フレンチトラッドというジャンルで捨てられなかったアイテム!
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。成毛賢次さんに続いて登場するのは、ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さん。
中村さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画の第2回目は「サニーサイド(SUNNY SIDE)」のチェックパンツです。
僕がビームスに入社した80年代の中頃って、アルマーニみたいなファッションが流行っていた時代で、ビームスでもイタリアの服を販売していたんですが、一方でフレンチアイビーという流れもありました。
僕が大学生くらいの頃に『ポパイ』が初めて"フレンチアイビー"という特集を組み、それでビームスでもバイイングに取り組んでいたんですが、僕にとって"フランス人のアイビー"というのがとにかく鮮烈だったんです。フランス人のアイビースタイルっていうスタイルを初めて目にして、衝撃を受けました。
ビームスでもオールドイングランドのブレザーや、フランスのトラディショナルなブランドを買い付けていたんですが、そのひとつがサニーサイド。このブランドはパリのブランドなんですが、アメリカントラディショナルなアイテムを自分たちなりの解釈でデザインしているのが特徴でした。例えばブルックスブラザーズが、パーツごとに色が異なるクレイジーストライプのシャツを作っていたんですが、あれを模倣したアイテムを作っていたり。
パンツだけでなくジャケットやシャツなどトータルで展開していたんですが、その中で夏場にフレンチラコステを着て、こういうマドラスチェックのパンツを穿いて、レザーのデッキシューズを履く、パリのトラッドみたいなスタイルが自分の中でカッコ良かったんですね。
ツーインプリーツというディテールで、シルエットは少し太いんですけど、このマドラスやタータンチェックなんかをよく穿いていたんです。やっぱりフレンチラコステが定番だったんで、それに合わせるパンツが欠かせなかったんですね。
ビームスに入社して いくつもフレンチトラッドのブランドを買ってきた中で、サニーサイドのマドラスチェックのパンツというのが、とくに強烈に思い出に残っています。
ピカデリーっていうブランドのコロニアルという名のツーインプリーツのチノパンだとか、オールドイングランドのチノパンとか、ジャンブルジョワとか、挙げるとキリがないくらい とにかくいろいろ買っては手放してきたんですが、フレンチトラッドというカテゴリーに属すアイテムとしてフレンチラコステとサニーサイドだけはずっと捨てずに残っていますね。
コレももう絶対に穿かないんですが、捨てることなく取っておくと思います。
Photo:Naoto Otsubo
Edit:Ryutaro Yanaka
ビームスクリエイティブディレクター
大学在学中よりBEAMSでアルバイトをし、卒業後ショップ勤務、店長、バイヤーを経て現在はクリエイティブディレクターとしてドレス部門を統括。メンズのドレスクロージングに関するセレクトや論理的な解説が持ち味で、媒体での連載や自身のブログ”ELEMENTS of STYLE”は絶大な人気を博している。