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FASHION 赤峰幸生の服飾歳時記

ドクトル赤峰のヰタ・セクスアリスとディオール展について

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Dr.赤峰が初公開! レディースのデザイン画!

しもはじめてふる  霜始降 初候(10月23日~27日)
こさめときどきふる 霎時施 次候(10月28日~11月1日)
もみじつたきばむ  楓蔦黄 末候(11月2日~11月6日)

「霜降(そうこう)」という名の通り、霜が降るこの時期、冬の足音が一歩一歩近づいてきます。この頃の旬といえば、なんといっても柿。子どもの頃、裏庭の2本の柿の木に柿がたわわに実り、二股の長い棒で枝を挟んでボキボキ折っては、ざる一杯取った思い出があります。干支が申年なので、猿かに合戦の猿のように「柿好き」と勝手に思い込んでいたようです。

それから数十年の時が経って、新たに出会った柿はイタリアでした。食後のデザートメニューに「KACO」と書かれたのが、なんと「KAKI」だと教わり、食べてみると真っ赤に熟した大きな柿。ナイフで中央部分を水平にカットして、スプーンですくって食べた美味しさは、いまだに鮮明に覚えています。

日本から渡った柿(KAKI)は、英語では「KAKI」ですが、イタリア語で柿ひとつは「KACO」となり、複数になると「KACHI」になって、なんとも不思議です。

食にまつわる話をもうひとつ

これは完全に失敗談ですが、幼い頃、母の作る茶碗蒸しが大好物だった私は、中でも銀杏が好きでした。今ぐらいの季節になると、公園の木や街路樹から落ちてくる銀杏の実を半ズボンの両方のポケット一杯に詰め込んで、美味しい茶碗蒸しを楽しみに家路を急いだものです。

家に着くと、母が喜ぶより先に、「臭いわよ! 庭に埋めてきなさい!」の一言。穴を掘ってポケットの中の実をすべて埋めて、風呂場でズボンとパンツを脱ぐとなんと! 大切なあの袋が真っ赤に脹れ上がって、熱いやらなんやら……。その後、母に怒られたのは言うまでもありません(笑)。

 

クリスチャン・ディオールの「ニュールック」が素晴らしい

パリで行われた国際生地見本市「Premiere Vision(プルミエール・ヴィジョン)」のついでに、ルーブル美術館に隣接するパリ芸術装飾美術館で開かれている「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ(Christian Dior, Couturier du Reve)」展を見てきました。

来年の1月7日まで開催されているこの展覧会は、ディオール創業70周年を記念したもので、年代順・テーマごとに展示され、300点以上のオートクチュールドレスはまさに圧巻でした。

創業者のディオールから、イヴ・サンローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、マリア・グラツィア・キウリの初のクチュールコレクションまですべてが見られて、特に白のコレクションはショックでした。

展覧会の会場の正面には、1947年春夏コレクションでクリスチャン・ディオールが独立後初のコレクションとして発表した新しいシルエット「ニュールック」が象徴的に飾られていて、クチュール(特注の仕立て服)の素晴らしさに改めて気づかされます。

 

「メンズの赤峰」ですが、今でも手は覚えています

クチュールは、メンズでいえばサルトリアですが、ディオール展を見て、自分の18、19歳の頃を思い出しました。

当時、実は目指していたのは婦人服で、長沢節さんが主宰していた美術学校セツモードセミナーに通ってレディースの絵型をしょっちゅう描いていました。あるとき、ピエール・カルダンの知り合いの方が、自分の絵型をパリに持っていってくれて、そうしたらカルダンから「パリのアトリエで修行していい」と手紙が来ました。でも、ちょうどその年にオヤジが亡くなって断念したのです。

それで、日本の戦後のオートクチュール界を牽引していたジョージ・岡さんのアトリエで、ぞうきん掛けから修行を始めたのですが、古株の女性たちからいじめにあって、婦人服が嫌いになりました。それで「メンズをやるぞ!」と一念発起したわけです。あのときパリに行っていたら全然違っていた人生だったでしょう。

今でこそ「メンズの赤峰」ですが、今でも手はデザイン画を覚えていますよ。手は忘れない。想像するものを手で形にしていくのは素晴らしいことです。

 

スエードブルゾンの名前は「TATI(タチ)」

「霜降(そうこう)」の末候の「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」、この時期は、私が最も得意とするミレーの絵のごとく、落ち穂拾いスタイル。茶系色のさまざまな色目を楽しめる最高の季節なのです。コーディネートは、「アスペジ」のナイロントレンチに、「Y.Akamine」オリジナルのスエードブルゾン、白のタートルニットにストール。

ブルゾンは「Akamine Leather Collection」の2005年秋冬のもので、映画『ぼくの伯父さん』シリーズで一世を風靡した、フランスを代表する映画監督であり喜劇 役者のジャック・タチ(Jacques Tati)から命名。当時よく売れたアイテムです。

アメリカ的な合わせなら、ボトムスをより濃くするのですが、自分は微妙な濃淡のトーンオントーンが好み。茶系のワントーンは大好物です。

次回、連載20回目は、11月7日頃の“立冬(りっとう)”。11月の連載2回は、私が一番好きなファブリックメーカー「FOX BROTHERS」のキーマンとの対談をご紹介します。

Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii


ジャパン・ジェントルマンズ・ラウンジ
 



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