その昔は、100万円を切る値段で買えた軽乗用車ですが、近年の軽乗用車は、ナビなどをひと通り揃えてしまうと、200万円を超えてしまいます。車両本体価格でいえば、ホンダ・フィットやトヨタ・やリスなどのコンパクトカーと変わらないどころか、ものによっては軽乗用車のほうが高いものもあるくらいです。
そもそも軽乗用車は、車両価格も税金も安い、というのがメリットであったはずですが、その税金も、2016年から増税され、それでもコンパクトカーより安いものの、軽乗用車であることのメリットは、小さくなっているように思えます。はたして、軽乗用車とコンパクトカーの年間維持費には、どれくらい違いがあるのでしょうか。
■外観は似てるが中身は大きく違う
今回は、2018年7月に登場した、スズキの本格オフロード4WD「ジムニー」と、「ジムニーシエラ」にて維持費の比較を行ってみます。この2台は、昨今のアウトドアブームや、コロナ禍による交通機関を避ける動きも重なり、登場から2年経った今でも大人気のモデルです。
外観が非常によく似ている2台ですが、それもそのはず、外観上の違いは、バンパーデザインと、オーバーフェンダー装着の有無程度です。
しかし、ジムニーはエンジン排気量660ccの3気筒ターボエンジンの軽乗用車、ジムニーシエラは排気量1500ccの直4 NAエンジンの普通乗用車と、その中身は大きく違います。高速道路や郊外の道など、長距離を走行することが多いならば、やはり、エンジンに余裕のあるシエラの方がいい、といえるでしょう。
■車両価格はやはり大きく違う
軽のジムニーは税込148万5000円(XG 5MT)~、ジムニーシエラは179万3000円(JL 5MT)。最上級グレードで比較すると、ジムニーXCで187万5500円(4AT)、シエラJCの場合は205万7000円(4AT)。
2台の車両価格の差は、18万1500円~30万8000円。「軽乗用車の方が経済的」と一般的に言われているのは、この車両価格の差からくるイメージでしょう。
また新車で購入する場合、ジムニーだと、車両本体代のほかに環境取得税1万5300円(オプションの付加により変動)、自動車重量税9900円、自賠責保険料2万9550円、リサイクル料金8650円、その他に登録諸費用が5万円程度かかり、合計で11万3600円程度の諸費用・税金がかかります。
一方、ジムニーシエラだと、環境性能税3万3600円、自動車重量税3万6900円、自賠責保険料3万6900円、リサイクル料金8940円、その他に登録諸費用5万円程度、合計で16万6340円の諸費用・税金がかかります。
よって購入時の諸費用は5万円ほど、ジムニーシエラの方が余計にかかります。さらに、どちらも毎年払う自動車税が別途かかります。
■維持にかかる税金等は、それほど違いがない
自動車税は、毎年4月1日時点での車検証上の所有者に対してかかる税金です。ジムニーは年間1万800円、シエラは1〜1.5ℓの区分ですので年間3万4500円です。また、新車購入時と車検取得時に、車検有効期間分を支払う自動車重量税は、ジムニー年額3300円、シエラ1万2300円。自賠責保険も支払いますが、軽乗用車と乗用車ではほぼ差はなく、ジムニー2万5070円(24ヶ月)、シエラ2万5830円です。
よって、毎年かかる税金は、3万3460円、ジムニーシエラの方が余計にかかることになります。ただしこれには、ジムニーシエラがエコカー減税非対象ということが影響しています。エコカー減税を受けられるクルマであるならば、半額程度に差が縮小する可能性もあります。
また車検時にかかる費用は、ディーラーや整備工場、ガソリンスタンド並列店舗によって、整備料や手数料が異なりますが、車検取得費用などを含めた価格相場は、ジムニーが6万円程度、ジムニーシエラが8万円程度。車検毎の費用は、2万円程度、ジムニーシエラの方が高いようです。
■燃料代の差はごくわずか
ジムニーのカタログ燃費は13.2km/ℓ(AT、WLTCモード燃費)、年間走行距離を1万kmとすれば、ガソリン代は年間9万4697円です(ガソリン1ℓ単価125円で算出)。対するジムニーシエラの燃費は13.6km/ℓ(AT)、同条件で計算すると年間9万1912円、ジムニーシエラの方が、2700円程度、安いです。
ジムニーは、砂地や岩山といったオフロード走行を楽しむ方から、日常の足としてロングドライブにも使う、といった方まで、ファン層の広いクルマですから、使い方次第では燃費が大きく変わります。ですが、燃費に関しては、ジムニーとジムニーシエラではそれほど差がない、というのが実情です。
■まとめ
両車の維持費を比較すると、購入時にかかる車両価格の差が最も大きく、年間にかかる自動車税や自動車重量税、燃料代などは、それほど大きな差はありません。エコカー減税が適用できるコンパクトカーならば、軽乗用車との差は、さらに少なくなります。
「軽乗用車の方が経済的」とはいえますが、限られたボディサイズかつ660ccといった小排気量にて作られる軽乗用車よりも、乗用車の方が、広さや快適性、デザイン、車重に見合ったエンジン、安全性など、できることが多いのは事実。
どちらが適しているかは、それぞれのライフスタイルやクルマの使い方によって違ってきます。それらを踏まえて、クルマ選びができると、あなたにとってより「コスパのいいクルマ」が選べるでしょう。
Text:Kenichi Yoshikawa
Edit:Takashi Ogiyama
Photo:SUZUKI,AC