最上質だけど、お洒落着というより運動着感覚で、1〜2回しか袖を通さず…
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。スタイリストの小沢 宏氏に続いて登場するのは、数多くのイタリア ブランドを日本に紹介した成毛賢次さん。成毛さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画、第10回は、モンクレールのダウン「カラコルム」です。
コレも全然着ていない(笑)モンクレーのダウン「カラコルム」です。イタリアのブランドも、よくサンプリングしていたのを覚えています。
僕らの2、3歳上の世代って、当時フランスからいろいろなモノを持ってきていたんです。マルセル・ラサンスなんかのセンスに傾倒していたんですが、僕らはフランスよりイタリアのコクのある味付けが好きだなぁと思っていました。パリは洗練されすぎている気がしたんです。
ゴハンでも、フランスはどんな素材も料理と味付けで美味しい食べ物へと変化させますが、イタリアって素材の鮮度が命! フレッシュなまま、素材の良さを楽しむ。和食に通ずる部分があるとも思っています。
これも茄子紺っぽいカラーリングなんですが、これ見るとフランス人の色の感覚ってのは素晴らしいなとは思いますね。当時イタリアにはピュミーノ(piumino)って、チープな感じのダウンしかなかったんですね。
ここまでホワイトグースがたっぷり入って、フランス規格協会(AFNOR)から最高品質のダウンである「4 Flcorons(キャトル・フロコン)」という認定も受けていたから、もうコレだろって!
ダウンたっぷり入っているのに小さく畳めたし、1月にフィレンツェ行く際は寒いから重宝しました。そこまで寒さを感じないときはTシャツ1枚に羽織っただけで十分暖かかったんです。
ただ、僕にとってはお洒落着というよりは運動着で1〜2回フィレンツェで着たっきり。今は娘が朝の犬の散歩時に「超温かい」と
Photo:Riki Kashiwabara
Edit:Ryutaro Yanaka