食品をめぐる夫の精神的なプレッシャーに加え、食事そのものを楽しむことができなくなった美晴さんは、みるみるやせ細っていったという。
「夫のいない場所でコンビニで買ったサンドイッチや菓子パンを食べても、反射的に吐きそうになって、化粧室で嘔吐くことが続きました。職場の仲間とスイーツを食べる際も、頭の片すみに夫の仏頂面が浮かぶようになったんです。
自宅の冷蔵庫にはドレッシングや麺つゆ、焼き肉のたれを置くことも禁じられました。砂糖や果糖ぶどう糖液が含まれているからです。
どうしても甘味が欲しい時は、マヌカハニーならOKとのことで、高級ですが購入しました。マヨネーズも禁じられたので、豆乳とお酢、亜麻仁油、塩コショウで手作りです。
夫自身、美味しいものを食べることに執着がなく、純粋に『食事はあくまで健康の為の栄養摂取』という考えの持ち主だと分かったのは結婚後です。
もっと早い段階で彼の食に対する価値観を知っていたら、結婚はしなかったのに……」
美晴さんは悔いるように唇を噛んだ。
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