「あの男好きがさ〜とか言って、よく悪口言われていますよ。もちろん初江さん達も直接はおっしゃいません。でもロビーでおしゃべりしている声が聞こえるんですよ」。
それでも高子さんはおかまいなし。基本は男性メンバーとのみ絡んで、女性メンバーに目もくれない。
「実際のところ、初江さんは羨ましいんじゃないのかな。高子さんには夫もいます。しかも、15歳年下!驚きじゃないですか?長男との方が年齢が近いといつか話していました。初江さんが42歳のときに再婚して、今もラブラブ。いつも年下の旦那さんがお迎えにいらっしゃるんです。そんな人、あんまりいないでしょう?」。
そんなある日のことだった。教室終わりに初江さんを中心とした面々がロビーの椅子を占領して、話に花をさかせていたという。
「その日は別の会場でベビー体操の会も開かれていて、ロビーが混雑していました」。
あいにくの雨で赤ちゃん連れのお母さん達はロビーの端で初江さん達の邪魔にならぬよう、ベビーカーにカバーをつけていたという。
「あまりにも狭そうだったので、私が少しずれてもらえるよう初江さんに言おうと立ち上がったときのことです。颯爽と現れた高子さんが一言、ちょっと邪魔になってるんじゃない?と声をかけたんです」。
自分たちに声をかけられたのかと思ったお母さんが小さな声で「すみません」と言っている声が聞こえた。
「すかさず、高子さんはあなた達じゃないわと優しく微笑んで、初江さん達の方を見ていました。初江さん達は驚いたような顔で高子さんを見ていました」。
赤ちゃん連れのお母さん達が窮屈そうにカバーをつけている姿に気がついた数人は席をたち、場所を空けた。それに釣られるように立ち上がった初江さんだったが、明らかに納得がいっていない様子だったという。
「ムッとした顔をしていました。そして捨て台詞のようにこう言ったんです」。
ーご老人もおすわりになりたかったのかしら?
78歳が85歳をご老人と呼ぶ世界線…。【後編】では、ご婦人同士の恐ろしいバトルについてさらに詳しく話を聞いていきたい。
悠木 律