現在、日本のSNS利用者は8270万人を越えたと言われている(ICT総研)。
ユーザー同士の交流はもとより、情報発信、情報収集、商品やサービスの宣伝や集客が主流だが、一方で「裏アカ」と呼ばれる裏アカウントで、表では決して言えない内容を匿名で公開するケースも増えている。
今回は「裏アカ」にハマった2人の女性に迫ってみた。
1人目はミクさん(仮名・29歳パート主婦)。4歳の娘を持つ彼女は、東京都下でサラリーマンの夫と暮らしている。丸顔と大きな瞳が印象的な癒し系の女性だ。
彼女は娘の誕生をきっかけにSNSを始め、ママ友との交流や子供の成長記録をアップ。一方、裏アカでは「ミク・港区のタワマンに住むアラサーセレブママ」という偽りの投稿を続けている。
裏アカを持ったきっかけを訊いてみた。
「純粋に『人から羨ましいと思われたいという承認欲求』です。子育てママをターゲットとした女性誌を見ると、育児と同時に美容も手を抜かず、仕事でも活躍して社会とつながっている女性が大勢載っています。高収入の旦那さまもいて裕福な暮らし……。私とは雲泥の差です。
セレブなママたちを見ていると、せめてネット上では私も優雅に暮らす主婦を演じたいと思うようになり、裏アカを作りました。今、フォロワー数は2万4000人ほどです」
彼女は続ける。
「朝起きて家族の朝食を作り、娘を保育園に送ると、裏アカ画像作りを始めます。『今日の朝食』というタイトルで、ブランド物の大皿にサラダやオムレツ、色とりどりのフルーツを盛りつけた美しい画像をアップするんです。
お皿は自前ですが、オムレツやフルーツ盛りはネットで拾った画像をアプリで加工してミックスしました。高層階からの眺めも他人の画像を拝借し、ぼかしてアップしています。
画像とともにアップする文章には『今日の朝食は、娘と主人に作ったお料理のあまり物をワンプレートに。2人に食べられちゃったけれど、全粒粉のバターロールパンも焼きました♡』と綴っています。
実際の生活ではキッチンでおにぎりを立ったまま食べて、洗濯と掃除、そして近所のクリーニング店のパートに行くんですが、『いいね』の数が多いほど心が満たされますし、自分は価値ある人間と思えてくるんです。コメントでも『お洒落な朝食♡ミクさん、素敵』『優雅な生活にため息が出ます』などがあると、その日は機嫌良く過ごせますね」
苦笑するミクさんだが、裏アカ熱は徐々にエスカレートしていった。
「プロフィール欄には誕生日の記載もあるんですが、あるコメントで『もうすぐバースデーですね。ステキなお祝いをするんでしょうね』というものがありました。ドキッとしましたね。ブランド物のバッグかアクセサリーの画像を探したんですが、可能なら紙袋も付けたくて……。
思いついたのがメルカリです。メルカリではブランド物の紙袋が数百円~千円程度で売っているんです。ただ、肝心の品物を見つけるのに苦戦しました」