毒親の存在は子どもにとって大きな影響を与える。それはしばしば、子どもが成人した後も続く。
なかでも少なくないのが、収入を得るようになった息子や娘に寄生する親の存在だ。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう述べる。
「いわゆる”毒親”のなかには、養育した見返りを、成長した子どもに求める人がいます。『育ててやった恩を忘れるな』と言われてしまうと逆らえない心理を利用して、金銭を要求するんです。子どもを育てるときに大変な思いをした、という意識が見返りを求める行動に繋がるケースも多いようです。」
今回は、そんな妻の母親との間に起きたトラブルについて、日吉雅彦さん(仮名・33歳)が語ってくれた。
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「妻とは5年前に結婚しました。なかなか子どもができなかったので、双子が生まれてきてくれたときの感動は忘れられません。両親も喜んでくれました。でも、まさかあんなことが起きるなんて……」
雅彦さんは友人を介して出会った千秋さん(仮名・29歳)と結婚。不妊治療を続けた結果、男女の双子が生まれたという。
「妊娠がわかった時は2人で大喜びしました。ただ、問題になるのが金銭面です。僕はもともと美容師をしていたのですが、給料が安かったので、今後のことも考えて大手企業の工場に転職することにしました」
雅彦さんの学歴は高いとは言えない。就職してからの給料の少なさには苦労していた。大人になるまで流されるままに生きてきたためか、優柔不断で空気が読めないところもコンプレックスだったという。
「僕がポンコツに育ったので……。子どもたちにはいい教育を受けさせてあげたかったんです。頭の良くなるおもちゃや野球などのスポーツをさせて、スキルのある大人にしてあげたいと思っていました」
子供たちの将来を真剣に考えた雅彦さんは、妻の千秋さんと協力し、食費やデート代を節約してお金を貯めていた。
「子供たちの顔を見ると、きつい仕事の疲れも全部吹っ飛びます。本当にかわいいんです」
そんな2人を、ある事件が襲った。
当時の状況を千秋さんはこう話す。
「クレジットカードの請求額がものすごいことになっていたんです。20万円も使った覚えがなかったので、これは番号を盗まれたと思いました」
しかしカード会社に連絡しても、詐欺などの形跡はなかった。
そこで、調査したところ衝撃の事実が発覚した。千秋さんの母親が、彼女のクレジットカードを勝手に使っていたのだ。
「千秋の両親は離婚していて、母親1人で子供3人を育てていました。だから千秋が働くようになってからは、家庭の買い物のためお義母さんにクレジットカードを渡すことがあったそうです。
お義母さんは普段は優しいんですが、感情的なところがあって、お酒を飲んでテンションが上がると抑制が効かなくなることもありました」
無駄遣いはやめて欲しいと母親に注意した千秋さんだが、その後も度々カードの使い込みが発生した。
千秋さんが注意をするたび、母親はこう話したという。
「あんたたち3人を1人で育てるのにどれだけ苦労したと思ってるの?やっと千秋が働いて楽になってきたのに……。私がパチンコで息抜きして、何がいけないの? このくらい使わせてもらっても罰は当たらないじゃない」
千秋さんはそう言われると、何も言い返せなかったそうだ。