、そのナルちゃんからぼくたちは何を学ぶか(笑)。ホッシー編集長も言ってましたが、ネタの宝庫って。

林:いやあ、そりゃもう。ヤナカさん、いくらでもあるわけですよ。

林:とりあえず、いくつかあげましょうね。

ヤナカ:お願いします。ぼくの持ちネタとして末代まで流用させていただきますから(笑)。

林:ははは、ヤナカくんね、ウインザーって……ああもう「公」つけるのやめるよ(笑)……どれくらいの背丈だかごぞんじですか?

ヤナカ:どうだろう、180センチはないかな。英国人にしては低いほうじゃないですか?

林:そうなんだよ。実は、ぼくと同じで170センチ

ヤナカ:ええ! そんな小さかったんですか。

林:そう、小柄なんだ。日本人サイズと言ってもいいね。キミが来る前に調べたんだが、20代から50代までの日本の男の平均身長は169から171センチといったところ。だから、ぼくたちにとってウインザーの着こなしはとても参考になるんです。そこがひとつだね。

第89回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされた、ライアン・ゴズリング©gettyimages

ヤナカ:あたってますね。アカデミー賞のイケメン、ライアン・ゴスリングなんか184センチでモデル並みでしょう? それにくらべれば、ウインザー公の170センチ、ずっとリアリズムあるよな~。

林:ただ、小顔だからね。

ヤナカ:まあ、そこはツッコまれてもねえ(笑)。顔ばかりは小さくならないし(笑)。

©gettyimages

林:(写真を見せながら)ほら、ウインザーはよくダブルのスーツを着てるんだけど、別に背が小さいという印象はうけないよね。

ヤナカ:ぜんぜんないです。すっきりしてます。

林:ダブルのスーツってのは難しくてね、どちらかといえば背の高いひと向きなんですよ。背の低いひとが着るとね、低い位置に密集しているボタンばかりが目立って、重心が下にあるように見える。低いひとがより低く、もっさり見えてしまう傾向あり。で、ヤナカ君どうよ、このウインザーは?

ヤナカ:何度見ても「すっきりしてる」。それにつきます!

林:秘密があるんです。

ヤナカ:ごくん。

林:ウインザーはスリムな体型なんです(笑)。

ヤナカ:あらら、そりゃ先輩、ないですよ。

林:ははは、失敬、失敬。注目すべきはボタンです。ダブルでもフォーツゥーという前が多いんです。

ヤナカ:フォーツゥー?

©gettyimages

林: はい、付けられているボタンの数とかけるボタンの数をセットにしてこう呼ぶのね。4つボタン2つがけがフォーツゥー6つボタン2つがけならシックスツゥーとなる。

ヤナカ:ほ~! ちょっと通っぽいですね!

林: そう。ウインザーはダブル前のなかでも、変な言い方だが、もっともシングルに近いフォーツゥーとフォーワンを好んだんですよ、あなたの言うとおりすっきりみえるから。

ヤナカ:なるほど。たしかに6ボタンのジャケットはヘビーで、身体の小さいぼくらには「重い」かんじがありますものね。

林:そのうえにもうひとつ工夫がある。これもダブルのスーツがすっきりスリムに見えるテクニックなんですな。わかる?

ヤナカ:襟とか関係ないですか?

林:関係なくはないが、もっとジャケットのバランスの本質的な問題。ウエストの位置を高くしてるんです。

ウエスト位置を高めに仕立てた、ウィンザー公のダブルジャケット
©gettyimages

ヤナカ:はいはい、この左の方のジャケットと見比べると、たしかに。

林:ヤナカ君、女性を見るとき、ウエストのくびれって気になりませんか。

ヤナカ:ええ、まあ(笑)。それを強調される女性もいらっしゃいますよね。

林:男のスーツも同じなんですよ。ウエスト位置を不自然ではない程度に上げれば、見る人の目線も上に上がる。これをウインザーは、ほとんど一手にウインザーのジャケットを仕立ていたテーラーのショルテと編み出したんだと思う(ウインザーは、スーツの場合ジャケットはショルテ、トラウザーズはフォースター&サンズと別々に仕立てていた)

ヤナカ:なるほど、それも参考になるなあ。

林:色についてもウインザーはうるさかったですよ。これもぼくたち見習いたいなあ。

©gettyimages

ヤナカ:モノクロの写真が多いのではっきりとは言えませんが、どうですか、明るい色のスーツやジャケットスタイルが多いようにみえますね。

©gettyimages

林:最初にお話ししたように、ウインザーが王子として世界にデビューしたときは、第一次世界大戦が終わったころですからね、英国を含め、ヨーロッパはみな暗い色の服ばかり着ていたんですよ。

ヤナカ:そりゃそうですよね、戦争中明るい色の服なんか着る気分じゃないだろうし、また、衣服の生産もストップしてたんでしょう。

林:ウインザーは、見事なまでのカラーコーディネーションで、英国と世界をあっと言わせたんだね。とくにデイウエアと英語で呼ぶ、日中のスーツやジャケットスタイルだね。

ヤナカ:はい、英国の王族や貴族は昼と夜の服装を変えるのが基本と聞いております。

林:そう、夜はおもにウインザーのトレードマークでもあるミッドナイトブルーのディナージャケットや燕尾服だったわけだが、昼はね、町中ではライトグレーからダークグレーのグレースケールのスーツを見事に着分ける。それが実にスマート。カントリー用には、ツイード、ツイード、ツイードですね。ベージュ、キャメル、ブラウン、グリーンなどのツイード、それも「プリンスオブウェールズ」などチェックのものが多い、ガンクラブ、ハウンドツースとかね。チェックにはね、赤やブルーなど様々な色糸がつかわれているから華や、しかもベリーブリティッシュな柄ですからね。

©gettyimages

ヤナカ:日本の男性はストライプよりもチェックが好きなような気がします。ウインザーの着こなしをマネすればいいんじゃないですか。

林:うん、特にね、チェックオンチェックは芸術的。スーツ、シャツ、タイどれもチェックなんだけれど、ケンカせず調和してる。組み合わせを見て、マネできるものはどんどんマネすればいいんだよ。

〈続く〉

Text:Shinro Hayashi
Portrait:Tatsuya Hamamura
Edit:Ryutaro Yanaka

林 信朗
服飾評論家
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任した後、フリーの服飾評論家に。メンズファッションへの造詣の深さはファッション業界随一。ダンディを地で行く大先輩。







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