輸入車の販売に、異変が起きている。JAIA 日本自動車輸入組合が集計している新車登録台数のトップ3から、2021年は、VWゴルフが陥落したのだ。これは、JAIAが情報公開を開始した2005年以降、初めての出来事。2021年の上半期で見ると、トップ10にも入ることができなかった。日本における輸入車の王者、ゴルフに何が起こっているのだろうか。
■新型の日本導入が遅れた以外にも理由がある
ゴルフ失速の理由として考えられるのは、ひとつは日本への新型モデルの導入の遅れだ。日本で8代目となるゴルフが登場したのは、2021年6月。しかし欧州ではすでに、2019年10月に登場している。もちろん前型であるゴルフ7もいいクルマには違いないが、新型の存在を知ってしまえば「発売されるまで待とう」となる。
もうひとつは、日本におけるCセグハッチバックの人気低迷だ。クルマに利便性が求められる日本では、ミニバンやSUVといった、ユーティリティに優れたクルマが好まれる。また最近は、ダウンサイジングの傾向もあり、Cセグオーナーが、コンパクトなBセグメントへと乗り換える流れも見られる。こうしたカテゴリーやセグメントチェンジも、売れ行きが落ちた一因ではないだろうか。
また、VWが現在売り出し中の「T-Cross」「T-Roc」の市場投入も影響しているはずだ。この2台は登場以来、2年連続(2020、2021年)年間登録台数で、輸入車SUVカテゴリーでワンツーフィニッシュを飾っている。T-Cross、T-Rocの登場以来、新型ゴルフの登場まで、明らかにゴルフの数が減少しており、ゴルフのモデルチェンジが遅れる間に、ゴルフユーザーが乗り換えたケースもあると思われる。
■モデルチェンジ後は、半導体不足の影響で販売不振に
そしてもちろん、コロナ禍の影響も、ゴルフを直撃した。ゴルフ8が登場した2021年6月以降、ゴルフの販売は徐々に上向き、第3四半期は、上半期(2885台)を超える3081台まで数字を回復させたが、コロナ禍による半導体供給不足の影響を受け、第4四半期には、またも落ち込んでしまっている。
ゴルフ8は、サイズこそ、4295×1790×1470(全長×全幅×全高 〔mm〕)と、ゴルフ7から変化は少ないものの、インテリアとパワートレインのアップデートで、新しい時代のクルマに生まれ変わっている。特に、コックピット周りは、シフトレバーが小さくなり、室内のライトやエアコン、ラジオなどの操作スイッチも、タッチスライダーやタッチスクリーンとなったことですっきりとした。また、パワートレインも、48Vのマイルドハイブリッドシステムの装着で、発進・加速時、電気の力を使って、スムーズな動きを実現する。
これら最新のインフォティメントを装備したことや、パワートレインの電動化を進めたことで、多くの半導体を必要とし、それがゴルフの販売を苦しめる結果となってしまったのだ。
■コスパ最強TDIの投入で、完全復活なるか!?
そんなゴルフだが、2022年1月7日には、ディーゼルモデルのTDIとスポーツモデルのGTIが相次いで追加された。売れ筋となるTDIの価格は約344万円~と、ライバルとなるディーゼルモデルのミニ クーパーD(356万円~)や、BMW 180d (436万円~)に比べ、圧倒的な価格競争力を備える。
ゴルフ8のフロントフェイスを光で彩るテクノロジーパッケージ(16.5万円)が、高額なDiscover Proパッケージ(約21万円)とセットでなければ選択できないのは残念だが、ゴルフはどのクルマも売れる要素を持っている。
ラインナップが出揃ったこれからが、ゴルフ8の本当の勝負。名門の逆襲なるか、ゴルフの動向はこれからが大注目なのだ。
Text:Kenichi Yoshikawa
photo:VolksWagen Japan
Edit:Takashi Ogiyama