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「ポリアモリー」に今気になること、ぜんぶきいてみた 【苦悩の半生、複数人との交際、セックス、そして愛】

2017.7.28
2017.7.28

浮気や不倫とは違う!2人のパートナーを愛するきのコさんに聞く、「複数愛」

複数のパートナーを同時に愛する『ポリアモリー』。前回、そのポリアモリーを研究する「ポリアモリー 複数の愛を生きる」の著者、深海菊絵さんにインタビューをさせていただき、大きな反響がありました。

「ポリアモリー 複数の愛を生きる」著者、深海菊絵さん

「ポリアモリー」...それって実は私たちにとって、「他人事ではない」のです。なぜなら大半の人が、ポリアモリーについて知れば知るほど「あれ、私・僕もポリアモリーかも?」と、自分がこれまで「一人のパートナーしか愛してこなかったこと」に疑問を抱き始めるからです。だって、人って皆それぞれに魅力的じゃないですか。考えてみれば、一人に絞るだなんておかしい気が...しなくもない。いや、でも、やっぱり一人しか愛せないような気も...しなくもない。

つかみどころのない、複数愛・ポリアモリー

そんな掴みどころのない「ポリアモリー」について、もっと知りたい! そんな想いから、今回は「ポリアモリー」である、きのコさん(32歳)にお話をお伺いしました。

西内悠子(以下、西内):きのコさん、本日はよろしくお願いいたします。今一番気になるワードが「ポリアモリー」と言っても過言ではないほど、ポリアモリーについて興味があります。本日はお会いできて光栄です。

きのコさん(以下、きのコ):こちらこそ、よろしくお願いします。

西内:さっそくですが、なぜきのコさんは「ポリアモリー」なんですか?

なぜ「ポリアモリー」になったのか

きのコ:私の場合は生まれつきのものだと思います。小さい頃から、「好きな人が一人しかいない」という時期がほとんどなかったんですよね。今思い出すと、物心ついたころから、複数の人を愛する性質を持っていたんだなと思います。

西内:そうなんですね。小さい頃って、クラスメイトと「好きな人って誰?」という話になったりすると思うのですが、その時に「周囲との違い」「違和感」はなかったんですか?

「私は変だ」と悩んだ青春時代

きのコ:すごくありました。小学生の頃は「なぜ皆、好きな人のことを言う時に、一人の名前しか言わないんだろう?」と不思議に思っていましたね。ただ、その時はそんなに深く考えていなくて。でも、いよいよ「恋愛」をする思春期になった頃に、「私は人とは違う性質を持っているんだ」「複数の人を愛することは、特殊なことなんだ」「もしかしたら私は変なのかもしれない」と悩むようになったんです。

ポリアモリーの半数はバイセクシュアル

西内:そうなんですね。ちなみに、「ポリアモリーに目覚め、バイセクシュアルになる人が多く、ポリアモリーの50%はバイセクシュアルである」というお話を聞いたのですが、きのコさんの恋愛対象は、男性ですか? 女性ですか?

きのコさんの恋愛対象の性別は?

きのコ:男性も、女性も、そうでない方も、恋愛対象です。

西内:そうでない方、と言いますと?

きのコ:いわゆる「トランスジェンダー」や「Xジェンダー」などの方のことですね。なので、愛の対象に性別のこだわりはあまりないんです。

西内:ちなみに、ご自身がポリアモリーであることを悩んだ時期があったと仰っていましたが、いつまで悩まれていたんですか?

自分を「精神病」だと思っていた

きのコ:4年前の28歳まではすごく悩んでいて、「もう死ぬしかない」と思うほどに精神的に追い詰められていました。「私は精神病なのではないか」「複数の人を愛してしまうことを人に知られたら、頭がおかしいと思われるのではないか」「同性にも恋愛感情を持ってしまうことは恥ずかしいことなのではないか」と、ずっと思い悩み、隠してきたんです。

西内:そうだったんですね。でも、なぜそんなきのコさんが、ご自身の「複数の人を愛する性質」を認め、人にも隠さず言えるようになったのでしょうか?

10年間隠し続けた「複数愛・ポリアモリー」

きのコ:18歳でポリアモリーの自認をもってから、ずっとポリアモリーである自分を「隠そう」「治そう」としてきたんです。でも、10年経って28歳になっても、「複数の人を愛してしまう自分」を変えられなかった。それで、もう自分はこの性質と向き合っていくしかないという諦めと同時に覚悟が決まり、ポリアモリーであるということを開示して生きていこうと思えるようになったんです。「ここまでやって変えられなかったんだから」と、踏ん切りがついたというか。そして、自分自身を肯定してあげなければ、死ぬ以外に選択肢がないとも思ってしまうほど追い詰められていたので...。そこから自己肯定できるようになったんですよね。

西内:28歳までは、ずっとご自身を否定されて生きてこられ、すごく辛い想いをされたんですね。

自己否定の10年間

きのコ:そうですね。10年間、ポリアモリーとしての自分を否定していました。なので、今はそんな自分をやっと肯定して生きていけるようになり、本当に良かったです。

西内:そんなきのコさんが「ポリアモリー」という言葉・概念とは、どうやって出会ったのでしょう?

きのコ:学生時代ですね。Wikipediaで「ポリアモリー」という言葉を見つけました。私はポリアモリーという言葉に当てはまるのかもしれないと思ったのはその時ですね。

ポリアモリーの定義とは?

西内:ところで「ポリアモリー」の定義についてお伺いしたいのですが。ポリアモリーって、いくら調べても、なんだか曖昧な概念な気がしていて、腑に落ちないんですよね。

複数愛は、相手の「合意」が重要

きのコ:そうですね。ポリアモリーの私自身も、常に「ポリアモリー」についての考え方は変化しているので、腑に落ちないのも無理はないと思います。今のところの私の考えでは、「ポリアモリーとは、複数の人を好きになる性質を持っており、その性質をライフスタイルに落とし込んでいる人。またはそのライフスタイルのこと」であると考えています。

西内:「ライフスタイルに落とし込む」と言いますと?

きのコ:ただ複数のパートナーがいるだけでは、辞書的な定義における「ポリアモリー」ではないんですよね。ポリアモリーには、その関係性をパートナーに理解してもらい、合意を得られていることも必要なので。その「合意」というのが非常に重要なんです。

西内:では、「合意」は得ていないけど、複数の人を愛している人は、ポリアモリーではないということですか?

「ポリアモリー」と、「ポリアモラスな性質」

きのコ:そうですね。ライフスタイルに落とし込んでいないという点で「ポリアモリー」の定義から外れるので、そのような人のことは、「ポリアモラスな性質を持っている」と表現したりします。

複数の恋人がいるだけでは、ポリアモリーであるとは言えない

西内:そうなんですね。では、やはり「妻や夫を傷つけてばかりの浮気者」や、「妻の暗黙の了解を得て浮気しまくって妻を我慢させている浮気者」は、ポリアモラスな性質を持っていたとしても、ポリアモリーとはいえないということなんですね。

きのコ:その通りです。

西内:では、きのコさんは「ポリアモラスな性質を持っている」だけではなく、それをライフスタイルに落とし込み、パートナーの合意を得られている「ポリアモリー」という認識で間違いないですか?

きのコ:はい。

西内:実際、どのようなライフスタイルなのでしょうか?

2人のパートナーの存在

きのコ:私は、同棲している彼(第一パートナー)と、もう一人別の彼(第二パートナー)がいるんですが...、第二パートナーとはつい先日お別れしてしまったんです...。

西内:きのコさん! 聞きたいことが沢山ありすぎて整理がつきません...。まず、第一第二と言っているということは、その愛情に優劣があるということですか?

第一パートナー・第二パートナー

きのコ:いえ、第一第二とは言っていますが、愛情に優劣があるわけではなく、単に先に付き合った方を第一パートナー、後に付き合った方を第二パートナーと、便宜上呼び分けているだけです。それぞれ違う人物で、それぞれ違う魅力がある素敵な方々です。

西内:ちなみに、第一パートナーと、第二パートナーは、どんな人なのでしょう?

きのコさんの2人の恋人はどんな人?

きのコ:第一パートナーは、33歳で職業はコールセンターのオペレーターです。容姿は細マッチョなアメカジ系で、パーカーがよく似合う素敵な人です。彼は恋愛対象は女性のみで、ポリアモリー歴は2年第二パートナーは、23歳で職業はSEです。容姿は細身なパンク系で、恋愛対象は女性もしくはXジェンダー、ポリアモリー歴は数ヶ月です。

西内:質問です! Xジェンダーって何ですか?

Xジェンダーとは

きのコ:出生時に割り当てられた女性・男性の性別のいずれでもないという性別の立場をとる人のことです。

西内:それってトランスジェンダーとは違うのでしょうか?

トランスジェンダーとXジェンダーの違い

きのコ:トランスジェンダーとは、“性転換手術までは行わないが、異性の社会的性的役割に収まりたい人、 また、性別に応じた社会で認識されている役割や規範に収まらない傾向を含む、あらゆる個人および行動、グループに当てられる名称”とされています。そのトランスジェンダーの中に、Xジェンダーと呼ばれる人がいるという理解です。そして、トランスジェンダーやXジェンダーを恋愛対象とする人のことを、「トラニーチェイサー」と呼んだりもします。

西内:そうなんですね。知らないことだらけです...。では、第二パートナーとの破局の原因を教えていただけますでしょうか?

第二パートナーとの破局の原因は!?

きのコ:第二パートナーにも、私以外のパートナーがいたのですが、その方が「ポリアモラスな性質」を持った人ではなく、「モノガマス(一人だけのことを愛する)な性質」を持った人で、その方の私に対する嫉妬や、彼に対する独占欲や束縛が強く、彼が私とその方の板挟みになって精神的に不安定になってしまったので、交際関係を解消せざるを得なかったんです。

西内:でも、第二パートナーがいなくなっても、第一パートナーが寂しさを癒してくれるから、「ま、いっか!」とはならないのですか?

愛する人は「替えのきかない存在」

きのコ:それは、ならないんですよね。というのも、二人とも掛け替えのない、代えのきかない人物なので...。やはり、先日の第二パートナーとの別れは「一人の掛け替えのない人が、自分の人生から遠ざかってしまった」というショックがあまりにも大きかったです...。ごめんなさい、まだつい最近の出来事なので、傷が癒えていないんです...。

西内:そうだったんですね。第二パートナーとの別れの悲しみについて、第一パートナーに話したり、相談したりはするんですか?

第二パートナーとの失恋を、第一パートナーに相談

きのコ:はい。第一パートナーに、「第二パートナーに振られてしまった...愛する人と疎遠になるのが辛くて辛くて仕方ない」と、ワンワン泣きながら話したりしました。第一パートナーはそれを「大変だったね」と慰めてくれるので、本当に感謝しています。

西内:すごい、想像を絶する人間愛と言いますか...。その第一パートナーの方は、ポリアモリー歴は2年なんですよね?

ポリアモリー歴2年の彼が開花した理由

きのコ:はい。第一パートナーは、私と出会ってから、彼もポリアモリーなライフスタイルになったんです。もともとはすごく嫉妬心が強く、「他にもパートナーをつくるなんて有り得ない」と言われていたのですが、私が「本気で皆のことを愛している」ということをしっかり説明し、それにより彼もその説明に合意してくれたんです。第一パートナーにも、私以外にも彼女がいたこともあります。

西内:彼はポリアモリーに開花されたんですね。私もなんだか開花しそうな自分が怖いです(笑)。そんな彼との心に残るエピソードはありますか?

第一パートナーとのエピソード

きのコ:同棲するまで1年間、佐賀と神奈川で遠距離恋愛だったのですが、私が他の人とデートすることに彼が嫉妬してケンカが絶えなかったんです。でも、ある日私が「アナタは私に依存してるよ」と言ったことでハッとして、「きのコさんに依存しないで、自分の時間をつくろう」と思ったらしく、趣味を増やしたりしたことで、関係が落ち着いていきました。また、彼は私以外のポリアモリーの人とSNSで交流し恋愛相談をできたことも、ポリアモリーを受け入れることに効果的だったようです。

西内:たしかに、嫉妬するタイプの人がポリアモリーに合意するには、それなりの時間がかかりますよね。では、第二パートナーとの心に残るエピソードはありますか?

第二パートナーとのエピソード

きのコ:付き合い始める時に「俺の前では俺の事だけ考えてほしい」と言われたのが印象的でしたね。彼はいわゆる「ポリアモラスだけど嫉妬心や独占欲のある人」で、私はそのような人と付き合うのは初めてで戸惑うこともすごく多かったですね。他の人たちとデートをする時に、彼に嘘をついたり隠し事をしたくはないけれど、あまり詳しく伝えると苦しめてしまうので、どの程度詳しくオープンに話すべきかが、すごく難しかったです。

西内:たしかに難しいですね...。でも、考えてみたら、世の中の大半の男(とくに金持ち)って、「俺はいっぱい愛人作るけど、奥さんや愛人が浮気してたら嫉妬するし許せない!」という気持ちを持っていると思うんです。そう思うと、世の中のほとんどの人が、「ポリアモラスだけど嫉妬心や独占欲のある人」のように思えてきました。そして私も、「ポリアモラスだけど嫉妬心や独占欲のある人」であるような気がしてきました。みんな大好きですし、嫉妬しちゃいます!! 私、ポリアモリーかも...!! でも、決してアバズレではないんですよ!

みんな大好き=アバズレではない!!

きのコ:もちろん、ポリアモラスだからアバズレだなんて思わないですよ。でも、私は自分がポリアモリーだからといって、「ポリアモラスな性質を持った浮気者」とか、世間でいう「性に旺盛な人々」や「アバズレ」を否定しようとも思わないですし、また、「一人だけを愛する、モノガマスな性質を持った人」を否定するような気持ちも一切ないんです。それぞれに性質や考え方は違って当然ですからね。

西内:そうですよね。人は人、自分は自分。いろいろな愛しかたや考え方があって当然ですよね。ちなみに、きのコさんの第一パートナーと第二パートナーは会ったことはあるんですか?

2人の恋人同士の関係性とは!?

きのコ:会ったことはありますよ。第一パートナーは第二パートナーについて「きのコさんのことをきちんと好きだということが伝わってくるから、全然心配していない」と言っていました。

西内:親心か! と言いたくなりました(笑)。

きのコ:(笑)。また、第二パートナーにとって、第一パートナーは「兄」のような存在らしいです。私と第一パートナーとは4年、第二パートナーとは数ヶ月の付き合いなのですが、この第二パートナーと付き合ってからは、第三パートナーができたことはないんです。でも、過去には第四パートナーまでいたこともあります

ポリアモリーは、ただのモテる人!?

西内:第四! すごいです。ただのモテる人な気もしてきました(笑)。ちなみに、これまでお付き合いされた人数は何人ですか?

きのコ:28歳でポリアモリーをカミングアウトしてから、付き合ったことのある人数は延べで5名ほどですね。

西内:それにしても、きのコさんは、なぜポリアモラスな性質を隠さずに相手に開示し、ポリアモリーを実践するという選択肢をとったんですか? なんか、相手に説明して合意してもらうのって大変そうですし、面倒ですし、「隠れて浮気すれば、いっか!」と思わないんですか?

隠れて浮気すればよくない?という問い

きのコ:それは思わないですね。私は、「嘘を付かれている」ということが何よりも傷つきますし、自分自身も、相手にも自分にも嘘をつきたくないんです。それは「エゴ」と言われればそうなのかもしれませんが、なにより自分の気持ちに正直でいて、それについて相手に合意してもらう関係こそ、私が愛を考える上で重要なことなんですよね。なので、「君一人を愛しているよ」と言われていたのに、実は相手が浮気をしていたりしたら、ポリアモリーの私もすごく傷つきます。「相手は本当のことを教えてくれていなかったんだ」と思うと、寂しいですよね。

西内:たしかにそうですよね。「嘘も愛情のうち」と言いますが、私もそれには納得できかねる部分があります。いくら嘘がバレなくても、浮気をしたという事実は存在すると思うので。

きのコ:そうですよね。なので私は、いくら話し合いが大変であろうと、お互いの考えをすり合わせ、議論することが重要だと考えているんです。

西内:ちなみに、きのコさんはだいたい平均して、一度に何人を愛するんですか?

平均2〜5人を好きになる

きのコ:だいたい、2人〜5人です。でも、「好き」と一言で言っても、それぞれに向ける感情はそれぞれに違うものなので、なんとも言えないのですが...。

西内:2人〜5人! すごいですね。私は1人も好きな人がいないこともしょっちゅうなのですが、きのコさんは好きな人が0人だったことはないんですか?

きのコ:今までの人生で、好きな人が0人だったことは一度もないですね。

西内:そういう人もいるんですね...。なんだか「好き」の定義すらよくわからなくなってきました。人の感情と自分の感情って、永遠に擦り合わせることができないですし、ゆえに、定義も永遠に分からないままですよね。

「好き」の定義とは一体...

きのコ:そうですね。なので、私も、自分以外の人の「好き」がどの感情を表しているのかは分からないのですが、私の中での「好き」という気持ちの対象は、常に2人〜5人いるということになると思います。

西内:定義によっては、私も10人くらい好きな人がいるような気もしてきました。深すぎて、考えれば考えるほど自分のことや、自分の感情、自分の思う「好き」という言葉がどの感情を指してしているのか...全てが分からなくなってきました。

きのコ:そうですよね。その気持ちは分かります。

指輪3つは、誰からもらったもの!?

西内:ちなみに、今日のネックレス、指輪が3つ付いていますが...もしかして、それぞれのパートナーからもらった物ですか?

きのコ:いえ、2つは昔の彼氏とつけていたペアリング、あとの1つは先日別れた第二パートナーにもらったものです。

西内:あれ、第一パートナーは...?

きのコ:第一パートナーは、指輪に興味がないみたいなんです。それはそうと...私も西内さんのように、可愛らしいフワフワした服装で来たら良かったです。今日の私の服装、ロックテイスト過ぎて、景色に合わないですよね...。

西内:普段、フワフワした感じの洋服も着られるんですか?

すべてに「こだわり」がないだけなのかもしれない...

きのコ:はい、ロックな時もあれば、可愛らしい服を着ることもあるんです。テイストにこだわりがないんですよね。

西内:珍しいですね。私は絶対ロックな服は着ません。そう思うと、ポリアモリーであるきのコさんは、服装のテイストにも、愛する対象の性別にも、愛する対象の人数にも、『とにかく、こだわりのない人』と言えるのかもしれません。

複数愛は「ザックリ」しているだけ...!?

きのコ:ザックリしているんですよね(笑)。

西内:どうしましょう、ポリアモリーって、「ただ単にザックリしている人」だったりして...。

きのコ:(笑)。でも、それも一理あると思うんですよ。というのも、私は他の人を見ていて、「なぜそこまで細かいことにこだわるんだろう?」と不思議に思うので。相手の性別、好きになる人数、恋愛感情か友情か....など、全て、「そんなに細かく分けて考える必要もないのではないか」と思ってしまうんですよね。

恋愛対象が同性だけだなんて、細かすぎるのかも!?

西内:たしかにそんな気もしてきました。私の恋愛対象は男性なのですが、私って、細かすぎる性格なのかもしれません...(笑)。ちなみに、「恋愛感情と友情の違い」は私もよく分からなくなるのですが、きのコさんはどう定義されていますか?

きのコ:私も分からないんです。そこまで違いがないような気がするんですよね。

西内:「恋愛感情と友情」を定義する上で、「性欲が湧くか否か」が一つの基準であると考える人もいますよね。

「性欲の強弱」と恋愛感情の関係

きのコ:そう考える人もいますよね。ただ、私の場合は、性欲が湧くから恋愛感情なのかと言われれば「ただ性欲が湧くだけで、恋愛どころか、愛してすらいない」という場合もあると思いますし、「まったく性欲は湧かないけれど、恋愛である」という場合もあると思うんです。なので、「性欲の有無」によって感情を測れるものではないと思うんですよね。性愛と恋愛は区別するのも難しいですが、繋げて考えることも難しいと言いますか。

西内:では、きのコさんは「セックスしたいなという気持ちは湧くけれど、恋愛感情でも友情でもない場合の感情」を、何と呼びますか?

きのコ:ザックリ、「好意」と呼んでいます。

セックスしたいけど恋愛感情なし=ザックリ「好意」!

西内:「好意」...ザックリですね!!(笑)。ちなみに、きのコさんが「同性にも恋愛感情を持つ」ことに気付いたのはいつですか?

きのコ:だいたい、中学生くらいの頃だと思います。「あれ、私って、女の子にもこんな気持ちになるんだな」と思ったのを覚えていますね。でも、それも複数愛同様「いけないこと」だと思っていたので、隠していました。

西内:それって、「友達として好き」という感情とは、明らかに違うものなんですか?

きのコ:うーん、でも、明らかに違うかと言われると難しいんですよね。愛情もグラデーションだと思うので、ハッキリ「恋愛、それ以外」と分けられるものではないので...。

「恋愛」とは何であるのか!?

西内:では、きのコさんにとっての「恋愛」とは何なのでしょう?

きのコ:「コミットすること」ですね。相手を知ろうと努力し、私を知ってもらおうと努力し、お互いに納得いかない部分は議論をし...そういう「向き合う姿勢」のことだと思っています。

西内:興味深いです。ちなみに、性別も人数もこだわらないきのコさんのようなポリアモリーの方は、場合によっては「3人全員で愛し合う」こともあるかと思うのですが、今はそういうわけではないんですか?

きのコ:そうですね。第一パートナーと、先日別れてしまった第二パートナーとの関係は、第一パートナーと第二パートナー同士は愛し合っている訳ではなかったので「V字型」の交際でした。そのような関係を、ポリアモリーは「VEE」と呼んだりしています。

ポリアモリーにも「V字型」「三角型」などパターンがある

西内:では、3人全員で愛し合う関係なんと呼ぶのでしょうか?

きのコ:3人の場合は「トライアド」です。

西内:では、4人だと「スクエアーット」ですか!?

きのコ:いえ、4人は「クアッド」と呼んでいます。

西内:ちなみに、ポリアモリーだけど「独り身」の場合はなんて呼ぶんですか?

きのコ:「シングル・ポリアモリー」と呼んだりします。

あれ、私、ポリアモリーかも?

西内:知れば知るほど、興味深い世界です...。あまりに興味深すぎて、私、ポリアモリーという概念を知ってから、周囲の知人に「ポリアモリーの話」をすごくするようになったんですよ。そうすると大体みんな、「あれ、僕もポリーかも?」「私もポリーかも?」とか言い出すんですが、本物のポリアモリーであるきのコさんにとって、そのように私たちが「ポリー」「ポリー」などと、「ポリアモリーを軽く語ること」に腹立たしいという気持ちはありますか?

きのコ:私はまったくないですよ。というのも、「ポリアモリーか、そうでないか」すら、グラデーションで、ハッキリと境目があるものではないと思っているので。なので、「本物のポリアモリーじゃないくせに、ポリアモリーを語るな」だなんて一切思いません(笑)。

ポリアモリーは一般人が軽く語ってはいけないのか?

西内:そうだったんですね! 「ポリー」などと、ポリアモリーを軽く語ると、本物のポリアモリーに怒られるとばかり思っていました。良かったです!

きのコ:でも、それも人によっては「ファッション・ポリアモリーは許せない!」という主義のポリアモリーの人もいらっしゃいますよ。ただ、私の場合はそこにこだわりはないので、どんどん語ってもらえればと個人的には思います。それに、私もいつかもしかしたら「一人しか愛せない」というモノガマスな性質になる可能性も否定しきれないと思っているんです。32年間、複数の人を愛してきたので分かりませんが...人の心なんて、それくらい流動的で不確かなものだと思うんですよね。

人の心なんて移ろうもの

西内:そうですよね。人の心は移ろうものですもんね。私は生理になっただけで、昨日まで好きだった人がどうでもよくなったりします。昨日の夜「人生頑張ろう!」と思ったかと思えば、朝起きてみると「全てがどうでもいい、もう死にたいわ」と思うこともあります。自分の感情なんて、信用できたもんじゃないんですよね。

きのコ:そうですね(笑)。気分、気持ちは、常に変わりゆくものですからね。でも、とにかくどう自分の気持ちが移り変わっても、その移り変わったことや、その時の自分の気持ちを否定しないようにしたいとは常に思っています。10年間、自己否定し続けて本当に辛かったので、「自分はポリアモリーでいなければならない」などと、自分を決めつけないようにしています。移り変わる、つかみどころのない自分の全てを肯定していたいですね。

自分を決めつけない生き方で自己肯定する

西内:そうですよね。「固定できない自分を常に自己肯定したい」という気持ちだけを、固定しているということですよね。一貫性のない自分も自分の一部ですし、肯定したいですよね。ただ、私はそれでもポリアモリーになれる気がしません。なぜなら、相手に納得してもらい、合意してもらうような話術と交渉力と知性と体力と精神力を持ち合わせていないので。そうなると、ポリアモリーの人って、「ただのザックリ」に加え、「ただの交渉力がある頭が良い人たち」である気もしてきました(笑)。

きのコ:それも一理あると思います(笑)。たとえポリアモラスな性質を持ち合わせた人でも、そこに「相手に納得してもらえる交渉力、対話力」「コミュニケーション能力」がなければポリアモリーの実践は難しいと思いますし、また、「自分の感情に振り回されすぎる人」は嫉妬心が勝ちすぎたりして、ポリアモリーができないという場合もあります。なので、よく「ポリアモリーってメンヘラなのではないか」と言われるのですが、メンヘラであってもなくても「自分の感情に振り回されるすぎる人」はおそらく「ポリアモリー」には向かないと思うんですよね。

ポリアモリーには交渉力が必要

西内:そうなんですね。冷静な交渉力あってこそのポリアモリー...。確かに、あまりに一般とかけ離れすぎていて「メンヘラなのかな?」と思うこともありますが、確かにそこまで精神力と体力と頭を使う「ポリアモリーを実践することに伴う作業」は、メンヘラには難しそうですね。私メンヘラなので、ちょっとムリです。きのコさんとしては、「メンヘラ」や「性欲が旺盛な人」とポリアモリーを一緒にするな! ということですか?

性欲の強弱とポリアモリー

きのコ:いえ、ただ、「性欲が旺盛だからポリアモリーじゃないのか」と聞かれれば、そういうわけでもないと思います。性欲が旺盛な方にも、ポリアモリーである場合とそうでない場合があるので、性欲の強弱によって「ポリアモリーであるかどうか」が決められるわけではないと思っています。

西内:たしかにそうですね。そう考えると、ポリアモリーの人って、「物事を場合分けして論理的に体系的に考えるのが得意な、『ただの頭が良い人』」である気もしてきました...(笑)。

ポリアモリーは「ただの頭の良い人」!?

きのコ:(笑)。全ての物事って「こうだから、こう」という、イコールで結びつけられるものではないということですよね。

西内:そうですよね。物事って、原因と結果が一つずつ存在しているわけではなく、様々な要因が重なり、グラデーションとなり、結果が生まれるものですもんね。ちなみに、きのコさんってお仕事は何をされているんですか?

きのコさんは実は普通にOL!

きのコ:◯◯(某大手企業)の研究開発で、スタッフをしています。月〜金曜日、カレンダー通りのサラリーマン生活です。

西内:そうなんですね! 毎日お仕事お忙しいのに、よく2人も愛する気になれますね? 仕事をしていたら、1人を愛するだけでも、結構難しいと思うのですが。

きのコ:愛するとは大変なことですが、私にとって、「愛」とはそれほど優先順位の高いものなんですよね。

西内:では、もし一生生きていけるお金が手元にあったら、今すぐ仕事なんか辞めて、愛だけに生きたいと思いますか?

仕事と愛、どっちが大事!?

きのコ:それは思いません。私は好奇心旺盛なので、仕事も大好きなんですよね。人生って、短いじゃないですか。だから、生きているうちにいろいろな体験をしたいんです。もちろん、私にとって一番大切なものは「愛」ですが、それ以外のことも大事なんです。それに、「愛に多くの“時間”を割きたい」というわけではないんですよね。頭の中で、愛について、好きであるということについて考えを巡らせることだけでも楽しいんです。

西内:そんな中で「愛が一番重要」と感じるのはなぜですか?

きのコ:やはり、人生の中で一番気になる現象が『愛』だと自分で認識しているからですね。そのことを真剣に考え実践するにあたって私はポリアモリーというライフスタイルを選びましたし、また、モノガミーという世間一般の恋愛のライフスタイルからは外れることになりましたが、それでも私は自分の「愛についての気持ち」を大切にしていきたいと考えています。

西内:ちなみに、ちょっと失礼な言い方になるかもしれませんが、「ポリアモリーで、相手に他にも交際相手がいることを開示できるって、『ただのツラの皮の厚い奴なんじゃないか?』と思うこともあるのですが、それについてはいかがでしょうか?

ポリアモリーは「ただのツラの皮の厚い奴」!?

