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FASHION 僕が捨てなかった服

スタイリスト小沢 宏 第1回 「エルメス」のカシミアニット

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人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。

ブランドの矜持と品質の良さを体感するメイド イン スコットランド

人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ってることにします。トップバッターのファッションエディター山田恒太郎氏に続き、今回からは10回にわたり、スタイリストの小沢 宏氏が膨大な数の所有してきた服の中でも捨てられなかった服をご紹介していきます。

今回紹介するのは、「エルメス」のカシミアニットです。これはパリのフォーブル・サントノーレのエルメスでセールにて購入したものです。自分で買ったのか、奥さんが買ってくれたのか、もう忘れてしまったのですが、おそらく2000年より少し前の事だったと思います。つまり20世紀に買ったものなんです。

一見シンプルなタートルネックのニットですが、最近のニットと比べて身幅が広い割に裾はかなり太めのリブでしっかり絞られている。また、袖幅も異様に太いという特徴のあるシルエットで、正直、ダサイな~と思って袖を通さない時期もありました。

普通なら"今っぽくないデザイン"という理由であまり着ることがなくなりそうですが、「今っぽくない」からあえて着るという天邪鬼的な選択をしたくなり、ここ最近、再び週1のヘビーローテーションで着ています。また、時代を超越した良いものだからこそ、今シーズンも着ているのだと思います。

メイド イン スコットランドのタグが付いていて、よく見ると、あれ、これ見たことあるな、というスコットランドの名門ニットブランド(おそらくバランタイン)と同じものとなっていて、こういうところも服好きの男性にとって心くすぐる要素。

カシミアって毛玉になりやすい、と思っている方も多いんですが、エルメスの昔のものはまったく違います。これはしっかりした質感で毛玉になりにくい。柔らかくふんわり甘く編み上げたカシミアニットとは異なり、細い上質な糸を強撚で編み上げているんですね。しかもしっかり編まれているから洗っても縮まないんです。そして上質なカシミアなので首がチクチクしなくて心地良い。

実はあまりにも着すぎて何度か穴が開いたりしているのですが、それも繕って着ています。そして1日着ると首が緩くなるんだけれど、1週間くらい置いておくと自力で元に戻っているんです。復元力が高いのも魅力です。

ワードローブの中で、ニットというアイテムは結果的にベーシックなものが残っている気がします。他のブランドもののニットも長く残っているものがありますが、このメイド イン スコットランドの品質はまったく違う。このしっかり感といったら別格です。

僕はベーシックなものとトレンドのミックススタイルが多くて、これ一枚でも着ますが、スーツのインナーにコーディネートしたりして着ています。インナーとして着るのにちょうどいいシンプルさと上質さを兼ね備えているんです。

僕が服を買うときは、純粋にファッションとして楽しむために買います。これを着て、人からどう見られたい、とかモテたいというのは順位として低いんです。仕事柄もありますが、割と洋服に関して手離れがいいんです。でも長く着る意味のあるものが結果的に残っている。「捨てなかった服」には、思い出として残しておく、というものはあまりなく、また単純にベーシックだから残っている、という訳でもないんです。モノとして優れているもの、もう作られないものが残っていっているんですね。

そんな僕なりの視点で「捨てなかった服」やひとクセあるアイテムを、これからの連載でご紹介していきたいと思います。

Photo:Riki kashiwabara
Text:Yoshie Hayashima
Edit:Ryutaro yanaka

小沢 宏
スタイリスト、デザイナー。1964年、長野県生まれ。大学在学中に雑誌『POPEYE』のスタイリストアシスタントとしてキャリアをスタート。『POPEYE』を始め『BRUTUS』『Huge』『Uomo』『Men’s Ex』など様々なジャンルのエディトリアル スタリングを手掛ける。またデザイナーやプロデューサーとして数々の企業やコラボブランド、自身のブランド「オザワヒロシ エディストリアル」を手掛ける。



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