3000万円以上を投じ、
自分のカラダで大実験!
ビジネス本のヒットチャートに食い込んでいる「シリコンバレー式 自分を変える最強の食事」(デイヴ・アスプリー/栗原百代(訳)ダイヤモンド社刊)
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○○を食べるだけとか、朝食を置き換えるだけとか、一日一食とか、スムージーとか、ふくらはぎを揉むとか、そんなダイエット本と一線を画しているのは、著者デイヴ・アスプリーの経歴と、自分の体を実験台にした壮大なプロジェクトがあまりに衝撃的だからである。
IQが20ポイント上がり、50㎏もやせた!
「コーヒー豆にはカビが生えている」「フルーツは体に悪い」「炭水化物を食べるのは夜だけ」「ココナッツオイルをいれたコーヒーを飲むと、脂肪が燃えて筋肉がつく」「ナス科の食物が片頭痛を引き起こす」「炙った肉は、喫煙と同じぐらい健康に悪い」「冷めた白米を食べると腸内の善玉菌が増える」
炭水化物抜きやビーガンより、もっともっと細分化された「聞いたこともないような食事方法」を提唱する著者のデイヴ・アスプリーは、世界で初めてEC(電子商取引)を行い、巨額の富を築いたIT起業家である。長年肥満体と不定愁訴に苦しめられていた体験から、自分の体をハック(改良)するという壮大なプランを実行することに決めた。30万ドル以上!の巨額を投じた結果、IQを20ポイントもあげるかわりに、全身にこびりついていた50㎏の脂肪を、いとも簡単に脱ぎ捨てた。
デイヴはいままで信じられていたカロリー市場主義や、医学界の常識を疑い、毎食自分が食べたものを記録して、その後の血糖値や体重、精力の増減や集中力、仕事音パフォーマンス(ここが重要!)などを事細かに記録、分析したのだ。
そんな彼が下した結論の一つが、「良質な脂質は脂肪を燃やして、仕事のパフォーマンスを高める」ということだった。
クリーンな脂肪が受精能力を高め、体温を調整する
「僕は自分をすっかり不利な状況にまで追い込むため、2009年8月6日、運動をやめて、睡眠時間を5時間以下に削り、毎日完全無欠ダイエットの食事で4000~5000キロカロリーを摂取することを開始した。そして、このカロリーのほぼ7割を『完全無欠な脂肪』から摂った」
この短い抜粋からも著者の真剣さがわかっていただけるだろう。なぜ良質な脂肪が、体重を減らすのか。そのシステムはこうだ。脂肪は細胞壁の成分であり、健康な女性の体のほぼ29%、男性の15%を占める。脂肪は「満足をもたらす」クリーンなエネルギー源で、受精能力や体温調節、刺激の緩和に必要だ。ビタミンA、E、Kは脂溶性であり、脂肪がないと人体に効率的に吸収されない。ココナッツオイルや、良質なバターをふんだんにとった結果、著者の体がどうなったのかは前述のとおりだ。
いままで医学界は縦割りで、各々別売りで人体の臓器を扱ってきた。しかし、人体のはたらきはより「オーケストラ的」で、それぞれが影響を与え合っているのである。私たちは盲目的にカロリーを計算するより、自分が食べたものが自分の体にどう影響を与えるのか、その声に耳を澄ます必要がありそうだ。
それをやってくれたのがデイヴであり、だからこそこの本は売れに売れている。
彼はこうも言う。「私たちは私たちが食べたものと、私たちが食べたものが食べたものでできている」。本書には、「完全無欠ダイエット」という単語が頻繁に登場する。デイヴが胸をはって提唱するその中身は、ココナッツオイルを入れたコーヒーだったり、ステーキの料理法だったりする。ぜひ自分のライフスタイルにあった完全無欠ダイエットを取り入れてほしい。
いくつかわが身に置き換えても、うならされる発見があった。なるほど、私がストレスにさらなれながらもお腹の調子だけはよいのは、いつしか主食となっていた冷や飯のおかげだったのか。人体って、本当に奥が深いものですね。
Text:Yoshihide Kurihara
Photo:getty images