近年、梅毒の感染者数が急増していることはご存じだろうか。その数は驚くことに1年で約1万人超え(2022年・国立感染症研究所)。2023年は上半期の統計から、さらに多くの感染が見込まれる。2012年からの10年間で感染者数は11倍以上となっている。
また梅毒にとどまらず、淋病(りんびょう)やクラミジアなど他の性感染症も若年層を中心に増加傾向にあり、さらなる拡大が懸念される。
今回は、元風俗嬢のマリさん(仮名38歳・主婦)に性感染症の拡大について現場の声を訊いた。
・・・・・・・・・・・・・・・
「風俗店で働いていたのは、20~35歳までの15年間です。きっかけはスカウト。入店時には取材が入り『今月の新人』と雑誌やネットでも大々的に紹介され、入店1か月でナンバーワンになりました」
マリさんが勤める店のシステムは「70分で3万円」だ。そのうち2万円がマリさんの取り分となる。
「1日で8人の客を取り、日給は16万円。週6で働いていたため、チップも含め、週に100万円は稼いでいましたね。ただ、その裏には不快なこともありました。まずは店の女社長に強制的にピルを飲まされたことです。
私は持病があり、ピルを飲むと吐き気や頭痛がするのですが、社長は『ナンバーワンを取り続けたいなら、飲みなさい』と譲りませんでした」
「そのうえ、お客様を迎えてシャワーを浴びたり、歯磨きをする衛生面の流れを無視し『即ベッド』も強要されました。
サービス後はイソジンでうがいをして、菌やウィルス感染の防止に努めました。あのころは若気の至りもあって、嫌悪感よりもお金のほうを取ってしまったのですが、梅毒やクラミジアは口からも感染するので、本当に浅はかでした」
マリさんは続ける。
「店の義務として、月に一度の性病検査がありました。ただ検査料は自腹で、女の子たちはよく不満をこぼしていましたね。で、ある日同じ店の女の子が梅毒陽性と診断されてしまったんです。
避妊具は義務付けられていましたが、やはり口などの粘膜から感染したのだと、仲間たちと噂していたんですが……」
ここで、マリさんは驚きの場面に遭遇する。