このままでは男が消える!?
気軽に性転換をしないのは人間だけ!!
男を男たらしめるY染色体をご存知でしょうか。私たち哺乳類は、このY染色体の有無によって性別を決定されています。そのY染色体が今、退化の一途を辿っているというから、FORZA読者の男性も気が気じゃありませんよね? Y染色体がどんどん小さくなり、やがて男が消えてしまうかもしれないって本当なのでしょうか!?
そこで今回、著書『男の弱まり』の著者であり北海道大学准教授である黒岩麻里さんにお話を伺うことに。生物学的に男が男らしく在り、モテるためにはどうすれば良いのか!? 人間以外の生物は気軽に性転換をしている!? そんな興味深いお話を一挙公開いたします。

西内:はじめまして。今回、著書『男の弱まり』を通してY染色体と男らしさの関係、また生物学的な性差の研究についてお教えいただきたいです。よろしくお願いします。
黒岩:よろしくお願いします。
西内:早速ですが、本著『男の弱まり』には、男が男であるための遺伝子“Y染色体”が退化しており、いずれ男の人が絶滅してしまうという説もあると書かれていましたが、それを止める手立てはないのでしょうか?

黒岩:そうですね、1個人の努力では止められないというのが現実です。よく、Y染色体が退化し小さくなっているという話をすると「最近、草食系男子が増えているのもY染色体と関係があるのか」という質問をされるのですが、それは全く関係ありません。その理由は、遺伝子というのは何世代にも渡り少しずつ変化していくものなので、最近になって言われだした「草食系男子」という現象が染色体に関係するものだとは考え難いんです。ただ、これは仮説ですが、もしかしたら数世代に渡って女性が「Y染色体が大きい男性」ばかりを選び子孫を残し続けたら、Y染色体が小さくなるのを防ぐことができる可能性もありますね。ただ、現実的には、ほぼあり得ない話ですが。
西内:そうなんですね。そもそも、女性が「Y染色体が大きい男性を選ぶ」ことは可能なのでしょうか? 遺伝子の大きさって、調べられるのですか?
黒岩:はい、今の技術をもってすれば、人の全遺伝子配列を読むことができるので、Y染色体の大小を調べることも可能なんですよ。
西内:では、私たち女性の目からみて“優秀な男性”つまり、稼ぎの多い男性や力の強い男性はY染色体が大きいと思って良いのでしょうか?
黒岩:それは違います。Y染色体の大きさと、私たちが認識できる男性の優秀さには今のところ相関関係は認められていません。

西内:そうなんですね。私たち女性は往々にして「優秀な遺伝子を残すために優秀な男性との間に子供を授かりたい」と思うものですが、Y染色体との関係はわからないのですね。では、Y染色体の退化により男性が絶滅し、人類が絶滅してしまうかもしれないというのは本当でしょうか?
黒岩:はい。このまま退化し続けると、理論的にはY染色体は500万年後〜600万年後に消滅する可能性はあります。ただ、これほどの月日を要するのであれば、おそらくそれまでに他の人類滅亡の要因があるはずなので...。Y染色体が原因で人類が滅亡するということは、現実には考え難いですね。
西内:そうなんですね。人類滅亡を防ぐため、私が率先してY染色体の大きい男性と子孫をたくさん残さなければならないのかと心配しました。では、本著『男の弱まり』にかかれていた「アンドロスタジエノン」というフェロモン成分についてお伺いしたいのですが...。
黒岩:女性を興奮させる作用がある物質ですね。
西内:はい。本著に、女性を興奮させるフェロモン「アンドロスタジエノン」の成分をつかった実験をした結果、実際に女性が興奮する物質であることが証明されたと書かれていましたが、この物質を効果的に使って男性がモテるようになることは可能なのでしょうか。