英国・フォックス ブラザーズからの来客を迎えて
つばきはじめてひらく 山茶始開 初候(11月7日~11月11日)
ちはじめてこおる 地始凍 次候(11月12日~11月16日)
きんせんかさく 金盞香 末候(11月17日~11月21日)
11月の中旬を過ぎると、街はXmasに湧き華やかになる時。カレンダー好きの私にとって、昔から自分がデザインした「服カレンダー」を作ってみたいという思いがますます強くなります。旧暦カレンダーや日めくりカレンダーなどを見ては、2018年はどんな年になるのかを想像するのが楽しい。
天気予報などで「立冬(りっとう)」を知ると、日本人にとっては「けじめ」を大晦日に合わせてあれこれ頭を巡らせ、目先の雑務と時間がない焦りとのギャップをどう埋めるかを考え始める頃ではないでしょうか。
「山茶花の散るにまかせて独り住む」
私ごとで恐縮ですが、母が他界して二十三年。当時、香典返しに母が詠んだこの詩(うた)を裏に記したお盆を用意したことを、この季節になると思い出します。
地場産業である「織物を極めたい」と一念発起
11月の連載2回は、ウィンストン・チャーチル卿やハリウッドの代表的なメンズスタイルのアイコンであるケーリー・グラントが愛したフランネルを生み出したフォックス ブラザーズ(FOX BROTHERS)のテキスタイルデザイナー、ローズマリー・ブーン(ROSEMARIE BOON)さんとの対談をお送りします。
フォックス ブラザーズは、1772年にイングランド南西部・サマセットでトーマス・フォックスが創業した世界有数のファブリックミル(機屋)で、フランネル・フィニッシュ(縮絨と毛羽立ち加工)を施した生地は、私も格別な思いがあります。
フォックス ブラザーズのこれまでのタグのアーカイブ。下で紹介する赤峰さんのスーツのタグも中央に。
赤峰 ローズマリーさんとは旧知の中ですが、改めてプロフィールを教えてください。
ローズマリー 私はフォックス ブラザーズに1993年に入社しました。出身はオランダです。英語の勉強のために18歳のときにイギリスでホームステイをしたのですが、その家の息子と結婚しました。
赤峰 そこからどうしてフォックス ブラザーズのデザイナーになったのですか。
ローズマリー 彼の家がイギリスの南部にあって、地場産業である「織物を極めたい」と思い、ベルギーに近いフランス北部でテキスタイルの勉強をして、フォックス ブラザーズに入りました。
赤峰 ローズマリーさんが従業員の中で一番古株ですか。
ローズマリー 私よりキャリアが長い人では、経(たて)糸成型をしている職人がいます。その人は親子3代がフォックス ブラザーズで働いていて、技術的な部分をずっと支えています。
43年前の赤峰さんのスーツが登場!
赤峰 ローズマリーさんが私の『めだか荘』に来てくれるという貴重な機会なので、ブランド「WAY-OUT」が2年目だった1974年にフォックス ブラザーズの生地を使って作ったスーツを出しておきました。ドライタッチの生地で、仕立ては日本です。
ローズマリー 赤峰さんは当時どうやってフォックス ブラザーズを知ったのですか。
赤峰 当時の英国大使館の商務官に英国生地の良さや特徴を教えてもらいました。フォックス ブラザーズは「チャーチル首相やフレッド・アステアがよく着ていたフランネル」だと教えてもらって、横浜にある信濃屋というメンズストアでスーツを売りました。
ローズマリー 43年前の生地とは思えないほどとてもいい状態ですね。日本でこういうスーツと出会えるとは思っていなかったので感激です。
産業革命によって世界をマーケットにしたGREAT BRITAIN
赤峰 ところで、フォックス ブラザーズがあるイングランド南西部は、今ではミルは少ないそうですね。
ローズマリー そうですね。小さなミルが9つほど残っていますが、フォックス ブラザーズが一番規模が大きいです。
赤峰 フォックス ブラザーズが創業した18世紀後半は産業革命直後で、英国は“GREAT BRITAIN”として世界を席巻していきました。
ローズマリー 最盛期のフォックス ブラザーズには従業員が4000名以上いたそうです。
赤峰 現在は確か25名ほどですよね。
ローズマリー はい、そうです。でも最近も織機を2台増設するなど、膨大なアーカイブを守りながら徐々に生産量を増やしています。
次回「小雪」に続く
イベント第2回開催決定! ぜひご参加ください!
東京・広尾のイタリアンレストラン『ラ・ビスボッチャ』を舞台に開催するイベントの第2回発信が決定。開催日は12月3日(日)を予定しています。詳細は近日アップの予定です。今回は本場のクリスマスを味わっていただくイベントを企画中!
次回、連載21回目は、11月22日頃の“小雪(しょうせつ)”。次回もフォックス ブラザーズのローズマリー・ブーンさんとの対談をお楽しみください。
Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii