「まるで小さな子を諭すように私に言ってきたんです。ちょっと違和感を覚えました。なんで私に?って」。
Aさんはにこやかに一緒に歩いて、帰りましょうと佳奈子さんと娘を誘ったそうだ。
「娘はお友達と歩いて帰りたかったんでしょうね。飛び上がって喜んでいました。この瞬間は少し反省したんです。歩いて帰る15分くらいでめくじらを立てるのは、大人気ないなって。それで一緒に帰ることにしたんですが…」。
帰り道、横断歩道で止まったときのことだ。
「Aさんの息子と娘がじゃれあっていて、歩道からはみ出そうになったんです。それで私は慌てて大きな声を出しました」。
「危ない!」そう佳奈子さんが叫ぶと、Aさんの息子が振り返り、崩れ落ちるように泣き出したというのだ。
「ちょっと驚きました。その号泣っぷりが悲しいを通り越して、恐怖を帯びていたので…」。
Aさんが押していた自転車を投げ捨てて息子のところに駆け寄ったそうだ。
「自転車が倒れる音で我に帰りました。何が起こっているのか一瞬わからなくなりました。号泣するAさんの息子と立ち尽くす娘、そしてAさんがものすごい顔でこちらを見ていたんです。まさにカオス…」。
Aさんは怒りのこもった声で佳奈子さんにこう言ったという。
「なんて声を出しているの!」。
【後編】では、佳奈子さんがAさんに罵倒された理由について詳しく聞いていきたい。
取材・文/悠木 律
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