茨城県つくば市の小学校で、1年生の担任教師が子どもたちに「トイレに勝手に行ってはダメ」と強く指導するなどしたことから、児童が登校拒否に陥ってしまったことがわかった。さらにうち1人は転校してしまったらしい。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「教師としては、授業中に勝手にトイレに行ってはいけないというルールを教えたかったのでしょう。しかし、子どもたちにはトイレに行ってはいけないとインプットされてしまったんですね。もしかしたら、感情的に怒ったのかもしれません。その後、子どもたち数名は、トイレに行きたいと言い出せず、失禁をしてしまったといいます」。
教室での失禁…子供たちの傷は計り知れない。
「トイレに行きたいですと言い出せない子どももいるでしょうし、事が起こったのは5月から6月と入学直後です。行きたいと言い出しやすい空気作りや昼休みのうちにトイレにいくよう促す工夫も必要でしょうね」。
実はこの小学校でのトイレ問題。1年生だけの問題ではないらしい。今回は昨年まで教師をしていたある女性に話を聞く事ができた。
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花田佳苗さん(仮名・50歳)は、昨年新卒以来、勤めた教師の職を辞した。
「小学校教諭をしていました。この数年は要職に就くことも多く、気苦労が耐えませんでしたね。50歳を機に退職することは、数年前から決めていました。今は第二の人生をスタートすべく、大学に通っています」。
そんな佳苗さんが今回、話してくれたのは、小学生とトイレの問題だ。
「1年生がトイレに行きたいと言い出せず、失禁してしまった問題がが出ていましたが、私がこの数年、悩まされていたのは、宿泊行事のトイレについてです」。
高学年になるとやってくる宿泊行事。コロナ禍で中止を余儀なくされることもあったが、昨年は実施された学校も多かったようだ。佳苗さんの学校でも実施されたという。
「私は去年、5年生の担任を受け持っていました。5年生の宿泊行事は2泊3日の林間学校。そこで毎年問題になるのが、夜のトイレなんです。実は5年生でも、おねしょをしてしまう児童が少なからずいるんですよ」。
おねしょは医学界では夜尿症とされる。平塚氏はこう話す。
「日本夜尿症学会のガイドラインによれば、定義は5歳以上の小児の就眠中の間欠的失禁をはじめ、1ヶ月に1回以上の夜尿が3ヶ月以上続くなどがあります。子どもだけと思われがちですが、数は少ないものの大人にもある病気です」。
佳苗さんが困っているのは、夜尿症を患っている児童ではない。それに対して、過剰なお願いをしてくる保護者に対してだ。
「私が新卒の頃より、相談が増えているように感じます。学校側も夜尿症に対する対策はもちろんしています。デリケートな問題なので、保護者には必要な人に個別で対応する迄を伝えています。せっかくの楽しい宿泊行事ですからね。私たち教師も思う存分子どもたちには楽しんでもらいたいと思っています。だからできる限りのことはするつもりなんですが…」。
一般的な対策はどんなものなのだろう?
「夕食や夕食後の水分摂取を控えたり、パッドやおねしょ対応パンツを用意してもらってこっそり履き替えられるようにしたり、夜中に1度起こしてトイレに行かせたりするのが一般的ですかね。あとは万が一のためにシミが目立ちにくい厚手のパジャマの用意も効果的かなと思います。病院で薬を処方してもらう児童もいました。担任に言いづらいという場合は、同行する養護教諭や別クラスの先生に話をするケースもあります」。
夜に起こすこともあるとは、なかなか大変な作業である。
「5年生にもなるとやはりプライドもあります。おねしょをしてしまったら、お友達にからかわれたりするのではという不安もあるでしょう。ですから、1人1人に合わせて対処をするんですが…」。
昨年、受け持ったある男児の母が要求してきたのは、なんと1時間おきのトイレ。さすがの要求に佳苗さんも驚いたという。
【後編】では、息子を心配するあまりモンスターになってしまった男児の母と佳苗さんとのやりとりについてさらに深掘りしていく。
取材・文/悠木 律