きのコ:それも一理、なきにしもあらずですが...ただ、ツラの皮が厚いだけではポリアモリーはできないとは思います。なぜなら「相手に開示し『合意を得る』」ということが重要なので。相手を詭弁で言いくるめたり、無理やり我慢させたりするのは、「合意」とは言えないので、ポリアモリーであるとは言えないと思うんですよね。それに、ポリアモリーの基礎にあるべきことが「誠実であること」だと考えられているんです。誠実さが基礎にあって、相手と議論し、合意にいたり、ポリアモリーというライフスタイルに落とし込む。これが私が考える「ポリアモリー」です。

西内:でも、人間同士ですから「100%の合意」は無理ですよね?

きのコ:そうですね。もちろん、人間同士ですから100%の合意はあり得ないかもしれません。なので、わたしも「8割程度は合意して、2割は我慢している」ということもありますし、考えがぶつかった時に譲ったり譲られたりすることもあります。ただ、そこに至るまでに「合意を目指し、誠実な心をもって議論をしたかどうか」というプロセスが重要であると考えています。

ポリアモリーに必要なのは、「誠実な議論」

西内:ちなみに、差し支えなければお伺いしたいのですが、家庭環境は特殊でしたか? きのコさんの特殊な考えに、家庭環境は影響しているのかを知りたくて。

きのコさんの家庭環境

きのコ:家庭環境は普通だと思います。強いて言えば、高校生の頃から両親が不仲で別居し、私が大学生の頃に離婚してしまいましたが...。それほど人と違った家庭環境という訳ではないと思いますし、家庭環境に影響されたという自覚は今のところないんですよね。なので、私自身は自身の性質を「先天的なもの」であると理解しています。

西内:そうなんですね。ところで、きのコさんはどうして「きのコ」なんですか? ポリアモリーの方って、そうやって通称で呼ぶ決まりがあるとか...?

きのコ:いえいえ、違います(笑)。ただ、学生の頃の髪型がマッシュルームカットだったので、プライベートでそう呼ばれているだけですよ。ポリアモリーの特殊な慣習とかではないです(笑)。

西内:そうなんですね! ちなみに、ポリアモリーの方々って、集まりがあったりするんですか?

ポリアモリーの集まり「ポリーラウンジ」

きのコ:一応私は「ポリーラウンジ」という交流会の主催者の一人なので、同じ考えを持った人で集まることはあります。

西内:では、最後にポリアモリーであるきのコさんから「これだけは言っておきたいこと」ってありますか?

きのコさんが「これだけは理解してほしいこと」

きのコ:やはり、「性的なことと、ごっちゃにして欲しくない」ということですね。よく「ポリアモリーって、3Pするんでしょ? 複数プレイするんでしょ? 乱交してるんでしょ?」と聞かれるのですが、そういうプレイ自体が良いとも悪いとも思わないですが、それとポリアモリーであることは別問題なんです。なので、「ポリアモリーだから、性にだらしない」という偏見はなくなれば良いなと思います。もちろん、性にだらしないことが「悪」だというわけでは決してないですが、それとポリアモリーとは切り分けて考えていただけると嬉しいですね。また、隠れてする「浮気」と、オープンにするポリアモリーもまた別物だと思うんです。

西内:本日は本当に勉強になりました。素敵なお話をありがとうございました!

まとめ

...いかがでしたでしょうか。「ポリアモリー」。きのコさんのお話を聞けば聞くほど、「私、ポリアモリーかも」「いや、ポリアモリーじゃないかも」と、自分自身が分からなくなった人は多いのでしょうか。ただ、きのコさんのお話をお伺いして思うことは「人の性質とは、『これだ』と決められるようなものではなく、グラデーションになっていて、つかみどころのないもの」であるということ。「自分はポリアモリーかどうか」...その疑問にこだわるか否かすらアナタ次第ですが、もしかすると、そんなことは放っておいて、自分の思う人(あるいは人々)を、愛したいように愛する、それだけで良いのかもしれません...。

 

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Text:Yuko Nishiuchi
Photo:Tatsuya Hamamura

【編集者・ライター:西内悠子(りむちゅん)】
1988年兵庫県出身、同志社大学文学部哲学科卒。新卒でavexに入社し3年間OL。その後、フリーランスとなる。「貧乳女子大生の就活日記〜オッパイはつかめないけど人事の心はつかむゾ♪」がアメブロ大学生ランキング1位を獲得。

ブログ・こじらせ悠子のこじらせ日記  twitter  Instagram

▶︎西内悠子の記事一覧はコチラ!

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