「いつの時代もなくならない嫁姑問題。姑にとって嫁は『息子の奥さん』、嫁にとって姑は『夫のお母さん』であり、スムーズな嫁姑関係には、夫側のサポートが必須と言えますね」
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう語る。今回は嫁姑問題でこじれにこじれた一例をFORZA STYLE「ライフ取材班」がお届けする。
話しを聞いたのは、東京に住む34歳の柏木玲子（仮名）だ。2年前、婚活に特化した大手マッチングアプリ【O】で玲子は、夫とすぐに意気投合し交際することに。スペック重視で選んだ夫の秀明は身長180㎝の長身、しかも都内の一流食品メーカー勤務で年収も申し分ない。年齢は年下の28歳で、将来有望。惜しむらくは、イケメンと言い切れない容姿ぐらいのもの。他の点では、高身長で高収入と、玲子が望んでいた高スペック男子だった。
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秀明の両親である父・雅也と母・明美に挨拶を終えた玲子は、晴れて秀明と結婚することになった。秀明の実家は、千葉県某市にある駅の近くの商店街で、近隣に住む婦人向けのブティックを経営している。その店のオーナーで、商店街の役員も務める義母は、背筋がしゃんとしていた。
結婚式は都内の老舗ホテルで華々しく行われ、「これで私も勝ち組になれたかな」。玲子はそう思ったと言う。結婚当初、都内のヴィンテージマンションに入居した二人は幸せで笑顔が絶えなかった。
だが、はじめての年末年始の義実家への帰省で、バラ色の生活は粉微塵に瓦解した。結婚前に秀明の両親に挨拶に行ったときは、父親のみならず、母親の明美もとても優しかった。それが頭にあったので、玲子は秀明の実家に帰省するのを密かに楽しみにしていたのだ。「お義母さんといっぱい話したい」。結婚後はじめての帰省ということもあって、いつも以上に浮かれていたと言う。
しかし、玲子を出迎えた義母の表情は、結婚の挨拶で見たときとはまったく違う、険しいモノだった。眉間に深々と皺が刻まれ、口元は歪んでいる。
「『え、怒ってる？』ってビックリしたんです。忙しい時に来ちゃったのかな？って。だって、挨拶してもそっけないし、お茶も出してくれない。夫の世話は焼くのに、私のことはほとんど無視に近くて、居心地は最悪でした。そのうち、『玲子さん、ちょっと手伝って！』と言われて、何事かと思って駆け寄ると、いきなり実家のブティックに立たされたんです」
義母が経営しているブティックが、年末年始年始のセール中らしく、狭い店内には常連のお客さんがごった返していた。日に焼けてしまった靴下に肌着、マフラー...それらがワゴンセールで売られていた。店内には義母ひとりだったため、急遽、玲子を働かせることにしたらしい。
「「なんで大晦日にこんなことしなきゃいけないの？』と思いながらも、必死で接客しました。ブティックの仕事なんてなにもわからないから、見よう見まねでやっていると、義母が『あんた、とろいのよ！』とどやしつけてくる。それを見て、常連さんが笑っているんです。挙句の果てに、『息子の嫁なんだけど、全然気が利かなくて。高校生のバイト以下』とお客さんに愚痴りだす始末で...私の顔は引き攣っていたと思います。夫に助けを呼びたくても、義父と酒盛りをしていて全く頼れなくて...。やっと閉店して呆然としていると、義母が『明日も頼むわよ！』とお尻を叩いてきたんです。まるで奴隷のような感じで...元日もこれをやるのか...と気が遠くなりました。一刻も逃げ帰りたかったのですが、そんなわけにも行かず、紅白も見ずに『具合が悪いので』と言い訳して、ひとりで布団に潜り込みました」
近年増えている「アプリ婚」のなかには、玲子のように義実家の事情をよく知らずに成婚を急ぎ、取り返しのつかない事態に巻き込まれるケースもある。
「明日も頼むわよ」という言葉が頭の中でこだまして、なかなか寝付けない大晦日の夜が、白々と明け始めた。そして玲子を待っていたのは、過酷すぎる元旦だった。
この日、玲子は新年の誓いに【離婚】と心に刻むことになる。衝撃の次回に続く。
ライター 小石川莉子
