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朝日新聞は「それってあなたの感想ですよね」には絶対に勝てない!? 今はエビデンス=量的客観性優位の時代ですから。

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

先週、朝日新聞デジタルが『「エビデンス」がないと駄目ですか?』という衝撃的なタイトルの記事を配信、各方面から「ダメに決まってるでしょ!」と総ツッコミを受けていました。

大学教授と記者が対話する形式で、エビデンスを求められる「辛さ」とか、エビデンスを使って他者を攻撃したい「暗い欲望」とか、ちょっと何を言っているか分からない内容なんですが、特に衝撃的だったのが、

「福島は処理水エビデンスのせいで分断している」

ALPS処理水の安全性を示すことは、エビデンスを振りかざし、エビデンスで殴る行為であり、それが住民を分断しているんだそうです。え、それって未だ「汚染水」とか言い続けて風評被害を煽っているエビデンス無視の人々のせいでは……

聞き取り形式の記事とは言え「高度なエビデンス」が求められるマスメディアが、これを配信しちゃって大丈夫なのだろうか、と心配になります。

あと意図的なのか、記者がやたらとエビデンスを「数値的なもの」と狭い範囲で表現したがるんですよね。エビデンスとは「裏付けとなる客観的事実」なので、数値的なものとは限りません。分かった上で言っているんだと思いますが、読者が誤解しかねないので好ましくないなあと思いました。

まあなるほど、とにかくエビデンスがお嫌いなんですね。そんなにおイヤでしたら「エビデンスが存在しない世界」にお連れしましょう。

ようこそ!エビデンスが消えた街へ

おはようございます、今朝は営業車で出勤です。バイパスを走っていたらいきなり白バイに捕まりました。

「凄いスピードだったよ、速すぎて見えなかった」

渡されたのは「速すぎたので5万円」と書かれた違反キップ。なんだコレ。職場に着いたら健康診断の結果が届いていました。「元気そうな顔色でしたので、内臓も血液も大丈夫でしょう」とA判定。最近ずっと胸と胃が痛むんだけどな。

すると今度は部長から呼び出し。「きみ、背後からエロい視線を送られるって、女子社員が言っているらしいというウワサを聞いたぞ。減俸だ、すぐに始末書を出しなさい」……何で背後が見えるんだよ。

はい、これがエビデンスのない世界。こんな風に「お気持ち」だけで「お気持ちヤクザ」に殴られまくるメチャクチャな地獄、ありえません。でもエビデンスがない世界ってこれですから。

もし「居酒屋でオヤジが愚痴っているだけ」なら好き放題言えばいいと思います。「小西真奈美は可愛い」とか「オズワルドって面白いよね」っていう話なら、エビデンスなんかいりません。可愛いいんだから、面白いんだからしょうがない、で良いでしょう。

でもマスメディアは、マスメディアだけは、お気持ちで物事を断じるようなことを絶対にやってはいけない。誰よりも高度なエビデンスが求められる、また言われなくても自らそれを追及するべき存在、それがメディアでしょう(そうですよね?)。

エビデンスは気に入らない相手を殴る道具ではありません。ですが、身勝手なお気持ちだけで物事を無理強いをしたり、エビデンスを無視しようとする人たちを殴る為に使われることはあるでしょう。

もし「殴られている気がする」のなら、ろくなエビデンスも無いのに何かを押し通そうとしたか、あるいは……エビデンスもないのに誰かを殴ろうとしていませんでしたか? エビデンスで殴られたら、エビデンスで殴り返せばいいのに、なぜそうしないの?

エビデンスとは、誰かのワガママで物事が左右されない為の「客観的な指標」です。勝手なお気持ちのせいで世間が分断されないよう踏ん張っている、とても大切な防波堤です。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。

 



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