カッティングも良く、着込むほどにフィット感も良くなる初期ファビオ・ボレリが手がけたシャツ
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。スタイリストの小沢 宏氏に続いて登場するのは、数多くのイタリアブランドを日本に紹介した成毛賢次さん。成毛さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画、第4回は「リベラーノ&リベラーノ×ルイジ ボレッリ」のシャツです。
第1回で紹介した、リベラーノで初めてジャケットを作ったときに一緒に作って貰ったのが、このシャツです。
リベラーノさんはシャツを作らなかったから、ルイジ ボレッリで作って貰ったんですが、この頃のボレリってハンドで、とにかく素晴らしく、まさに天下一品でしたね。
現当主のファビオ・ボレリは、キートンで小僧みたいに働いてた頃に作っていたシャツが絶品だったのも覚えています。
カッティングも良いし、ハンドでの袖付けも抜群。水に通して着込んでいくと、フィット感もどんどん良くなる。あと、スーツ着たとき襟周りにシワも寄らなくて、浮くこともないんです。
この斜めに付けられたドゥエボットーニも好きで、リベラーノさんを真似て上だけで留めるんですが、そうすると襟の上部はキッチリと締まるんだけど、下だけ空くからネクタイを締めて首を上下に動かした際も苦しくなく、楽に着られるんです。
とても良いシャツだったから、当時日本に持ってきて、BEAMSのバイヤーだった松山くんに紹介したら、南雲くんたちも気に入ってくれて、「悪魔のささやきみたいだけど、展開してみましょうか」って仰ってくださり、バイイングして頂いたんです。結果シーズンで2,000着くらい売れたんですかね。
ちなみに、襟や袖なんかは、着込んで擦り切れた感じに見せたくて、自分で加工しちゃったんです。90年代当時イタリアはすごく景気が良かったんですが、そこで真新しい服を着るよりはちょっと着込んだ服を着ている方がスノッブに見えたんですね。それを巧く実践していたのがジャンニ・アリエリさん。彼がシャツをそんな風に着てる姿がカッコ良くて、真似し始めたんですね。
このシャツを作った後、ファビオはリベラーノさんと喧嘩しちゃったから、このネームのシャツが作られることはもう2度とないんでしょうけど…。
Photo:Riki kashiwabara
Edit:Ryutaro yanaka