不遇の幼少期を
恨んでいる暇はない
「イーロン・マスク 未来を創る男」(講談社)
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「堀江貴文イチ推し!」と大きく書かれた帯をキッカケに偶然手にとった本著は、私たち人類へ向けた壮大なエールの書であった。
イーロン・マスクは、電子決済のPayPal社の前身であるX.com社を設立した人物であり、現在はスペースX社のCEOである。「次世代のスティーブ・ジョブズ」と言われ、今最も注目されているアメリカの起業家だ。
本著をイチ推しする堀江貴文氏とイーロン・マスクにはいくつもの共通点がある。それは、ロケット開発に精を出していることに加え、堀江氏の著書「ゼロ」でも語られている通り、親子関係に恵まれず不遇の子供時代を送ったという点だ。
...恵まれない親子関係により満たされない想いを抱えた子供には、時として普通では考えられないような能力が備わることがある。満たされない想いが原動力に変わるのだろうか、親に認められない寂しさが世の中を認めさせてやるという執念に変わるのだろうか。その想いが世の中までもを変えてしまう影響力を持つようになるのだから、何が幸せで何が不幸なのか、いわゆる「毒親」は善なのか悪なのか、考え込まずにはいられない。きっと、善悪で判断するものではないのだろうけれど。
「子供時代は幸せではなく、惨めなものだった。父親は人の人生を惨めなものにする天才だった」と語るマスク。父親の教育は一種の精神的拷問だったと言う。
私たちは生まれてくる境遇を選ぶことはできない、親を選ぶこともできない。しかし、暗い過去を自身が肯定できるようになるかどうかは今の自分次第だということを、イーロン・マスクと堀江氏は教えてくれる。自分自身が努力し、今の自分を幸せにすることができたなら、その瞬間に過去の辛い経験ですら肯定できるようになるのだ。そう、「あの辛い子供時代があったからこそ今がある」と語るマスクのように。
幼少期の不遇を恨むことなく前を向き続け、電子決済開発、ロケット開発、電気自動車開発と様々な事業を成功させ億万長者となったマスク。誰もが不可能だと言うことを圧倒的な信念と努力で次々と実現していくマスクは、本著を通して「後悔している暇はない」と語りかけてくれるようである。そんなイーロン・マスクを専門家たちはこう語る。「ゲイツとジョブズの2人を掛け合わせてバージョンアップしたのがマスクだ」と。
「イーロン・マスク 未来を創る男」
過去を悔やんでいる人、自身の境遇を恨んでいる人、すぐに環境のせいにしてしまう人、全ての人にこの本を届けたい。
過去を悔やまず不遇を恨まず生きていくためには、自身の努力によって今の自分を幸せにするしか方法はないのだ。本著は、「今の自分を幸せにさえできれば、過去を許せるようになるということ、未来を創ることができるということ、世界を変えられるということ」を私たちに教えてくれる。
生きとし生けるものへのエールである。
Text:Yuko Nishiuchi

1988年、兵庫県西宮市出身。同志社大学文学部哲学科卒。avexへの就職を期に上京し、3年半のOL経験を経てフリーライターとなる。在学時に自身のアメーバブログが大学生ランキング1位を獲得。会社員時代、dマガジン「Hot-Dog PRESS(講談社)」にて「おじさんハンター」として連載をしていた。