どんな企業にもトラブルはつきものだ。今回舞台となる会社「S」は、オフィス関連の商品を扱い、関東地方に居を構えている。
事務職で働く森崎和美(31)は、社内で注目の美女だった。
身長は低く、かわいらしい見た目をしている。
コミュ力が非常に高く、笑顔や近い距離感で人を虜にする術を持っていた。
和美の同僚が打ち明ける。
「気取らないお嬢様タイプって言うんですかね。たまにうちの部署に書類を届けに来るんですが、しゃべり声が声優みたいにかわいいんです。目を合わされると惹き込まれるというか、心を鷲掴みにされたような気持ちになるんですよ」
そんな和美は社内ではおじさんからも若い男からもモテモテだった。
作業着の代えが欲しいとか、インクが無くなったとか、電話やメールで済む用事でわざわざ和美の元に来る男も多い。
デートや飲みの誘いも多かったが、どうやらほとんど断っていたようだ。
和美は社外の男性と結婚しているから当然だ。
「確か合コンで知り合った警察官の方だったと思います。子供は2人いて、少し前に産休から帰ってきたばかりです。だから社内の歓迎会や忘年会も、家族を優先するからとあまり参加はしませんよ」
明るく魅力的だが、あまり遊ばず家庭を大事にする。
和美に対してそんな「かわいくて良き妻」であるイメージを持っている人は多かった。
「羨ましいな。ウチのカミさんも森崎さんみたいだったら......」
そんな妄想は、喫煙室の既婚男性たちのいつもの話のタネだったという。
しかし、和美の衝撃の事実が知れ渡ったのは、社内の野球サークルの飲み会だった。
「森崎さんはな、ダイさんのが入ってるんだぞ」
サークルの部長が話す「入ってる」というのが、性的な事を意味するというのはみんなすぐに理解した。
その場にいて驚愕した若手社員たちはしばらく声が出なかったようだ。
ダイさんとは川原大輔(37)の事で、酒癖が悪くやんちゃで有名な男だった。
豪快で快活だがどこか不良っぽく、結婚して子供が3人いる今も女遊びが絶えない。
仕事はもっぱらサボり、定時後の飲み会や野球ではリーダー格となる人物だ。
素行の悪い男だがやんちゃグループから人望があり、管理職も注意するものはいなかった。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏が言う。
「俗に言うホワイト企業ほど、実は社内トラブルが多いんです。なぜこんなに恵まれた環境にいる社員が道を踏み外すのか、外からだと理解できないようなケースは多い。時間にもお金にも余裕があると、余暇としてタブーを冒したくなるのかもしれませんが......」
一時の過ちが一生を棒に振ることもある。
反面教師のお手本のような衝撃の実態は、続編でリポートする。
Text:女の事件簿調査チーム