■30年経っても色あせないFR軽スポーツ
1991年10月、軽自動車でありながらフロントエンジン後輪駆動という本格的なスポーツカーのパッケージングで登場したカプチーノ。ロングノーズ&ショートデッキの古典的なフォルムは、30年が経ったいまも「カッコいい」と思えるスタイリングだと思います。
1990年当時、スズキにはすでに「アルトワークス」という人気の軽スポーツモデルがありましたが、バブル景気の波に乗って、スズキはアルトワークスのエンジン(657cc直3 DOHCインタークーラー付ターボ)を縦置きにレイアウトし、5速マニュアルトランスミッションと組み合わせた軽スポーツ「カプチーノ」を開発。軽自動車でありながら、前後ともに専用のダブルウィッシュボーン式サスペンションを投入し、さらには四輪ディスクブレーキまで採用する、という本格派でした。
また、ルーフやボンネット、リアフェンダーの一部にアルミニウムを使用したほか、ホイールや駆動系にもアルミニウム素材を採用するなど、軽量化も徹底的に追及。その結果、車両総重量はわずか700kg、乗員が乗った状態で、前後重量バランスは51:49を実現していました。1995年5月のマイナーチェンジでは、鋳鉄製エンジンブロックを、軽量なアルミニウム製へと置き換え、さらに10kgの減量にも成功。エンジントルクも向上(7.5kgfm→10.5kgfm)しています。とにかく、スズキのこだわりが存分に詰め込まれていたモデルだったのです。
■現在の中古車相場はおよそ150万円。なかには240万円もの個体も
そんなスズキのこだわりが詰まったカプチーノの新車価格は約146万円と、アルトの2倍近い価格。ただ、同じ時代に誕生したロードスターや、スカイラインGT-Rといった本格スポーツカーに比べればずっと安価で、また、ライバルのAZ-1(約160万円)やビート(約140万円)とも同価格帯であったことから、7年間の販売期間での総生産台数は2万6500台と、よく売れたモデルでした。
2024年7月現在、カプチーノの中古車は全国で100台ほど、安い個体だと40万円(走行距離17万km、修復歴無し)、高いものでは240万円(走行距離6万km)の個体もあります。相場的には150万円あたりと、当時の新車価格とほぼ変わらない価格で取引されており、生産終了からすでに24年が経ったいまも、まだまだ人気があるようです。
バブル期に人気を博した軽スポーツですが、バブル崩壊とともに姿を消し、カプチーノも1998年に販売終了となっています。クルマ好きとしては、復活に期待したいところではありますが、当該情報では、開発されている小型スポーツのエンジンの排気量は1.3Lとのこと。
これを考えると、我々が期待する「カプチーノ」にどこまで近づいているかは微妙と思われ、やはり「カプチーノ」が欲しければ、中古車で入手するしかないと思われます。今後は(カプチーノの中古車価格は)上がっていく一方だと思われますので、もしもカプチーノに心惹かれるようでしたら、次期型に期待することなく、早めに手に入れたほうがよさそうです。
Text:吉川賢一
Photo:スズキ